ボール (野球)
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野球においてボールとは、競技を行うために定められたルールとしての「ボール」と、競技を行うために使用する用具としての「ボール(球)」とがある。
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[編集] ルールとしてのボール
野球の試合における投手と打者との勝負に対し与えられる判定の一つ。ボール球(ボールだま)とも言う。太平洋戦争中は敵性語であるとされ、1ボールを「1つ」(2ボールを「2つ」)のように日本語に置き換えられた。
打者は4つ目のボールを宣告されると、一塁へ進むことが許される(四球による出塁)。
[編集] ボールが宣告される条件
前提条件は、打者がその投球に対し打撃動作(打つ、空振りする)を起こさないこと。
- 投手の投球がストライクゾーンを通過しなかった場合。
- 投手の投球が地面にバウンドした場合。
- 投手の投球が地面にバウンドしてストライクゾーンを通過した場合。
- 故意によけずにユニホームにボールが当たった場合(デッドボールにはならない)。
例外として、次の場合がある。
- 無走者のとき、投手が反則投球を犯した場合。
- 無走者のとき、投手が捕手からボールの返球を受け、打者が打撃姿勢をとって投手に対面したときから数えて12秒以内に投球(ボールから手が離れる)しなかった場合。(日本では2006年度までは「20秒以内」とされていたが、2007年度に「12秒以内」と改正された)
[編集] 用具としてのボール
日本の野球には硬式球(こうしききゅう)・準硬式球(じゅんこうしききゅう)・軟式球(なんしききゅう)の3種類の規格のボールが存在し、使用するボールにより硬式野球・準硬式野球・軟式野球の3つの野球形態がある。
[編集] 硬式球
硬球(こうきゅう)とも言う。日本のプロ野球で使用される硬式球は、コルクやゴムなどを芯にして糸を巻き付け、それを牛皮や馬皮で覆い、縫い合わせて作られる。
重量141.7g~148.8g、円周の長さ22.9cm~23.5cmと、公認野球規則により定められている。日本のプロ野球で使われる硬球は公式球(こうしききゅう)と呼ばれ、ボールの反発力のテストがコミッショナー事務局によって行われ、このテストで算出される反発係数が0.41~0.44の基準を満たすボールが合格となり、ボールに公認マークが付けられる。使用する皮に関しては、日本では牛皮が一般的である。公式球は市販されていない。
一方、アメリカメジャーリーグでは、公式試合球は25年以上もローリングス社が独占供給している。日本のボールとの違いは、野球規則に定められた大きさ・重さのほぼ上限であるため、日本の公式試合球よりもやや大きく、重い。また、牛皮ではなく馬皮を使用しているため質感が違う。縫い目の処理の仕方も違うため、空気抵抗の違いから同じ握り・投げ方の変化球でも日本の公式球とは変化の度合いに違いが出る。
ボール自体に相当の硬さがあり、デッドボールの痛みを比喩して「石が飛んできて当たる」と表現されることもある。
[編集] 準硬式球
準硬球(じゅんこうきゅう)とも言う。芯の作りは硬式球と同じだが、表面に牛皮ではなくゴムを用いて作るボール。製法面、硬さの面で硬式球と軟式球の中間に位置する。
[編集] 軟式球
軟球(なんきゅう)とも言う。公認野球規則書によれば素材はゴム製、直径・重量・反発の違いでA号・B号・C号・D号・H号の5種類に区別する。A号とH号が一般用、B号・C号・D号は少年用。A号・B号・C号・D号は芯の無い中空、H号は中を充填物で詰めたもの。反発は150cmの高さから大理石板に落として、跳ね返った高さを測定したもの。
直径 | 重量 | 反発 | |
---|---|---|---|
A号 | 71.5mm~72.5mm/ | 134.2g~137.8g/ | 80.0cm~105.0cm |
B号 | 69.5mm~70.5mm/ | 133.2g~136.8g/ | 80.0cm~100.0cm |
C号 | 67.5mm~68.5mm/ | 126.2g~129.8g/ | 65.0cm~85.0cm |
D号 | 64.0mm~65.0mm/ | 105.0g~110.0g/ | 65.0cm~85.0cm |
H号 | 71.5mm~72.5mm/ | 141.2g~144.8g/ | 50.0cm~70.0cm |
[編集] ラビットボール
ボール製造過程の何らかの要因で、飛距離の著しく上昇したボールがラビットボール、飛ぶボールなどと呼ばれることがある。
- 「イシイ・カジヤマ」という運動具メーカーが製造したボールの自動製造機械によって製造されたボールの通称。1948年9月に試験投入され、翌1949年から1950年まで全面的に使用された。それまでほぼ手作りだったボールが、この自動製造機械導入で精度が格段に上がった。材質面では、戦時中より粗悪品のままのものを機械導入を期に大手毛糸会社と契約を結ぶことで、質の高いボールを製造できるようになった。材質の改良に加えて、電気乾燥機で湿気を飛ばす製造手法も反発力向上の要因となった。このボールの導入によって本塁打数が劇的に増加。この後に反発力の規定が作られた。
- 1980年の飛ぶボール
- 当時のミズノ社製のボールが他社のボールと比べて10数メートル飛距離が出る反発力の高いボールであったことが一因となり、セ・パ両リーグで2000本を超える本塁打が記録された。当時コミッショナーの下田武三の指示により反発力テストの規定を見直し、翌年以降問題は沈静化した。
- 近年の飛ぶボール問題
- 2001年頃より、特にミズノ社製のボールが他社製のボールと比べて飛距離が出やすいと言われてきた。本塁打が出やすいことで、野球本来の醍醐味である攻撃的なプレー(長打に伴う走塁、盗塁など)が損われると問題視された。これを省み、2005年より反発係数を抑えたボールが使用されている。将来的にボールの規格を完全に統一する案も協議されている。