今井科学
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今井科学株式会社(イマイ、1948年 - 2002年)は20世紀後半に活動した日本の模型メーカーである。本社は静岡県静岡市(葵区)沓谷にあった。
[編集] 略歴
1948年、静岡県清水市(現:静岡市清水区)で模型教材の販売店として創業。1951年に製造卸を開始、翌52年に発売した木製の東京タワーが人気を集める。そして1954年に今井科学株式会社を設立する。
1955年に鉄人28号のプラモデルを発売、以降、『鉄腕アトム』、『ビッグX』、『サブマリン707』など数多くのキャラクターモデルを発売、いずれもヒットして今井科学の基礎を築く。また1960年代には航空機や自動車の優れたスケールモデルも発売する。
特に1966年に発売を開始した『サンダーバード』の関連キットは大ヒットとなり、今井科学の地位を不動のものとするかに見えた。しかし60年代の怪獣ブームで急成長したマルサンがブームの終息と共に経営危機に陥ったことから、サンダーバードの次を担う売れ筋商品の必要性に迫られた。
そこでサンダーバードの後番として製作された『キャプテン・スカーレット』と、円谷プロの意欲作として期待されていた『マイティジャック』の内外二大話題作の版権を取得し関連キットを発売する。ところが『キャプテン・スカーレット』は『サンダーバード』程の人気は得られず、『マイティジャック』も予想外の不振に見舞われ、多額の不良在庫を抱える結果になり、これが元で1969年に深刻な経営危機に陥る。この際に静岡の工場と製品金型の多くがバンダイに売却され、これらの資産は後にバンダイのプラモデル事業の基礎となる。
1970年代前半に会社再建を果たした後は、事業の柱の一つとして帆船模型を掲げ、木製とプラキットを数多く発売すると共に、メーカー主催の製作講習会を通じて大人の成熟した趣味として普及に務める。日本での帆船に対する関心も1970年代後半から徐々に集まり始め、80年前後には帆船模型は一定の需要を満たすまでになる。他メーカーからも新規参入があり、また関連書籍や資料も発売されるようになる。今井は木製模型のノウハウを生かした建築模型も後に発売する。また1975年から自社デザインのオリジナルキャラクターモデルの『ロボダッチ』シリーズをリリースする。80円という低価格から始まったこのシリーズはアオシマの合体シリーズと並んで、子供向けプラモデルとして幅広く認知されヒット商品となった。その後サンダーバード秘密基地などの金型流用により大型商品も開発され、TV媒体に頼らないオリジナル玩具として発売が続けられた。
1980年代前半、バンダイの『機動戦士ガンダム』シリーズの爆発的ヒットによってキャラクターモデルへの注目が集まり、多くの模型メーカーがロボットアニメとのタイアップに力を入れるようになる。今井科学も他メーカーと共同してキャラクターの新規発売に積極的に乗り出し、『超時空要塞マクロス』では作品の人気に乗り十分な成功を収めることができた。その後、『超時空世紀オーガス』・『機甲創世記モスピーダ』・『超攻速ガルビオン』・『超時空騎団サザンクロス』と立て続けにキャラクターモデルを連発する。しかしいずれも『マクロス』程の人気には至らず今一つの結果に終わり、不良在庫が次第に重い負担となっていった。またもう一つの事業の柱であった帆船模型に対する一般の関心もこの頃には徐々にしぼみ始め、新規参入したメーカーも撤退していった。
そして1980年代中頃に二度目の経営危機を迎える。関係者の献身的な努力でかろうじて廃業を免れたものの、新規製品を開拓する力はもはやほとんど残っておらず、マクロスなど製品金型の一部は再びバンダイに売却された。90年代は社名をイマイに改名すると共に、過去の製品の再版と、スーパーフォーミングと呼ばれた特殊加工発泡スチロールによる製品に活路を見いだそうとする(ただしスーパーフォーミングは下地加工に難があり、相当のベテランモデラーを以てしても手を焼く素材だったという)。
2002年2月20日を以て営業を停止し、会社は解散した。最後まで残った今井製品のうち、プラ帆船とキャラクターモデル、エアコッキングガンのそれぞれ一部はアオシマが、また木製キットはウッディジョーが生産と販売を引き継いでいる。
今井科学の興亡は戦後日本の模型産業の一つの縮図であり、また浮き沈みの激しいキャラクターモデルビジネスを考える上でも多くの示唆を与えている。
[編集] 外部リンク
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