文化祭
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文化祭(ぶんかさい、英 cultural festival)とは、児童・生徒・学生の日常活動による成果の発表などの目的で行われる学校行事である。学園祭(がくえんさい)・学校祭(がっこうさい)(英称はどちらも school festival)などともいう。又、小学校などの初等教育では、学芸会(がくげいかい、英 literary arts exhibition。学校によっては学習発表会(がくしゅうはっぴょうかい)などの別の呼称を持つこともある)と呼ぶ事が多い。
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[編集] 概要
文化祭には、学校の外部から様々な人々が通例訪れる。多くの人々は、文化祭を楽しみ目的で訪れる。又、その学校に対して興味や関心がある人や入学を希望している人、保護者などは、学校で行われている活動や校風・学風について見るためにも足を運ぶといわれる。
ダンス、音楽会、上演などが部活動団体やそれ以外の自発的な在学生たちによって行われる事が多い。教室や体育館が、仮設の食堂や喫茶店に模様替えされて、食事が提供される事もある。又、有名人を講演に招いたり、音楽家による音楽会を開いたりするところもある。近年では、埼玉県立川越高等学校の「くすのき祭」がシンクロナイズドスイミングの人気のおかげもあり、15000人以上の来場客があった事が知られている。大学の場合は、アイドルタレントによるライヴコンサートや、著名文化人による講演会・トークショーを開く学校もある。
多くの学校では、文化祭を1年に1回開催し、文化祭の運営は、児童会、生徒会の下に設けられた文化祭実行委員会などの組織が中心となって行われる。他行事と交互に実施するなどの理由により、2年または3年に1回の開催である学校もある。
なお、大学等の高等教育機関では学生で組織される学園祭実行委員会などが運営するが、学生自治会との関係は各学校によって異なる。
文化祭は、楽しさが感じられる行事であり、児童・生徒・学生にとっては、文化祭の成功という目的のために、仲間との間で共同作業に邁進する事ができ、達成感の強い行事である。同時に、自分の学校の特色を実感する機会にもなる。又、文化祭は、学校と地域社会相互の結びつきを深め、人々の豊かな生活に貢献するという意味合いもある。
しかし、近年では運動会や合唱コンクールなどと同様に多くの学校で以前ほど盛り上がらなくなっているのも事実である。一部の教師や生徒だけが張り切り、その他の生徒は白けているというケースが多い。今後のあり方が問われている時代であるといわれている。
[編集] 時期
秋(9月~11月。小学校~高等学校では2学期中、大学等では後期中)に行われることが多く、秋の歳時記的に扱われることも多い(この時期の美術展やコンサートとともに「芸術の秋」の核をなすとされる)。特に11月がそのピーク時期とされる傾向にある。ただし、これ以外の時期に行われる例も多い。
[編集] 各教育段階での文化祭の内容とその特徴
[編集] 初等教育での文化祭
小学校などの初等教育における文化祭(学芸会)は、児童の文化祭に対する運営経験が少ないため、実質的には教員が意匠を凝らした工夫をする必要があるといわれる。しかし、教員があまりにも過剰な計画を立ててしまうと児童の自主性を妨げてしまうので、文化祭(学芸会)に対する指導の難しさが指摘されることもある。
主に学年・学級単位で行われ、演劇・合唱・器楽演奏などを体育館(講堂)で行い、教室などそれ以外の学校施設は用いないことが多い。また、中等教育・高等教育と異なり、平日の日中に行われ、かつ保護者以外には非公開の傾向にある。
[編集] 中等教育での文化祭
中学校、高等学校、中等教育学校などの中等教育における文化祭は、基本的には生徒の自主性に任せ、教員は適宜指導や助言を行う。また、文化祭の全体的な方針などについては、教員と生徒会などが話し合うこともあるので、教員全体としての指導や参加が求められる。
[編集] 高等教育での文化祭
大学、短期大学などの高等教育における文化祭(学園祭)は、第二次世界大戦前から行われている。例えば、東京大学の五月祭は78回(2005年時点)を数える。なお、現在一般的である形態で行われるようになったのは第二次世界大戦後からであるとし、学生運動の発生とともに発展してきたという見方もある。新制国立大学で最初の文化祭は、岐阜大学(岐阜県)の「岐大祭」であるといわれており、57回を数える。
文化祭(学園祭)運営のほとんどが学生の手によって行われ、大学の事務局や教員の学生委員会などは、学生の活動に合わせて認可や助言を行う。一般的に学生や文化祭(学園祭)をつかさどる学生部等の組織の教職員のみが運営に関わり、その他の教職員の関わりは少ない。ただし、一部の大学においては、研究室開放という名目で、教員の研究発表を行っているものも見られる。なお、学生運動の影響などで、学生側の学園祭主催団体が複数存在する場合などは、混乱を避けるために大学主催で運営する事もある。
資金調達も学生が行っている事が多いが、授業料とともに学友会費などとして学校が代理徴収して、その費用の一部(金額のおおむね半分以内)を文化祭の費用にあてるという形態も見られる。
高等教育における文化祭(学園祭)は、外部の人達への学校を開放したり、学生達の意識を高揚させたりするという役割を果たしている。具体的には、部活動・クラブ活動・サークル活動などの学生団体による展示・発表、会誌・会報などの発行、資金調達や団結強化のための模擬店出店や、大学が行っている教育研究などの活動を発表する場となる。
[編集] 文化祭における問題点
[編集] 初等教育での問題点
小学校などの初等教育が行われる時期は、児童が急速に発達する時期であるので、児童の自主性を重んじつつ、学校全体としての取り組みを行うことが難しい。このため、文化祭(学芸会)そのものが行われなくなってしまうことがある。
[編集] 中等教育での問題点
中学校や高等学校などの中等教育が行われる時期は、生徒が多感かつ突進しやすいため、文化祭(学校祭)の盛り上がりによって羽目をはずす生徒もおり、文化祭(学校祭)直後に未成年者飲酒禁止法(大正11年法律20号)に触れる飲酒などで補導される生徒が出ることもある。中等教育に携わる教員には、これらに対する指導も求められるといわれる。
[編集] 高等教育での問題点
大学、短期大学などの高等教育の文化祭(学園祭)ついては、次のような内容・運営に関して改善を求める意見があがる学校も見られる。
- 教育や研究に関する発表・展示などが少ない。
- 行事主催団体(実行委員会など)や模擬店を催しているサークルなどの一部の学生のみで盛り上がっている。
- 教員が無関心で一部の教員に負担と権限が集中してしまう。
- 一部の大学においては、学園祭が一部の思想家との抗争の舞台になる。
- 経費の使途が十分に明らかにされないなど、情報公開が遅れている。
なお、近年では、高等学校と同様、学生の派手な飲酒文化が問題視され、酒類の販売の禁止などの措置が取られる大学もある。北海道大学の「北大祭」は、教員組織である学生委員会が、2005年から酒類の販売の禁止とともに、学園祭期間中の学内での飲酒を禁じた事で一時話題にもなった。
[編集] 文化祭を扱った作品
文化祭は、在学生にとって印象深い行事であるため、青少年向けの漫画、小説、ドラマ、アニメーションなどでの舞台として取り上げられる事もしばしばある。また、小学校の学芸会も小学生の生活を扱ったアニメ・ドラマ・出版作品で多く扱われる。
- アニメーション
- 押井守監督・脚本