地下鉄対応車両
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地下鉄対応車両(ちかてつたいおうしゃりょう)とは、長大トンネルや地下鉄道に乗り入れる事を前提にして、その区間を運行する鉄道車両のこと。すなわち、ある鉄道事業者が地下鉄道ないしは長大トンネルを介した他鉄道事業者への乗り入れに際して、自社局のシステムの他に他社局の保安装置等を設備するなどの独自規格に準拠している車両のことをいう。
なお、国土交通省は、鉄道に関する技術上の基準を定める省令の解釈基準を満たした鉄道車両を地下鉄等旅客車(ちかてつとうりょかくしゃ)として特に区別し称している。長大トンネルや地下を走行するための安全性(難燃性や避難経路の確保など)が特に厳しく求められており、この面での特色については「地下鉄等旅客車」の項を参照されたい。ただし、1960年代後半以降に作られた車両では、もっぱら地上線で使用される車両であっても難燃性に関しては地下鉄対応車両に準じており、JR東日本のサハ103一般型が側窓などの小改造のみで地下鉄東西線乗り入れ編成に編入された例がある。
[編集] “相互乗り入れ規格”としての「地下鉄対応車両」
基本的な構造としては地下鉄等旅客車の内容の他に、直通各事業者間の協定により、乗り入れ先の路線の規格に合致させるため以下のような設備をさらに整備する。新線開業等では極力相手先の設備に初めから統一しておくなどの方策が採られる場合もある。
- 車両構造(長さ・幅・高さ、固定軸距、各部寸法等)
- 保安装置(ATS・ATC)
- 列車無線
- ある一定以上の起動加速度・減速度(トンネル内最急勾配での故障編成引き出し可能等)
- ドアの構造・位置・個数の統一化
- 乗務員室の機器配置の統一化
- 異常時対応設備(避難ハシゴ等)
なお、各事業者同士で車両形式番号が重複しないように調整している例も一部ある。
[編集] 「地下鉄対応車両」の実例
都営地下鉄浅草線(当時は1号線)が建設中だった1957年(昭和32年)6月に京浜急行電鉄・京成電鉄・東京都交通局の間に結ばれた1号線直通車両規格が最初である。当時はちょうどATSや列車無線が導入され始めた時期でもあったので、これらも各者で共通の仕様とされたが、後の例では、各事業体が既に導入している仕様の機器を重複して搭載する例が多くなった。そのため、同じ形式の車両であっても、保安装置(ATS・ATC)や列車無線が地下鉄乗り入れに対応しているかどうかによって運用が限定される場合も多い(例:京王電鉄の6000系30番台車両や、東京急行電鉄1000系東横線配属車両)。
また、その締結の際に車両規格のみではなく車両形式なども規定する場合がある(都営1号線規格など)。その際、互いの車両形式の範囲を固定して取り決めていることもあり、例えば先の京浜急行電鉄(車両番号は2999号まで)や京成電鉄(車両番号は3000番台)の場合では、京浜急行の旧1000形電車と新1000形電車のように、古い形式の代替車両として製造した車両に同じ形式・番号を再度使用するという事態も起こる。逆に、東急田園都市線・東京地下鉄半蔵門線・東武伊勢崎線の相互乗り入れの様に、それぞれの会社で8000番台の番号を持つ電車が存在し、主力として同じ線路を走っている例もあり、事業者による考え方の差が大きい。
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