都営地下鉄浅草線
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浅草線(あさくさせん)は、東京都大田区の西馬込駅と墨田区の押上駅を結ぶ、東京都交通局が運営する鉄道路線(地下鉄)。正式名称は1号線浅草線である。
全線に亘って地下を走行する。路線名の由来は下町のイメージが色濃く残り、かつ国際都市でもある浅草から。車体及び路線図や乗り換え案内で使用されるラインカラーは「ローズ」(桃):○ A
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[編集] 路線データ
- 路線距離(営業キロ):18.4 km
- 軌間:1435 mm(標準軌)
- 駅数:20駅(起終点駅含む)
- 複線区間:全線
- 電化区間:全線(直流1500 V 架空電車線方式)
- 閉塞方式:自動閉塞式
- 保安装置:乗り入れ先各社と共通の1号型ATS。ただし、2007年よりその改良型である C-ATS を一部使用開始している。現在、日本の地下鉄で唯一ATC非装備。
- 最高速度:70 km/h
- 車両基地:馬込車両検修場
[編集] 概要
東京特別区部の南部から中央部に掛けて、おおむね南北に走る。泉岳寺駅で京急本線と、押上駅で京成押上線と接続し、それぞれ直通運転を行っている(詳細は#運行概況を参照)。
東京の地下鉄路線のうち、丸ノ内線、千代田線、有楽町線、南北線との接続駅を持たず、接続しない路線の数が最も多い。乗り換えが不便な駅も多く、大手町駅、霞ケ関駅といった地下鉄路線が集まる主要駅を経由しないこともあり、朝ラッシュ時の最混雑率は121%(平成17年度)と東京の地下鉄では最も低いレベルにある。
収支状況は平成17年度決算で純損益約61億円の黒字[1]である。
[編集] 沿革
- 1960年(昭和35年)12月4日 押上~浅草橋間 (3.2km) 開業。地下鉄と郊外の民鉄事業者による初の乗り入れとして京成電鉄と相互直通運転開始。京成曳舟~荒川(現・八広)間に向島検修場を開設。
- 1962年(昭和37年)5月31日 浅草橋~東日本橋間 (0.6km) 開業(単線)。同日浅草橋駅の線路配線を一部変更(引上線を旧北行線に移設。旧留置線を新北行線に変更)。
- 1962年(昭和37年)9月30日 東日本橋~人形町間 (0.7km) 開業、浅草橋~東日本橋間複線化。
- 1963年(昭和38年)2月28日 人形町~東銀座間 (2.4km) 開業。列車の折り返しは0.9km先の汐留信号所(初代)で行った。
- 1963年(昭和38年)12月12日 東銀座~新橋間 (0.9km) 開業。汐留信号所(初代)を駅に格上げ。
- 1964年(昭和39年)10月1日 新橋~大門間 (1.1km) 開業(単線運転。このため約半数の列車は新橋駅折り返し)。
- 1968年(昭和43年)6月15日 新橋~大門間複線化。また京急車の浅草線内営業運転を開始。
- 1968年(昭和43年)6月21日 大門~泉岳寺間 (2.6km) 開業。京浜急行電鉄と相互直通運転開始。
- 1968年(昭和43年)11月15日 泉岳寺~西馬込間 (6.9km) 開業。全線開通。馬込検修場・車両工場が完成し、向島検修場廃止。
- 1970年(昭和45年)7月 ラインカラーを導入。
- 1970年(昭和45年) 京急の夏季休日ダイヤの関係で一部列車が臨時増結し、東京の地下鉄で初めて8連で乗り入れる。
- 1973年(昭和48年)12月31日 労働争議により、浅草線の大晦日~元日の終夜運転を中止する。
- 1976年(昭和51年) 5200形電車営業運転開始。
- 1978年(昭和53年)6月21日 一部定期列車での8連運転を開始する。
- 1978年(昭和53年)7月1日 1号線から1号線浅草線(通称:浅草線)に改称。
- 1986年(昭和61年)12月31日 浅草線を含む都営地下鉄で大晦日~元日の終夜運転を再開。
- 1989年(平成元年)3月19日 江戸橋駅を日本橋駅に改称。
- 1991年(平成3年)3月31日 北総開発鉄道(現・北総鉄道)と相互直通運転開始。5300形電車営業運転開始。
- 1995年(平成7年)7月2日 5000形電車の営業運転終了。冷房化率100%となる。
- 1998年(平成10年)11月18日 地下鉄初の特急列車となるエアポート快特・エアポート特急(現在廃止)運転開始。
- 2002年(平成14年)10月27日 芝山鉄道と相互直通運転開始。
- 2004年(平成16年)6月 馬込車両検修場完成。馬込工場を廃止。
- 2006年(平成18年)11月3日 5200形電車の営業運転終了。西馬込~北総線千葉ニュータウン中央間でさよなら運転を実施。
- 2007年(平成19年)3月17日 C-ATSの一部機能を使用開始。
[編集] 運行概況
以下の鉄道路線との乗り入れが存在し、相互直通運転の多様性が特色として挙げられる。大部分の列車が他社線と直通し、線内のみを運転するものは少ない。列車は最大で4事業者に跨って運転されるが、これはパスネットにおける改札内乗継回数の上限と重なる(但し、芝山鉄道線内ではパスネット使用不可)。
- 押上駅経由
- 泉岳寺駅経由
泉岳寺から南方向は利用者の多い京急線との直通を優先し、西馬込方面より品川・羽田空港・横浜方面への列車を多く設定している。このため西馬込~泉岳寺の区間運転も多数存在し、日中は同区間を走る列車の3分の2にも及ぶ。
列車種別については、エアポート快特を除いて乗り入れ先における種別を、線内止まりの列車は「普通」を名乗る。地下鉄線としては珍しく「普通」種別が存在する。エアポート快特以外はすべて各駅に停車する。乗り入れ前後で種別が変わる列車もあり、種別変更は押上駅・泉岳寺駅・品川駅で実施される。なお、京急線に直通する普通列車は平日2本と土曜・休日1本の品川行のみである。
[編集] ダイヤ
乗り入れ先である京急本線・北総線が20分サイクル、京成本線・押上線が40分サイクルのパターンダイヤなので、浅草線でも40分サイクルのパターンダイヤが組まれている。日中の1時間当たりの運行本数は原則として以下の通り。
- 西馬込駅~泉岳寺駅 6本
- 西馬込駅~押上駅~(普通・急行)~京成高砂駅(一部青砥駅) 3本
- 南行は半数が京成線内急行で、泉岳寺で急行がエアポート快特、普通は泉岳寺始発の快特に接続。北行はすべて普通で、半数が押上でエアポート快特を退避。
- 三崎口駅・京急久里浜駅~(快特)~泉岳寺駅~押上駅~(普通・急行)~青砥駅・京成高砂駅 3本
- 北行の半数は京成線内急行。南行の半数は押上でエアポート快特を退避。
- 羽田空港駅~(快特)~泉岳寺駅~押上駅~(快速)~京成佐倉駅 3本
- 半数はエアポート快特。
- 羽田空港駅~(急行)~泉岳寺駅~押上駅~(普通)~印旛日本医大駅・印西牧の原駅 3本
- 毎時1本は印西牧の原駅発着。
全体では、西馬込駅~泉岳寺駅間が毎時9本、泉岳寺駅~押上駅間が毎時12本(うち8本に1本はエアポート快特)の運転となる。日中は泉岳寺駅で接続が図られ、西馬込発着の電車と京急線内発着の電車との乗り換えがしやすくなっている。
箱根駅伝開催日は京急蒲田駅付近にある第一京浜の踏切を選手が通過するため、毎年臨時ダイヤが組まれる。
[編集] エアポート快特
- 詳細はエアポート快特を参照
優等列車として、乗車券のみで乗車可能なエアポート快特が運行されている。停車駅は駅一覧表を参照。待避駅は押上のみで、線内では列車の追い越しは行われない。押上駅で先行列車を追い越すほか、泉岳寺では西馬込発着の区間列車と接続するダイヤを組んでいる。京急線からのエアポート快特は京成線内ではすべて快速となるが、夜間に京急線内を急行として運転され京成線へ乗り入れるエアポート快特のみ、京成線内で通勤特急あるいは快特になる。
設定当時は羽田・成田の両空港を結ぶ列車との位置づけだったが、先行列車を追い越せないため、昼間時及び朝ラッシュ前の南行と夕方ラッシュ終了後の北行のみが運行されていた。また青砥駅・京成高砂駅と羽田空港駅を結び、地下鉄線内はエアポート快特と同じ駅に停車する「エアポート特急」も運行されていたが、1999年7月のダイヤ白紙改正で「エアポート快特」に統合された。しかし、一部の駅では「当駅にはエアポート快特・エアポート特急は止まりません。通過電車にご注意下さい。」という表記が残っている。
毎年7月に開催される隅田川花火大会の際には、観客輸送のため蔵前・本所吾妻橋の両駅に臨時停車する。
[編集] 車両
[編集] 自局車両
- 5300形
- E5000形電気機関車(大江戸線12-000形の馬込車両検修場までの牽引回送用)
[編集] 廃車
[編集] 乗り入れ車両
- 京成電鉄
- 京浜急行電鉄
- 北総鉄道
- 芝山鉄道
[編集] かつて乗り入れていた車両
- 京成電鉄
- 北総開発鉄道
[編集] 駅一覧
全駅東京都に所在。すべて8両編成に対応したホームを持つ。エアポート快特以外の種別(快特・特急・通勤特急・急行・快速・普通)はすべて各駅に停車するため、停車駅は省略する。
駅番号 | 駅名 | 駅間キロ | 累計キロ | エアポート快特 | 接続路線 | 所在地 |
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A-01 | 西馬込駅 | - | 0.0 | 京急本線 ・空港線 直通運転 |
大田区 | |
A-02 | 馬込駅 | 1.2 | 1.2 | |||
A-03 | 中延駅 | 0.9 | 2.1 | 東京急行電鉄:大井町線 | 品川区 | |
A-04 | 戸越駅 | 1.1 | 3.2 | |||
A-05 | 五反田駅 | 1.6 | 4.8 | 東日本旅客鉄道:山手線 東京急行電鉄:池上線 |
||
A-06 | 高輪台駅 | 0.7 | 5.5 | 港区 | ||
A-07 | 泉岳寺駅 | 1.4 | 6.9 | ● | 京浜急行電鉄:本線(空港線羽田空港駅・久里浜線三崎口駅まで直通運転) | |
A-08 | 三田駅 | 1.1 | 8.0 | ● | 都営地下鉄:○三田線 (I-04) 東日本旅客鉄道:山手線・京浜東北線(田町駅) |
|
A-09 | 大門駅 | 1.5 | 9.5 | ● | 都営地下鉄:○大江戸線 (E-20) 東日本旅客鉄道:山手線・京浜東北線(浜松町駅) 東京モノレール:羽田線(モノレール浜松町駅) |
|
A-10 | 新橋駅 | 1.0 | 10.5 | ● | 東京地下鉄:○銀座線 (G-08) 東日本旅客鉄道:山手線・京浜東北線 ゆりかもめ:東京臨海新交通臨海線(U-01) |
|
A-11 | 東銀座駅 | 0.9 | 11.4 | | | 東京地下鉄:○日比谷線 (H-09) | 中央区 |
A-12 | 宝町駅 | 0.8 | 12.2 | | | ||
A-13 | 日本橋駅 | 0.8 | 13.0 | ● | 東京地下鉄:○銀座線 (G-11)・○東西線 (T-10) | |
A-14 | 人形町駅 | 0.8 | 13.8 | | | 東京地下鉄:○日比谷線 (H-13) | |
A-15 | 東日本橋駅 | 0.7 | 14.5 | ● | 都営地下鉄:○新宿線(馬喰横山駅:S-09) 東日本旅客鉄道:総武線(快速)(馬喰町駅) |
|
A-16 | 浅草橋駅 | 0.7 | 15.2 | | | 東日本旅客鉄道:中央・総武線(各駅停車) | 台東区 |
A-17 | 蔵前駅 | 0.7 | 15.9 | | | 都営地下鉄:○大江戸線 (E-11)(※乗り換えには地上の道路を歩く必要がある) | |
A-18 | 浅草駅 | 0.9 | 16.8 | ● | 東京地下鉄:○銀座線 (G-19) 東武鉄道:伊勢崎線 |
|
A-19 | 本所吾妻橋駅 | 0.7 | 17.5 | | | 墨田区 | |
A-20 | 押上駅 | 0.8 | 18.3 | ● | 東京地下鉄:○半蔵門線 (Z-14) 京成電鉄:押上線(直通運転) 東武鉄道:伊勢崎線 |
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京成押上線経由京成本線成田空港駅、北総鉄道北総線印旛日本医大駅、 京成東成田線経由芝山鉄道線芝山千代田駅まで直通運転 |
[編集] その他
- 当初計画では浅草駅は存在せず、浅草橋から駒形を経由して押上に向かう予定であった。しかし、浅草を経由した方が便利との意見が多く、蔵前・浅草・本所吾妻橋の各駅が設置され、駒形には駅が置かれなかった(蔵前が駒形の代替となった)。駒形の駅用地は駒形変電所として活用されている。
- 2001年5月の「首都圏の空港アクセス緊急改善対策」及び8月の「都市再生プロジェクト第二次決定」を受け、国土交通省・東京都・中央区・鉄道事業者などが検討委員会を設置し、周辺の再開発とともに日本橋~東銀座に東京駅への支線建設が検討された[2]。この計画が実現した場合、東京駅から羽田・成田両空港への新たな直通アクセス路線となる。特に成田空港へは2010年4月開業予定の「成田新高速鉄道」とあわせて最短アクセス路線となる(京成成田新高速鉄道線及び北総鉄道北総線#成田空港延伸を参照)。また、この計画が実現すれば、成田エクスプレスにとって強力なライバルが出現することになる。
- 大江戸線の汐留駅構内から新橋駅と大門駅の間まで、大江戸線の車両(12-000形)を馬込車両検修場へ回送するための連絡線がある。ただし、リニアモータ式の12-000形は浅草線内を自走できないため、両線で走行可能なE5000形電気機関車によって牽引される。
- 1978年、ロックバンドポリスの「So Lonely」のプロモーションビデオ撮影に本路線の車内や三田駅が使われた。
- 車内の旅客案内表示器による乗換案内は京急車では行なわれない。また、駅ナンバリングは都営車の一部のみ表示される。