安楽死
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安楽死(あんらくし)とは、末期がんを初めとした「治療不可能」かつ「苦痛の強い」疾患の患者を救済するため、医師などが積極的あるいは消極的手段によって死に至らしめること。 概念は紀元前よりあったが、言葉自体はフランシス・ベーコンが造った。
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[編集] 積極的安楽死と消極的安楽死
安楽死は、大別すると「積極的安楽死」と「消極的安楽死」に分けられる。
- 積極的安楽死
- 薬物を投与するなどの積極的方法で死期を早めること。いわば医療の名の下に行われる自殺幇助ということになり、社会からの心理的抵抗は大きい。また、日本を含む多くの国では刑事犯罪として扱われる。
- 消極的安楽死
- 無意味な延命治療、努力をしないで死に致しめること。尊厳死を保つ意味からも合理的で社会的に認知されており、実際の医療現場でもひろく行われる。自然に死を迎えるという意味でナチュラルコースとも。
例として、呼吸の停止した患者に人工呼吸器を取り付け、その後自発呼吸がないのに取り外すのは積極的安楽死となる。最初から人工呼吸器を取り付けない(心肺蘇生法を施さない)のは消極的安楽死である。ほぼ同等の行為でありながら片方は認められていない行為となるため、救命・延命をどこまで行うかは事前によく検討して合意を形成しておく必要性が高い。
[編集] 最近の問題
積極的安楽死について、その是非が問われている。日本では、積極的安楽死の容認については慎重である。
- 1991年、東海大学事件
- 1995年、京都府の「国保・京北病院」の事件
[編集] 安楽死の法的扱い
日本においては安楽死は法的に認めておらず、刑法上殺人罪の対象となってしまう。昭和37年の名古屋高裁の判決によると、安楽死は六つの要件を満たせば違法性が阻却されるとされている。以下にその六つの要件を列挙する。詳しくは東海大学安楽死事件を参照のこと。
- 死期が切迫していること
- 耐え難い肉体的苦痛が存在すること
- 苦痛の除去・緩和が目的であること
- 患者が意思表示していること
- 医師が行うこと
- 倫理的妥当な方法で行われること
[編集] 積極的安楽死を認めている国
- アメリカ(オレゴン州) - 1994年「尊厳死法 (Death with Dignity Act)」成立
- オランダ- 2001年「安楽死法」可決。
- ベルギー- 2002年「安楽死法」可決。
- フランス- 2005年「尊厳死法」可決。
- スイス- 1942年
[編集] 動物に対する安楽死
人間に対する安楽死だけでなく、ペットなどの動物に対しても安楽死がある。例えば競馬において競走馬が回復不可能な怪我を負った時などに獣医師から予後不良という診断が下されることがあるが、これはそのまま安楽死を意味する。ペット等においても、怪我や病気等で治癒の見込みが絶望的である場合など、苦痛からの開放などを願って安楽死という選択がなされることがある。