元伊勢
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元伊勢は、もともと皇居内に祭られていた天皇家(当時は大王家)の氏神であった天照大神(神体である鏡:八咫鏡、と剣:天叢雲剣=草薙剣)を、現在の伊勢神宮内宮に至るまでの間に一時的に鎮座していた伝承を持つ神社・場所をいう。
『古事記』には伊勢神宮の創始についてはかかれていない。一方、『日本書紀』には、伊勢神宮の鎮座に至るまでに、理想的な鎮座地を求めて各地を転々としたことが記されており、後世の文献にも、同様の縁起が載せられているものがある。 神が旅する説話は非常に多く、『常陸国風土記』の筑波山の話に登場する祖神や民間説話の弘法大師と同じく、「旅する神」の典型的な類型である。一般の神社の縁起でも、鎮座地を求めて神が旅する話は多い。一方、中小クラスの神社が、縁起の中で自社を権威ある大社の古い鎮座地だとすることで、権威付けをすることもあり、「元春日」「元住吉」などと「元~」を称する神社もある。
移動は崇神天皇(紀元前148年-紀元前30年)の皇女豊鋤入姫命により倭国、笠縫邑に移され、その後垂仁天皇(紀元前69年-70年)の第四皇女倭姫命に引き継がれ約60年の間をかけて行われたといわれる。
神体の剣:天叢雲剣は後に倭姫命から日本武尊に手渡され、最終的に現在の熱田神宮に移っている。天叢雲剣は、日本武尊が草原で火に囲まれた時、この剣を用いて草を薙ぎ払って逃れたという話から草薙剣と呼ばれるようになった。
なお、この遷宮は一種の軍事行進だったとされている。
[編集] 元伊勢の一覧
移動した順に並んでいる。
- 凡例:位置した国 当時の名称 (比定神社名:住所)
- 倭国 笠縫邑 (檜原神社:奈良県桜井市三輪)
- 当時の皇居の瑞籬宮(桜井市金屋)から北に2Km。大神神社をはさんで反対側。
- 丹波乃国 吉佐宮 (籠神社:京都府宮津市字大垣、皇大神社:同府福知山市大江町内宮、竹野神社:同府京丹後市丹後町宮)
- 倭国 伊豆加志本宮 (与喜天神宮:桜井市初瀬字与喜山)
- 木乃国 奈久佐浜宮 (日前神宮・國懸神宮:和歌山県和歌山市秋月)
- 吉備国 名方濱宮 (伊勢神社:岡山県岡山市番町)
- 倭国 彌和乃御室嶺上宮 (大神神社:桜井市三輪)
- 大和国 宇多秋市野宮 (阿紀神社:奈良県宇陀市大宇陀区)
- 大和国 佐々波多宮 (篠畑神社:奈良県宇陀市榛原区)
- 伊賀国 隠市守宮 (宇流冨志禰神社:三重県名張市)
- 伊賀国 穴穂宮 (神戸神社:三重県伊賀市上神戸)
- 伊賀国 敢都美恵宮 (都美恵神社:三重県伊賀市)
- 淡海国 甲可日雲宮 (頓宮:滋賀県甲賀市)
- 淡海国 坂田宮 (頓宮:滋賀県米原市)
- 美濃国 伊久良河宮 (天神神社:岐阜県瑞穂市)
- 尾張国 中嶋宮 (酒見神社:愛知県一宮市今伊勢町)
- 伊勢国 桑名野代宮 (野志里神社:三重県桑名市多度町)
- 伊勢国 奈其波志忍山宮 (布気皇館太神社:三重県亀山市布気町)
- 伊勢国 阿佐加藤方片樋宮 (加良比乃神社:三重県津市藤方森目)
- 伊勢国 飯野高宮 (神山神社:松阪市山添町)
- 伊勢国 佐々牟江宮 (竹佐々夫江神社:三重県多気郡明和町)
- 伊勢国 伊蘇宮 (磯神社:伊勢市磯町)
- 伊勢国 瀧原宮(瀧原宮:三重県度会郡大紀町)
- 伊勢国 矢田宮 (矢田宮:伊勢市楠部町)
- 伊勢国 家田宮 (神宮神田:伊勢市楠部町)
- 伊勢国 家田田上宮 (神宮神田:伊勢市楠部町)
- 伊勢国 奈尾之根宮 (津長神社(皇大神宮摂社):伊勢市宇治)
- 伊勢国 五十鈴宮 (伊勢神宮 内宮:伊勢市宇治館町)
- 現在の位置
参考資料 (倭姫命世紀による?)
[編集] 関連
- 初瀬街道 - 倭姫命のたどった道にちなんでいる。