ラーズ・アル・グール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ラーズ・アル・グール(Ra's al Ghul)は、アメリカンコミック『バットマン』に登場する悪役の一人。本名不詳。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] キャラクター
[編集] 原作コミック
1971年登場。メジャーな悪役の中では後発の部類に入る。名は「悪魔の頭」のアラビア語より。デニス・オニール、ニール・アダムスという、70年代のシリアスな作風のバットマンを製作した作家チームにより創造された。
環境テロリスト集団デーモン、および実行部隊リーグ・オブ・アサシンのリーダー。秘泉ラザラス・ピットを利用することで、数世紀を生き永らえてきた不死身の魔人である。地球環境の完全な調和が目的で、人類をそのための障害と見なし、大量殺戮を計画する。科学、医学、錬金術に造詣が深く、剣の達人でもある。左右がはねた髪型に、あごの左右に生やした髭、緑系統のマントが特徴。
初登場時、バットマンの正体を推理によって看破した。常にバットマンを「探偵(Detective)」と呼び、彼の高い能力を見込んで後継者にしようと幾度も画策。悪党たちを連携させ、多発犯罪を引き起こし、人間社会を守ることに絶望させようとしたり、致命的なウィルスクレンチをばら撒くなど、その犯罪のスケールは随一である。またJLAメンバー暴走時のために、バットマンが密かに調べていたメンバーの弱点を盗み出し操った。その後バットマンのこうした計画はメンバーに暴露され、彼のチーム内での立場を悪くもしている。
6、7世紀に遊牧民の子としてアラビアで生まれた。医者となり、ソーラという妻を持つ。ラザラス・ピットを発見し、ある王子をそれで蘇生させるが、その王子に妻を殺され、その上、王に罪を負わされ、死刑にされかける。脱出後、ウィルスを用い、王族を殺害、自らの部族を率いて都市を壊滅させる。その後、各地を巡りながら、知恵と富を蓄え、テロ組織デーモンを設立した。近年、実の娘ナイッサに殺害されたが、自らの死すら、娘たちの後継者意識を呼び覚ます計略として用いていた節がある。復活しないよう遺体は、バットマン監視のもと火葬にされた。が、アメリカンコミックの世界では、設定変更、死者蘇生は珍しいことではないため、再登場も囁かれている。
- ラザラス・ピット
- ウブー(Ubu)
- ラーズのボディーガード。組織で最も腕の立つ者に与えられる称号。頭を剃ったものが多い。バットマンを破ったことのある敵の一人、ベーンもこれを勤めており、ラーズは彼を後継者にしようとしていた。
- ナイッサ(Nyssa Raatko)
- 18世紀にロシアで生まれたラーズの長女。母親に育てられ、自力で父親を突き止め、ラーズの部下となるが、決別。それを不服としたラーズの差し金で、第二次大戦中、強制収容所送りになり、家族を失い、復讐を誓う。タリアを洗脳し、ラーズを殺害した。しかし、それさえもラーズの後継者を求める意思には勝てず、結局タリアと共にデーモンを率いることとなる。
- 後の「OneYearLater」の時期には元バットガール、カサンドラ・ケインに殺害され、リーグ・オブ・アサシンを奪われる。
- タリア(Talia al Ghul/Talia Head)
- ラーズに先行して登場した娘。バットマンと恋に落ちるが、父の呪縛、バットマンの使命感もあり破局。破局後は、スーパーマンの宿敵レックス・ルーサーの合衆国大統領就任時、彼の会社ルーサーコープのCPOに就任(経済界から大統領は距離を取らねばならないためスカウトされたもの)。だが、後にウェイン財団に売却。陰ながらバットマンに協力していた。後に実姉ナイッサに洗脳され、彼女と共にラーズに変わりデーモンを率いる。ナイッサが死んだ後は、リーグ・オブ・アサシンを除く組織の後継者となった。長らく後継者として鍛えられたこともあり、格闘能力も高い。
- ブルースとの間に息子を設けているが、ブルースはこのことを知らない。一時設定変更のあおりを受け、その存在を抹消されていたが、近年ダミアン・ウェイン(Damian Wayne)の名で登場。未来を描いた作品では、成長した後イブン・アル・ズファッシュ(Ibn al Xu'ffasch)の名で呼ばれている。これは「コウモリの息子」の意味である。
[編集] アニメ『バットマン』シリーズ
- 原作初登場時のエピソードをなぞる形で、娘タリアと共に登場した。ただタリアは常に父親に忠実であり、原作ほどの葛藤はしていない。なお本シリーズにおいてはレイシュ・アル・グールと呼ばれている。
- 日本語吹き替えの声優は田中正彦。タリアは沢海陽子が演じた。
[編集] アニメ『バットマン・ザ・フューチャー』
- 死亡したはずのレイシュが登場。タリアの肉体を乗っ取ることで再生したものである。
[編集] 映画『バットマン ビギンズ』
- 世界の秩序を回復しようとするテロ集団、「影の同盟(League of Shadows)」の首領として登場。ヒマラヤ奥地の本部に潜む。メンバーは厳しい戦闘訓練を受けた、忍者部隊である。何処の言葉か分からない言語を話す。高僧のような風格で、剣の達人。ブルースの反逆により、アジト壊滅と運命を共にした。
- 演じたのは近年ハリウッドでの地位を固めつつある渡辺謙。バットマン映画の敵役は常に大物俳優が演じるため、公開当時は非常に注目された。なお奇妙な言語は、渡辺が響きを重視して考案したものである。日本語吹き替え版の声優は大川透。
- 本作、もう一人の重要人物がヘンリー・デュカード(Henri Ducard)である。ラーズの元、「影の同盟」を指揮する。世界を放浪していたブルースをスカウトし、体術、戦闘術を指南した師にあたる。アジト壊滅の際、ブルースによって救われていたが、後に真の黒幕として現れる。世界の腐敗を憂い、文明社会に大打撃を与えるべく、ゴッサム・シティを数十年前から腐敗都市となるよう、裏で画策していたことを語り、ブルースを圧倒する。精神ガスを水道に混入させ、指向性マイクロ波放射装置でそれを気化させ、街中をパニックに陥れる。最後はバットマンに敗れ、墜落するモノレールと運命を共にした。
- リーアム・ニーソン演じるデュカードこそが、本作における真のラーズ・アル・グールとしてコミックファンには認知されている。不死身の設定を影武者を使うことで、現実離れせず描写したものである。その視点から見ると、渡辺の演じた役は前述のウブーとなる。余談ながらニーソンは、以前にスター・ウォーズでも師匠役を演じており、若干話題となった。
- なお、ヘンリー・デュカードは元はコミックの登場人物である。ティム・バートン版のバットマン(第一作)の脚本家サム・ハムにより創造されたパリの刑事。かつてブルースを鍛えた、道徳観念の薄い人物で、三代目ロビンも指導したことがある。