悪の枢軸発言
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悪の枢軸発言(あくのすうじくはつげん)とは、2002年1月29日の一般教書演説でアメリカ合衆国のブッシュ大統領が、反テロ対策の標的として北朝鮮、イラン、イラクの3ヶ国を名指し「悪の枢軸 (axis of evil)」と総称して批判したもの。なお、2006年現在はこの定義が拡大し、ミャンマー・ベラルーシ・ジンバブエ・北朝鮮・イラン・キューバとなっている。
これら3ヶ国は大量破壊兵器を保有し、世界に脅威を与えるテロ支援国家とされた。
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[編集] 発言
発言は次の通りである。原文についてはウィキソース(英語版)を参照。
- 私たちの2番目の目標はテロを支援する政権が大量破壊兵器でアメリカと同盟国を威すのを防ぐことです。 これらの政権の中には、9月11日以来事態を静観しているあるものもありました。 しかし、私たちは彼らの本質を知っています。
- 北朝鮮はミサイルや大量破壊兵器で武装した上、自国の民衆を飢餓に追いやっています。
- イランもこうした武装を強く推進しており、イランの人々の自由は抑圧されたまま解放される見通しは立っていません。
- イラクはアメリカに対して敵意を向け続け、テロを支援し続けています。また神経ガスや核兵器をここ10年以上開発を目論んできました。すでに毒ガスにより数千のイラク人が殺害されており、数百の母親が子供たちを失うことになりました。国連の査察を受け入れるとする一方、査察団の締め出しを行いました。これは世界に対し何かを隠しているということです。
- こうしたテロリスト支援国家が悪の枢軸を成し、世界の平和に対して脅威を与えているのです。
なお、2006年3月10日にワシントンで行った講演でも再び悪の枢軸という表現を用い、イランと北朝鮮を批判している。
[編集] 影響
この発言は世界的に大きな波紋を広げ、北朝鮮などが態度を硬化させる原因にもなった。
さらに、2003年には国連の武器査察団に非協力的で、化学兵器、生物兵器などを保有すると米国などから見られているイラクと、国際原子力機関 (IAEA) の査察団を追放し、国際条約を破棄して核開発に乗り出した北朝鮮とがしばしば比較された。
米国がイラク問題により強い関心を示し、先制攻撃も辞さないとの姿勢を維持した一方で、北朝鮮に対しては外交ベースの折衝を行ったことから、「アメリカは石油をコントロールするためにイラクを攻撃したいのではないか」と疑われ、非難されることにもなった。
また、3ヶ国の内北朝鮮はイスラム教国家ではないこと、3ヶ国が軍事協定の類いを結んだ様子がない事(枢軸国との根本的違い)から、北朝鮮は「テロリズムに対する戦争」がイスラム教とキリスト教の戦争であるとの認識を否定するわかりやすい根拠だと考える向きもある。また、イランは当時改革派ハタミ政権であり、この発言でイラン改革派を追い込むことになった。そのため、イランに対する当時の発言は失言の批判が一部にある。
[編集] その他
「悪の軸」という表現は、ウィンストン・チャーチルとロナルド・レーガンからの引用を組み合わせたものと見られる。
- 「軸」という表現を使ったのは、チャーチルが初めてであり[要出典]、第二次世界大戦における「枢軸国」のことを指したものである。
- 冷戦中、レーガンによって使われた表現である「悪の帝国」は、当時のソ連を指したものであった。
ブッシュ大統領はレーガン大統領に影響を受けていることを認めており、レーガンが一般教書演説で行った「悪の帝国」発言を真似た物だという指摘がある。
[編集] 関連項目
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