ボース=アインシュタイン凝縮
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ボース=アインシュタイン凝縮(-ぎょうしゅく、Bose-Einstein condensation、ボース凝縮とも言う)はボース=アインシュタイン統計(ボース統計)に従う粒子(ボース粒子)において、多数(巨視的な数)のボース粒子が1つの量子状態(最低エネルギーの状態)を占める現象(状態)を示す。1925年、インドの物理学者サティエンドラ・ボースからの手紙をきっかけとして、アルベルト・アインシュタインがこの凝縮現象の存在を予言した。
その後、類似した現象として超伝導や超流動が発見されたが、理想的なボース気体によるボース=アインシュタイン凝縮は未発見のままだった。
凝縮する過程を condensation、凝縮した状態を condensate と言い分ける場合もある。
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[編集] 中性原子気体(理想ボース気体)
偶数個のフェルミ粒子から構成される原子はボース粒子と見なすことが出来る。この原子から成る集団(中性原子気体)をサブマイクロケルビンの極超低温に冷却(レーザー冷却が使用される)するとボース=アインシュタイン凝縮し、原子(ボーズ粒子)は、1つの最低エネルギー状態を占有するようになる(コヒーレントな状態)。1995年、コロラド大学のエリック・コーネル、カール・ワイマンらは、ルビジウム原子(87Rb)を冷却することで初めてボース=アインシュタイン凝縮を実現し、同年マサチューセッツ工科大学のヴォルフガング・ケターレらは、ナトリウム原子(Na)でボース=アインシュタイン凝縮を実現した。この成果により、コーネル、ワイマン、ケターレの3名は2001年度ノーベル物理学賞を受賞した。
理想的なボース気体(粒子数 N とする)においては、ボース=アインシュタイン凝縮の転移温度 TBEC は、体積 V が一定であるとして、
となる。ここで、h はプランク定数、kB はボルツマン定数、m は粒子の質量である。
ここで、ζ(3/2) は、
である。
また、ボース=アインシュタイン凝縮状態になった粒子の数 NBECは、
となる(T は温度)。上式で温度が転移温度以下になると、ボース=アインシュタイン凝縮した粒子の数が増えていき、T = 0 K で全ての粒子が凝縮状態となる(超流動では、どんなに低温にしても凝縮状態にあるのは一割程度である)。理想ボース気体での凝縮では、定積比熱の微分にとびがあり、これは三次の相転移である。
[編集] 超流動
ボース粒子であるヘリウム4による超流動現象において、超流体部分はボース=アインシュタイン凝縮していると考えられている。
[編集] 超伝導
BCS理論で記述できる超伝導現象では、電子の対であるクーパー対をボース粒子として、厳密な言い方ではないがボース=アインシュタイン凝縮が起きているとみなすことができる。クーパー対は電子対なので、電子対凝縮(単に対凝縮とも)と言うことがある。
[編集] その他の類似現象
フェルミ粒子であるヘリウム3の超流動は、超伝導の場合のようにヘリウム3原子の対が凝縮対を作って、凝縮状態となっている(超流動参照)。また、フェルミ粒子である中性子が対をなすため、同様なことが中性子星の内部でも起こっている可能性が指摘されている。その他にも、光子やフォノンでも凝縮現象を考えることができる。