十五少年漂流記
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『十五少年漂流記』(じゅうごしょうねんひょうりゅうき)は、ジュール・ヴェルヌが1880年に発表した冒険小説で、無人島に漂流した少年達が力を合わせて生活していく物語を描いている。原題は『二年間の休暇』(Deux Ans de Vacances)。
目次 |
[編集] 翻訳
日本では1896年(明治29年)に森田思軒により博文館の雑誌「少年世界」で『冒険奇談 十五少年』(なお「冒険」という言葉はこの翻訳の際造語された)として英訳本からの抄訳重訳して連載され、12月に『十五少年』として出版され評判となった。
『十五少年漂流記』というタイトルは森田思軒の娘下子の夫である白石実三により命名されたという。これは後に新潮社が子供向けに内容を簡略化した作品を『十五少年漂流記』というタイトルで1951年に出版し、昭和時代中頃には完全に定着した。後に福音館書店が簡素化しない、原作に沿った内容の翻訳版を1968年に『二年間の休暇』というタイトルで出しており、重版を重ねるロングセラーになっている。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] ストーリー
1860年3月原因不明の事故によって15人の少年を乗せた船はニュージーランドから嵐の海に漂流し、見知らぬ土地に流れ着いてしまう。
ここは大陸かもしくは島なのか。主張が対立した少年達は、確認するために海岸から内地へと調査に繰り出す。いくつかの発見の後に、ここが無人島、しかも近くに陸地などがない孤立した島だと認識した。
海風や波にさらされて傷んでいく船から、内地に発見した洞窟に移り住んだ少年達は、島に名前を与え、自分たちの代表を選出し、15人の植民地として運営していく体制を整えていく。島内で新たに発見する動植物や、工夫を重ねた道具の作成などで島での生活は次第に潤っていくが、フランス人のブリアンとイギリス人のドニファンとの対立を軸にした仲間割れは、15人の結束に少しずつひびを入れていく。さらにジャックの抱えていた秘密が、ブリアンに大きな衝撃を与える。
そして、漂流から2年目を迎えた嵐の夜、島に謎の船が流れ着いたことによって、少年達の生活は激動していく…。
[編集] 登場キャラクター
以下に漂流した15人の少年と、その飼い犬の紹介を記す。
- ブリアン(フランス人、13歳)
- 技師の息子で、ジャックの兄。勉強嫌いなため成績は悪いが頭の回転は速く、下級生を助けるためには上級生との喧嘩もいとわないことからみんなから慕われる。ドニファンとは仲が悪い。
- ジャック(フランス人、10歳)
- ブリアンの弟。いたずら好きで明るいが、船に乗ってからは別人のようになってしまう(余談だが、彼のみ本文に年齢に関する記述がない)。
- ゴードン(アメリカ人、14歳)
- 几帳面で、冷静に物事を考えることからみんなに尊敬されている。その人柄故に初代大統領に命じられ、ジャックとドニファンの仲裁も行う。物事をこまめに手帳に書き留めている。猟犬ファンを連れてきている。
- ドニファン(イギリス人、13歳)
- 金持ち地主の息子で、すぐにいばりたがるため「ドニファン卿」とあだ名を付けられている。頭が良く、負けず嫌いなこともあって成績は良い。また、射撃の名手でもある。ブリアンの方が人気があるため、彼に突っかかり、張り合っていく。
- クロス(イギリス人、13歳)
- ドニファンの従兄で、やはり地主の息子。ドニファンの言うことにはいつも賛成し、彼に従っている。
- バクスター(イギリス人、13歳)
- あまり裕福ではない商人の息子。手先が器用な少年で、漂流先でも様々な工夫を凝らして道具などを自作し、みんなの生活を助ける。書記に命じられ、島での日記を付ける。
- ウェップ(イギリス人、13歳)
- 父親は裁判所に勤めている。
- ウィルコックス(イギリス人、13歳)
- 同じく、父親は裁判所に勤めている。島での獲物を捕らえる手段は銃が主流だったが、ウィルコックスは投げ縄などの罠を考案。弾丸や火薬を消費せずに狩りが出来るとして、大いに重宝された。
- ガーネット(イギリス人、12歳)
- 元商船団長の息子。サービスと仲が良い。アコーデオンが大好きで漂流先にもちゃんと持ってきており、行事の際にもみんなに演奏を披露する。
- サービス(イギリス人、12歳)
- 一番陽気で、ムードメーカー。愛読書は「ロビンソン・クルーソー」と「スイスのロビンソン」。島での生活では、家畜の飼育や料理を担当するようになる。ロビンソンに憧れて(ロビンソンは島で見つけたオウムを飼い慣らしたというエピソードがある)、島にいたモアを飼い慣らそうとするが…。
- ジェンキンス(イギリス人、9歳)
- アイバースン(イギリス人、9歳)
- コスター(イギリス人、8歳)
- ニュージーランド陸軍将校の息子で登場人物では最年少。食いしん坊。
- ドール(イギリス人、8歳)
- 同じくニュージーランド陸軍将校の息子。コスターよりも6ヶ月年上。甘い物が好き。
- モコ(黒人、12歳)
- 見習い水夫として、船に乗り込んでいた。料理やボートの操縦など、様々なことをこなす。ブリアンを慕うようになる。
- ファン(犬)
- ゴードンの連れてきた猟犬。狩りで活躍するが、他にも節々で重要な役割を果たす。
[編集] 用語
以下に本作品の主な用語を記す。
- チェアマン寄宿学校
- 少年達が通う寄宿学校。ニュージーランドにあり、地元の上流家庭の子供が通っている。
- スラウギ号
- 少年達が乗っていた船で、100トンほどの大きさのスクーナー。漂着後は島の生活を支える資材として解体される。スクーナーについては帆船を参照。
- チェアマン島
- 少年達が漂着した無人島。50年前、フランス人の高級船員が遭難している(そのため、後に自分たちが住む洞窟にフレンチ・デン(フランス人の洞窟)という名前を付けている)。自分たちの寄宿学校の名称にちなみ、チェアマン島と名付けた。
- なお、チェアマン島のモデルはマゼラン海峡にあるハノーバー島と考えられているが、まったく別の島ではないかという説もあり、その説を元に「椎名誠の感動2万マイル!「十五少年漂流記」の謎の島を行く」(TBS 2005年7月18日放送)という番組が作成されている。
[編集] 関連作品
モチーフとして作成された作品としては、以下のものなどがある。
- 十五少女漂流記(松竹映画、1992年)
- 銀河漂流バイファム(アニメ)
- 恐竜冒険記ジュラトリッパー(アニメ)
- 蝿の王:イギリスのウィリアム・ゴールディング作。第三次世界大戦下でイギリス人少年達が島に漂着する。
- 神秘の島:ヴェルヌ自身が本作品以前に発表した、5人の男達が漂流する物語。海底二万リーグにも登場したネモ船長が登場する。
[編集] 日本語訳
- 『二年間の休暇』(福音館古典童話シリーズ)(朝倉剛翻訳)福音館書店 ISBN 4834001334
- 『二年間の休暇(上)』(完訳版)(大友徳明翻訳)偕成社 ISBN 4036520202
- 『二年間の休暇(下)』(完訳版)(大友徳明翻訳)偕成社 ISBN 403652030X
- 『十五少年漂流記』 新潮社文庫 ISBN 4102044019
- 『十五少年漂流記』(子どものための世界文学の森)(瀬川昌男翻訳)集英社 ISBN 4082740244