ライク・ア・プレイヤー
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ライク・ア・プレイヤー Like a Prayer |
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マドンナ の アルバム | ||
リリース | 1989年3月21日 (欧米) 1989年4月9日 (日本) |
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録音 | 1988年 | |
ジャンル | ポップス | |
時間 | 50分57秒 | |
レーベル | サイアー・レコード ワーナー・パイオニア (日本) |
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プロデュース | マドンナ、パトリック・レナード、ステファン・ブレイ、プリンス | |
レビュー | ||
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チャート順位 | ||
ゴールド等認定 | ||
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売上枚数 | ||
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マドンナ 年表 | ||
ユー・キャン・ダンス (1987年) |
ライク・ア・プレイヤー (1989年) |
アイム・ブレスレス (1990年) |
ライク・ア・プレイヤー (Like a Prayer) は、マドンナの1989年に発表された第4作目のオリジナルアルバムで通算6枚目のレコーディングである。
邦題にある「プレイヤー」は本来の発音と異なる。「プレイヤー」では英語の"player" (スポーツの選手、音楽の演奏者、CDプレイヤーなど)になってしまう。"Prayer"の発音は「プレア」に近く、日本語に訳すと「祈り」の事であり、実際発表当時にはアルバム名は「祈りの如く」と訳されていた。
目次 |
[編集] 解説
マドンナにとって1980年代最後のアルバムとなった記念すべき作品。80年代のマドンナの音楽性、そしてイメージを集大成した最高傑作とされている。
「ライク・ア・プレイヤー」がリリースされたこの頃のアメリカの音楽シーンは大きな変動を遂げており、ヒップホップの台頭からヘヴィメタルの全盛など、80年代のポップ・ミュージックを代表するアーティストとしての位置を確立したマドンナでも、時代の流れを意識したサウンドを追求せざるを得なかった。そんな中でリリースされたオリジナル4作目の「ライク・ア・プレイヤー」はそのマドンナの姿勢を表したアルバムとも言える。ダンサブルではあったがポップのメインストリームを貫いた前作「トゥルー・ブルー」とは対照的に、「ライク・ア・プレイヤー」はポップやロックの要素を含むだけでなく、黒人音楽であるゴスペルやリズム・アンド・ブルースの要素を積極的に取り入れ、よりソウルフルでバラエティに富んだ作品になった。
又、マドンナの私生活にも大きな変化が訪れる。この年、4年間続いた俳優ショーン・ペンとの結婚の破局があった。すでにメディアでは何度も伝えられていたショーンの激しい気性、1度はパパラッチを殴った後逮捕されるなど、結婚生活には衝撃的な出来事が続いていた。マドンナをとり囲む異様なまでのメディアの関心、それによるプライバシーの侵害は、後にショーンが語ったように結婚破綻の一因だと言われている。こうした出来事の中制作された、「ライク・ア・プレイヤー」はこれまでになく、マドンナの当時の心境を明かした告白的なアルバムである。
その中でも「デス・ドゥ・アス・パート」は当時の波乱な結婚生活の様子を垣間見る、その痛烈な歌詞の内容で知られている。マドンナの皮肉ある反抗的な歌詞は、結婚制度に対してだけでなく、宗教、特にマドンナが育ったカトリック教会にも向けられる。第一弾シングルとなった「ライク・ア・プレイヤー」はバチカンや宗教団体から非難を受けたプロモーション・ビデオは言うまでもなく、「神聖と世俗」をテーマにしたウイットのある歌詞でも有名である。マドンナの権威に対する反抗心は、彼女にとって永遠のテーマとなる父親シルヴィオとの関係にも象徴される。「オー・ファーザー」ではその父親との複雑な関係が歌われている。一方、「プロミス・トゥ・トライ」ではマドンナが幼少の時に亡くした最愛の母親について、初めて歌われている。そして、ヒット・シングル「キープ・イット・トゥゲザー」の中では、数多くの兄弟の中で育った自分の幼少時代を振り返っている。
マドンナの代表曲の一つとして知られる「エクスプレス・ユアセルフ」は、アメリカの著名な社会批評家そしてフェミニストであるカミール・パーリアに「フェミニズムの将来」と言わしめた、マドンナのパワフルなメッセージ・ソングである。恋愛における男女の力関係を歌ったこの曲は女性を賛歌した歌であったが、「自分自身を表現する事が出来れば、自分自身を尊敬することが出来る」という内容の詞は、男女関係なくユニバーサルに受け止められたメッセージである。
アルバムのプロデューサーには前作「トゥルー・ブルー」に続いてすでに常連となったパトリック・レナードとステファン・ブレイである。「ライク・ア・プレイヤー」では外部からのソング・ライターを起用せず、プリンスとの共作「ラヴ・ソング」を除き全曲マドンナがパトリック・レナードとステファン・ブレイと共作した。その結果、前記にあるようにアルバムは私的で親密な作品に出来上がった。アルバムの構成と旋律により重点が置かれ、数々のヒット曲または印象に残る名曲が生まれた。ノスタルジックな「チェリッシュ」は当時マドンナの一番お気に入りの曲と言われ、ハーブ・リッツの印象的なプロモーション・ビデオと共に大ヒットした。一方パトリック・レナードはドラマティックな「オー・ファーザー」をマドンナと共作した最高傑作と語った。なお長年のソング・ライティング・パートナーであり、マドンナと共に80年代数々のヒット曲を生み出したステファン・ブレイにとって、「ライク・ア・プレイヤー」はマドンナと仕事した最後のアルバムである。彼がプロデュースした「エクスプレス・ユアセルフ」は初期の「イントゥ・ザ・グルーヴ」と並ぶ傑作である。そして、壮大なゴスペルのコーラスをフィーチャーしたパトリック・レナードとの共作「ライク・ア・プレイヤー」はファンの間では「ヴォーグ」などと並んで最も人気の高い曲の一つである。
又、アルバムに参加したミュージシャンには、往年のファンにはお馴染みのドナ・デローリーとニキ・ハリスがバック・ヴォーカルに再度参加した。また歌手のマリリン・マーティンは「チェリッシュ」にバック・ヴォーカルで参加した。サウンド的には、パトリック・レナードとステファン・ブレイによるシンセサイザーを基軸としたダンサブルなポップ・チューンが多いが、ブラス・セクションやフレンチホルンなどを大きく起用してソウルフルな作風を創り上げた。そしてコーラスにはゴスペル界の大御所アンドレ・クラウチ聖歌隊も参加している。ギターには「ラ・イスラ・ボニータ」の共作者であるブルース・ガーシュが引き継いで参加。そしてドラムにはTOTOのジェフ・ポーカロが参加している。また余談になるが、ベースで参加したのは元ジャーニーのメンバーで、アメリカのヒットTV番組「アメリカン・アイドル」で審査員を務めるランディ・ジャクソンである。
アルバムは1989年3月21日にリリース後、4月22日付のビルボード・チャートに第一位にランクされ、その後6週間一位の座を保ち続けた。そして年末にはビルボード誌読者によって選ばれた「ミュージック・オブ・ザ・エイティーズ(Music of the '80s)」でマドンナは「トップ・ポップ・アーティスト・オブ・ザ・ディケイド (Top Artist of the Decade)」に輝く。同年MTV ヴィデオ・ミュージック・アワーズでも「アーティスト・オブ・ザ・ディケイド(Artist of the Decade)」に選ばれ、シングル「ライク・ア・プレイヤー」は視聴者が選ぶ「ビューヤーズ・チョイス・アワード(Viewer's Choice Awards)」に選ばれる。日本では1989年4月21日付のオリコン・チャートで第一位にランクされた。又、同年の第4回日本ゴールドディスク大賞では、マドンナはゴールドディスク大賞に輝き、アルバム「ライク・ア・プレイヤー」はグランプリ・アルバム賞とポップス(ソロ)部門においてアルバム賞にそれぞれ輝いた。
なお、アルバムの初回プレスでは、CD、LP、カセット全てのフォーマットで、当時マドンナのお気に入りであった、パッチョーリを使用した彼女特製ブレンドの香水がブックレットに混ぜられた。この香りは発売後20年近くになる現在においてもまだ嗅ぐことが出来る。そしてブックレットのライナーノーツには「AIDS(エイズ)に関する事実」と言われる情報が掲載された。これはマドンナがアーティストとして初めて掲載したものである。
[編集] 収録曲
# | 曲名 | Title | |
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1. | ライク・ア・プレイヤー | "Like a Prayer" (Leonard, Madonna) | 5:40 |
2. | エクスプレス・ユアセルフ | "Express Yourself" (Bray, Madonna) | 4:39 |
3. | ラブ・ソング | "Love Song" (Madonna, Prince) | 4:52 |
4. | デス・ドゥ・アス・パート | "Till Death Do Us Part" (Leonard, Madonna) | 5:18 |
5. | プロミス・トゥ・トライ | "Promise to Try" (Leonard, Madonna) | 3:38 |
6. | チェリッシュ | "Cherish" (Leonard, Madonna) | 5:03 |
7. | ディア・ジェシー | "Dear Jessie" (Leonard, Madonna) | 4:21 |
8. | オー・ファーザー | "Oh Father" (Leonard, Madonna) | 4:58 |
9. | キープ・イット・トゥゲザー | "Keep It Together" (Bray, Madonna) | 5:03 |
10. | スパニッシュ・アイズ | "Spanish Eyes" (Leonard, Madonna) | 5:17 |
11. | アクト・オブ・コントリション | "Act of Contrition" (Madonna) | 2:19 |
[編集] シングル
# | 曲名 | リリース |
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1. | ライク・ア・プレイヤー | 1989年2月 |
2. | エクスプレス・ユアセルフ | 1989年5月 |
3. | チェリッシュ | 1989年8月 |
4. | オー・ファーザー | 1989年10月 |
5. | ディア・ジェシー | 1989年12月 (欧) |
6. | キープ・イット・トゥゲザー | 1990年1月 (米/日) |
[編集] アルバム・クレジット
[編集] 参加ミュージシャン
- Madonna - synthesizer, vocals, background vocals
- Nadirah Ali - background vocals
- Rose Banks - background vocals
- Reverend Dave Boruff - brass
- Stephen Bray - synthesizer
- Luis Conte - percussion
- Larry Corbett - cello
- Andraé Crouch - chorus
- Sandra Crouch - tambourine
- Paulinho Da Costa - percussion
- Donna DeLory - background vocals
- Lynne Fiddmont - background vocals
- Chuck Findley - brass
- Bruce Gairsch - guitar
- Nikki Harris - background vocals
- Dann Huff - guitar
- Dick Hyde - brass
- Randy "The Emperor" Jackson - bass
- Chester Kamen - guitar
- Geary Lanier - clavinet
- Patrick Leonard - synthesizer, piano, Hammond organ, clavinet
- Marcos Loya - guitar, background vocals
- Steve Madaio - brass
- Marilyn Martin - background vocals
- Joseph Mayer - french horn
- Jonathan Moffett - drums
- Jeff Porcaro - drums, marimba
- Guy Pratt - bass
- John Roninson - drums
- Richard Todd - French horn
- David Williams - guitar
- Jai Winding - synthesizer
[編集] プロダクション
- Produced by Madonna and Patrick Leonard
- Produced by Madona and Stephen Bray ("Express Yourself" and "Keep It Together")
- Produced by Madonna and Prince ("Love Song")
- Mixed and Engineered by Bill Bottrell
- Horns arranged by Chuck Findley
- Strings Arranged and Conducted by Bill Meyers
- Concertmaster: Susie Katayama
[編集] 参考文献
- Camille Paglia, Sex, Art, and American Culture, New York City, NY: Vintage Books, 1992.
オリコン週間アルバムチャート第1位 1989年4月24日付 |
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前作: 長渕剛 『昭和』 |
マドンナ 『ライク・ア・プレイヤー』 |
次作: 稲垣潤一 『HEART & SOUL』 |