出木杉英才
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
出木杉 英才(できすぎ ひでとし)は藤子・F・不二雄のSF漫画『ドラえもん』及び、それを原作としたアニメに登場するキャラクターである。名前の読みは小学館コロコロ文庫で「えいさい」としてルビがふられていたこともあったが、「ひでとし」と読むのが正しいらしい(後述)。だが作者自身は正確な名前を明らかにしているわけではない。
目次 |
[編集] 人物像
4月生まれ(おそらく昭和39年(1964年)か。もし4月1日生まれだった場合は早生まれになり、昭和40年(1965年)生まれとなる)。野比のび太のクラスメイト。その名の通りの秀才でイケメン。スポーツ万能。料理も得意でまったく非の打ち所の無い少年であり嫌味なところもなく、くだらないダジャレを言うような一面もある。欲しい物があっても親に頼らず、家庭教師のアルバイトでお金を貯めて買う勤労少年でもある(22巻『税金鳥』)。決してガリ勉タイプではなく、漫画やゲームを楽しむ面もある[1]。小学生ながら、外国人の友人・スミスと文通している[2]。学校ではのび太のクラスの代表を務めている[3]。
未来の世界を見るのが夢で、これはのび太により叶えられた[4]。また、のび太・ドラミと共に白亜紀に行き、ブラキオサウルスに触ったこともある。
自分の部屋には、家族の電話とは別の固定電話が引いてある(そのため、いたずら電話に悩まされた事もある[5])。
[編集] 性格
性格もよく、自分に悪事を働いた級友を許す、寛大な心の持ち主[5]。のび太にとっては恋敵と言えるにもかからわず、のび太自身が「いい奴」と認めるほど。
終始、のび太のライバル的存在として描かれることが多いが、出木杉本人はのび太のことをライバル視する節もない。
後述の友人との交流にもあるように、しずかに好意を持っている、「しずちゃんのことは大好き」と明言している場面もあるが[6]、映画『のび太の結婚前夜』での未来の彼は、嫉妬心など微塵も見せずに笑顔で2人の結婚を祝福していることから、彼の心の広さを窺い知ることができる。
[編集] 友人との交流
しずかと仲がよく、しずかと一緒に出掛けたり、交換日記をしていたこともある[7] 。何故かしずかのことは「しずかくん」と呼んでいる。物語の中では、しずかを除いてはレギュラー5人の友情の中に入ることは少ない。しかし決して一同との交流を好んでいないわけではなく、遊びの誘いがあれば快く仲間に加わる[8]。
25巻『のび太の結婚前夜』では、のび太としずかの結婚前夜にジャイアンの家で行なわれた前夜祭で、レギュラー男性陣と共に顔が真っ赤になるまで飲み明かし、肩を組んで歌い合うという彼としては意外な場面が見られ、青年期に至るまで相応の友情を育んでいた様子が窺える(但し同話を原案とした映画『のび太の結婚前夜』では現在の出木杉のイメージを大事にしたのか、同席はしているものの、酔っ払ったり歌ったりする場面はない)。
41巻『恐怖のディナーショー』でのび太は出木杉に感謝していた一面がある。
[編集] 家族
両親に関して詳細は不明で、父親(と思われる人物)は1コマのみの登場[9]、母親に至っては姿が登場せず、ドラえもんの道具・時限バカ弾の効力によって上げた「パッパラパー」という奇声のみの登場である[10] 。
一時、父親の転勤でアメリカに引っ越すという話が持ち上がったが、実現はしなかった[11]。
ペットとして犬を飼っている。出木杉の頭より拳ひとつ大きいほどの体高で、犬のコンクールで優勝した実績を持つ名犬。悪口を言うと噛み付きそうになるので、あのジャイアンが冷や汗をかきながらお世辞を言うほどプラス[12]。
『新オバケのQ太郎』の一編「ビリから二番を守る」では、正太たちの学校に「デキ杉くん」という生徒がおり、クラスで一番の成績をとっていることが語られている(セリフ上で語られるだけで姿は描かれない)。コアなファンの間では「出木杉英才の血縁者ではないか」とも噂されている。
[編集] 将来
大人になってからは火星への出張もするエリート[13]。44巻『ハワイがやってくる』では少年期(現在)に「月や火星に行ってみたい」と発言しており、見事その夢を叶えたことになる。のび太の家に息子を預けていることから、大人になってからものび太との親密な交流は続いているらしい。恰幅が良くなり、アラビアンなヒゲをたくわえている。
妻は金髪の白人。息子の名前はヒデヨ(風体は少年期の出木杉と瓜二つ)。
[編集] 登場に伴う物語の変遷
「ド・ラ・カルト」の記述によれば、出木杉が登場する以前は、ドラえもんは「のび太の未来を幸福なものに変えるためにやってきた」存在であったが、彼が登場する前後、ドラえもんは「今ののび太次第で未来は変わることもあるからね」という具合に、のび太のお守り役としての存在からおりてしまった。出木杉が登場してからは、のび太は未来が不確定であることを知るようになる。実際そのような記述も単行本の中に現れるようになる[14]。これはあまり大きく取り上げられていない事象だが、ドラえもんの根本を覆す大きな方向性の転換である。
[編集] 名前の変化
当初、22巻『税金鳥』では出木杉は「太郎」の名で登場。→23巻『透視シールで大ピンチ』で、葉書の宛名に「英才」(ルビなし)の名が登場。→『税金鳥』の改版で「太郎」を「英才」(えいさい)に修正。→この件については小学館から発行された「ド・ラ・カルト ~ドラえもん通の本~」において、ある重大な記述があった。それは「英才の息子は『ヒデヨ』である。このことから『英才』は『ヒデトシ』と読むのが正しいのではないか」説の提唱である。この説の提唱によりこれまで誰もが「えいさい」と呼んでいたファンの間で、新説として、非常に大きな波紋を呼んだ。この提唱された説が実に的確なものだったため、ドラえもんファンの間では現在では「ヒデトシ」が定説となったと言っても過言ではない。だがしかし、公式サイトの紹介では「英才」(えいさい)のままということや、あくまでも(ひでとしという説もある)と書かれているため、完全に統一されているとまでは言い切れない面もある。ただ、息子の名前がヒデヨであるということは重要な事実である。またもう一つの手がかりとして、藤子・F・不二雄の異色SF短編「考える足」には「英才」と書いて「ヒデトシ」と読むキャラクターが登場していることも見逃してはならない。
「コロコロコミック」1979年9月号掲載の『ドラえもんとドラミちゃん』で初登場したが、その時は「明智」(「あけち」と読む、元ネタは明智小五郎)と呼ばれていた(文庫版「ドラミ編」およびプラス4巻への収録時には「明智」→「出木杉」に修正)。
TVアニメでは、2006年5月26日放送分において、出木杉の名前がクイズとなり、正解は「英才」(ひでとし)となっている。
ちなみに、「出来過」や「出来杉」といった誤った表記をする視聴者(読者)は多く、マンガでも「出来杉」と誤表記されている所が多い。
[編集] 劇場版での役割
映画『のび太の恐竜』のシナリオ初稿では、ドラえもんたち5人と共に1億年前の世界で冒険を繰り広げるという脚本になっていた。しかし、実際には出木杉の登場シーンはカットされてしまい、その後の映画版でも序盤には登場する事はあるが冒険には一度も連れて行ってもらっていない。知力、体力、精神力とすべてにおいて完璧な出木杉が仲間に加わることで、そのほかのメンバーが目立たなくなってしまうからだといわれる。大長編では専ら難解事項や歴史の解説役などが多い(ヘビー・スモーカーズ・フォレスト[15]、魔女狩り[16]、本物の熱線[17]、新種の植物[18]、鳥人伝説[19])。
なお『のび太の創世日記』では、出木杉と瓜二つの出木松博士という人物が(大人)世界初の南極横断に成功し、そのあと地底世界とつながっている空洞にこれまたのび太と瓜二つの野美秀と静香とほぼ瓜二つの静代と一緒に飛行船で、行くシーンなどもある。
[編集] その他
声優:白川澄子(1980.4~2005.3)→萩野志保子(テレビ朝日アナウンサー・2005.5~)
[編集] 脚注・出典
- 特記のない「x巻」は、てんとう虫コミックス「ドラえもん」の単行本の巻数を表す。
- ^ 31巻『まんがのつづき』、38巻『冒険ゲームブック』
- ^ 40巻『お好み建国用品いろいろ』
- ^ 31巻『ためしにさようなら』
- ^ 27巻『人間ブックカバー』
- ^ a b 30巻『真夜中の電話魔』
- ^ 37巻『たまごの中のしずちゃん』
- ^ 23巻『透視シールで大ピンチ』
- ^ 22巻『出木杉グッスリ作戦』など
- ^ 36巻『貸し切りチップ』
- ^ 41巻『時限バカ弾』
- ^ アニメ『7年後のなやみ』
- ^ 1巻『強いペットがほしい』
- ^ 40巻『しずちゃんをとりもどせ』
- ^ 34巻『時はゴウゴウと流れる』など
- ^ 『のび太の大魔境』
- ^ 『のび太の魔界大冒険』
- ^ 『のび太の宇宙小戦争』
- ^ 『のび太とアニマル惑星』
- ^ 『のび太と翼の勇者たち』