三輪タクシー
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三輪タクシー(さんりんタクシー)は東南アジアから南アジアにかけて普及している軽便な公共交通機関である。
かつて存在したサムロー、シクロ、ベチャなどの人力車を駆逐して1960年代以降に普及した。インドではオート・リクシャー、パキスタンでは単にリクシャー、バングラデシュではベイビータクシー、ネパールではテンプー、インドネシアではバジャイと呼ばれている。タイ王国やラオスにはサームロー(トゥクトゥク)がある。
基本的には料金交渉制のタクシーで、各国の庶民のための公共交通機関の役割を担っている。同時に都市に流入する労働者の受け皿となる産業でもある。
近年これら諸国の近代化にともない、エアコン付きタクシーが普及してきたこと。都市の大気汚染問題と交通渋滞が深刻になったことなどから、大都市での三輪タクシーの営業は制限を受けたり禁止されたりしていく傾向が見られる。
以下では各国の三輪タクシーについて記述する。
[編集] オート・リクシャー
オート・リクシャー(auto-rickshaw)は、インド文化圏、経済圏で普及している軽便な三輪タクシーである。インドではオートリクシャー、パキスタンでは単にリクシャー(rickshaw)、バングラデシュではベイビータクシー(baby taxi)、ネパールではテンプー(tempo)、インドネシアではバジャイ(bajaj)と呼ばれている。
オート三輪の後部に二人乗りの前向きシートを設け、屋根はビニール生地の日除けとなっている。乗客の側面は開放されている。運転席は前席中央にあり、ハンドルはオートバイと同様のバーハンドルである。同じ用途に使われるタイ王国のトゥクトゥクと比べると車体は一回り小型である。
これらの三輪タクシーは通常決まったルートを運行するものではなく、料金交渉制のタクシーとして使われる。これに対して、ひとまわり大きく対面式の座席を持つ三輪車は決まったルートを走る乗り合いバスとして使われる。
最有力メーカーはインドのバジャジ・オート(Bajaj Auto)である。原型となったのは、イタリアのピアジオが生産したベスパカーで、当初から後部に二人乗り座席を設けたモデルが用意されていた。インドで1959年から1974年までライセンス生産され、契約終了後もバジャージのブランドで販売されている。
古いタイプは排気ガスの汚い2サイクルエンジンを搭載しており、アジアの大都市の大気汚染問題の元凶と考えられている。このためデリーやダッカでは2サイクルエンジンを搭載した三輪タクシーの営業が禁止された。現在では排気ガスがクリーンな4サイクルエンジンやCNG(液化天然ガス)エンジンを搭載したオート・リクシャーが生産されている。CNG化されたオートリキシャは緑色に塗られている。
[編集] サームロー
サームロー(รถสามล้อ)はタイ語の単語で三輪自動車(オート三輪車)を意味する言葉。日本ではサムロとも言い、特にタイの三輪自動車を指す言葉として使われる。また、俗にトゥクトゥク(รถตุ๊กตุ๊ก)と呼ばれる。タイ、ラオスで運行しているが、似たようなものにベトナムのシクロ、インドネシアのベチャック(ベチャ)、インドのオート・リクシャーなどがある。いずれも主に料金交渉制のタクシーとして利用されるほか、座席を改造して決まったルートを巡回する乗り合いタクシーとして運行している場合がある。起源は大型バイクを改造したものであるが、日本から輸入したダイハツのミゼットなどのオート三輪をタクシーに改造したものもあった。
元々は車線の狭いヤオワラート通り(中華街)周辺の道路で、小回りの利くサームローが主にイーサーン出身の運転手により人力車より格の高いタクシーとして運行され始めた。後にサリット・タナラット首相がバンコクでの人力車の運行を禁止したことにより、バンコクでサームローの運行が盛んになったが、近年においてはエアコンが利き、料金のごまかしが利かないメーター制タクシーが運行を開始したため、バンコク市内の車両数は徐々に減っていった。タイ政府は2002年にバンコクでのサームローの新規登録をうち切ったことにより、バンコク都内の車両数は大幅に減少した。
法律上は、サームロー専用の免許が用意されており、四輪自動車や、自動二輪車の免許では運転できない。トゥクトゥクは前述したように私用ではないため、商用利用されるのであるが、タクシーの営業は法律上タイ国籍者にしか許されていないため、このサームロー免許もタイ国籍保有者のみに与えられる。また、サームローはスピードがでにくいため、制限速度が所々80キロを超えるようなバンコク首都高速での運行は出来ない。
ちなみに俗称のトゥクトゥクの由来には諸説があり、その排気音がトゥクトゥクと音を立てているからや、英語のtook tookが訛ったものなどいろいろ言われている。俗に前者の由来が有力視されている。