廃棄物の処理及び清掃に関する法律
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
通称・略称 | 廃棄物処理法、廃掃法 |
---|---|
法令番号 | 昭和45年法律第137号 |
効力 | 現行法 |
種類 | 環境法 |
主な内容 | 廃棄物の抑制と適正な処理、生活環境の清潔保持 |
関連法令 | 循環型社会形成推進基本法 |
条文リンク | 総務省・法令データ提供システム |
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(はいきぶつのしょりおよびせいそうにかんするほうりつ)昭和45年12月25日法律第137号(最近改正:平成18年6月2日)は、廃棄物の排出抑制と処理の適正化により、生活環境の保全と公衆衛生の向上を図ることを目的とした法律である。
略称:廃棄物処理法、廃掃法
目次 |
[編集] 歴史
1900年に伝染病の蔓延を防ぐために制定された汚物掃除法が元となっており、このときに、ごみ収集が市町村の事務として位置付けられている。当時は公安管轄の法律であり規制と罰則を中心とした内容であった。その後、1954年に清掃法に改正された。
1960年代になると、経済の高度成長に伴って、大量消費、大量廃棄によるごみ問題が顕在化した。また、ごみ焼却工場自体が公害発生源として、問題となってきた。このため、1970年のいわゆる公害国会において、清掃法を全面的に改める形で、廃棄物の処理及び清掃に関する法律が成立した。
2000年代は改正が頻繁に行われている。例えば、最終処分場跡地の形質変更を行う際には,都道府県知事等への届出が義務化された。また,2006年には,石綿含有廃棄物に係る処理基準が定められた。
[編集] 目的
第一条 この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。
[編集] 内容
[編集] 問題点
- 度重なる「対症療法」的改正
- 廃棄物の種類や発生する問題等は多様であり複雑なものとなっている。このため、ほぼ毎年のように法律の改正が行われているが、新たな問題が顕在化するスピードの方が圧倒的に早く、後手に回る感が否めない状況となっている。
- また、法律の改正が難しいケースにおいては、施行令(政令)の改正、施行規則の改正、通達等の多発により事実上の制度改正を対症療法的に行っているため、矛盾が生じている部分も多いとされる。さらに、改正後に施行令や施行規則の一部が附則等によって打ち消されていると解釈できる例もあるなど、法の運用上、問題があるという批判もある。
- 許可制度の問題
- 廃棄物の処理(収集運搬、処分)を業とするには都道府県知事の許可が必要である。産業廃棄物の適正な処理を図る観点では必要な制度であるが、リサイクルするための廃品を取り扱う際にも、いちいち許可を得る必要が生じる。循環型社会の形成の妨げになっており、法の目的に反しているとの指摘がかねてよりされている。
- 法律上の「廃棄物」の定義
- 廃棄物か否かの判断は、主に有償で取引できるか否かというポイントにある。このため、古紙では市場価格の変動により廃棄物扱い寸前となった時期があった。リサイクル制度の進展を図るために、廃棄物の定義の見直しが幾度も試みられてきたが、他の手法による定義付けは困難であり結論がでないようである。なお、行政(地方公共団体及び環境省、厚生労働省等)の実務においては、廃棄物でないものを「有価物」として、有償での取引か否かを基準としているが、司法においてはいわゆる水戸地裁の「木くず判決」(H16.1.26 水戸地方裁判所 平成14年(わ)第36号,同第205号)で、廃棄物でないものを「有用物」としてリサイクル用途のものをこの中に含め、有償での取引か否かの基準には必ずしもこだわらない判断をしている。この、行政と司法で基準が異なる混乱が、法的リスクから企業を及び腰にさせ、リサイクルの推進を妨げている。さらに、不適正処理案件において有価物(有用物)抗弁をされた場合、行政は強い指導に踏み切ることを躊躇する傾向がある。確かに「あるモノが廃棄物か否か」はいわば永遠の哲学的テーマともいえるが、上記のような廃棄物の法的定義のあいまいさが不法投棄や不適正保管等を撲滅できない遠因となっている。
- 「事業系一般廃棄物」の取扱における、不可避の違法行為
- 廃棄物処理法上、産業廃棄物を政令で定めるもの(20種類)と定めて排出者の責任で処理するもの(産業廃棄物処理業の許可業者に委託することが可能)とし、それ以外を一般廃棄物として市町村での処理を基本としている。また産業廃棄物の一部には業種が限定されているものもあり、事業活動から排出されるものでも20種類に当てはまらなかったり、業種が該当しなかったりすると、一般廃棄物として扱われることとなり、これらは「事業系一般廃棄物」と呼ばれている。
- 「事業系一般廃棄物」は、「事業者から出る廃棄物」という点では産業廃棄物と同様に事業者に自己処理責任がある(3条)が、他方法律上の扱いはあくまで一般廃棄物であり、自己処理ができない場合は、一般廃棄物として市町村や許可業者に処理を委託する必要がある。しかし実際は市町村の技術・能力では処理できないことが多く、法上は一般廃棄物処理業の許可業者に委託することが可能だが、一般廃棄物において許可業者はあくまで市町村の「一般廃棄物処理計画」を補完する例外的な位置付けであり、許可業者は少ない。他市町村の廃棄物受け入れは住民の反発も強いので他市町村に一般廃棄物処理業者がいても処理を頼むわけにもいかず、限られた範囲で適切な一般廃棄物処理業者を見つけられない場合は、廃棄物が行き場を失ってしまうため、やむを得ず一般廃棄物処理業の許可を持たない産業廃棄物処理業者(許可がないだけで、もちろん同種の産業廃棄物を処理しており、処理の技術や設備がある)への処理委託が、違法を承知で黙認されている状態である。のみならず自治体からの行政指導では、そうするように(違法行為を)勧められることもある。産業廃棄物と一般廃棄物と混和することも可能になったが、管理型処分場が必要なこともあり取扱者は少ない。この問題を解消するには、廃棄物処理の許可制度の見直しをするか、産業廃棄物と一般廃棄物の関係・区分けを抜本的に見直す必要がある。
- 特に製造業においては、不要となった木製のパレット(フォークリフトなどで荷物を運ぶときに使う、簀の子のような下敷き)が「事業系一般廃棄物」に該当するため、その処理が問題になっており、日本経団連から「事業系一般廃棄物」の取り扱い見直しの要望が出されている。その要望を受けてのことかは不明だが、2006年1月には、政府が産業廃棄物と一般廃棄物の区分見直しについて検討に入ると報道された。
[編集] 構成
- 第1章 - 総則(第1条~第5条の8)
- 第2条の2(国内の処理等の原則)
- 国内において生じた廃棄物は、なるべく国内において適正に処理されなければならない。
- 国外において生じた廃棄物は、その輸入により国内における廃棄物の適正な処理に支障が生じないよう、その輸入が抑制されなければならない。
- 第2条の2(国内の処理等の原則)
- 第2章 - 一般廃棄物の処理(第6条~第10条)
- 第3章 - 産業廃棄物(第11条~第15条の4の5)
- 第1節 産業廃棄物の処理
- 第2節 情報処理センター及び産業廃棄物適正処理推進センター
- 第3節 産業廃棄物処理業
- 第4節 特別管理産業廃棄物処理業
- 第5節 産業廃棄物処理施設
- 第6節 産業廃棄物の処理に係る特例
- 第7節 産業廃棄物の輸入及び輸出
- 第3章の2 - 廃棄物処理センター(第15条の5~第15条の16)
- 第3章の3 - 廃棄物が地下にある土地の形質の変更
- 第4章 - 雑則(第16条~第24条の5)
- 第5章 - 罰則(第25条~第33条)
[編集] 資格
- 特別管理産業廃棄物管理責任者
- 廃棄物処理施設技術管理者
- 環境衛生指導員
- 環境衛生監視員