妙見菩薩
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
妙見菩薩(みょうけんぼさつ)は仏教における信仰対象である天部の一つ。本来、「菩薩」とはサンスクリットの「ボーディ・サットヴァ」の漢音写「菩提薩埵」から来た言葉で、「悟り(真理)を求める者」の意だが、妙見菩薩は、他のインド由来の菩薩とは異なり、中国の星宿思想から来たもので、北極星を神格化したものであることから、通常は大黒天や毘沙門天・弁才天と同じ天部に分類されている。
古代中国の思想では、北極星(北辰とも言う)は天帝と見なされた。これに仏教思想が流入して「菩薩」の名が付けられ、妙見菩薩と称するようになった。「妙見」とは「優れた視力」の意で、善悪や真理をよく見通す者ということである。
妙見菩薩信仰には星宿信仰に道教、密教、陰陽道などの要素が混交しており、像容も一定していない。 他に甲冑を着けた武将形で玄武(亀と蛇の合体した想像上の動物で北方の守り神)に乗るもの、唐服を着て笏を持った陰陽道系の像など、さまざまな形がある。
日本で重要文化財に指定されている妙見菩薩の彫像は、読売新聞社所有(よみうりランド内聖地公園保管)の1体のみである。この像は、正安3年(1301)の銘があり、もと伊勢神宮外宮の妙見堂にあったものとされる。しかし、この像は甲冑を着け、右手に剣を持ち、頭髪を美豆良(みずら)に結った特殊な像容を示し、所伝とおり妙見菩薩と呼ぶべきかどうか若干疑問の残るものである。
また、中世においては千葉氏が妙見菩薩を一族の守り神としており、同氏の氏神とされる千葉市にある千葉神社は今日でも妙見菩薩と同一と見なされている天之御中主神を祭神としている(明治維新の際の神仏分離令によって、「菩薩」を公然と祀れなくなってしまった為、また大阪府の星田妙見宮など千葉神社と同様の経緯を持つ神社も少なくはない)。また、同社は源頼朝や日蓮からも崇拝を受けており、この縁により妙見菩薩が日蓮宗の寺院に祀られることが多い。