喫茶店
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喫茶店(きっさてん)は、「喫茶を提供する店」という意味で、主に店内でコーヒーや紅茶など、酒類を除く飲み物を飲ませたり、茶菓を提供する飲食店。
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[編集] 概要
食品衛生法施行令第5条は、喫茶店営業を、「喫茶店、サロンその他設備を設けて酒類以外の飲み物又は茶菓を客に飲食させる営業をいう。」と明示している。
日本語の「喫茶」とは、もともと鎌倉時代(源実朝の時代)に中国から伝わった茶を飲用し効用を嗜む習慣や作法をさす言葉である。しかし、現在では、茶に限らず、コーヒーなど、他の湯で成分を抽出する飲み物や、さらには各種果汁や清涼飲料水なども含めて、これらを飲むことや、飲みながら菓子を食べたり、談笑することも「お茶する」などといい、「喫茶」の概念に含めることが多い。
喫茶店は、俗に略して「茶店」(さてん)とも呼ばれる。特にコーヒーを主力商品とする場合は「コーヒーショップ」、紅茶を主力商品とする場合は「ティーハウス」などとも呼ばれる。
また、本来の「茶」である日本茶や中国茶なども出される場合があるが、これらの提供が主となる場合は、喫茶店と呼ぶよりも「茶店」(ちゃみせ)、「茶屋」(ちゃや)、「茶館」(ちゃかん)などと、別の名で呼ばれる事が多い。
喫茶は本来、喫煙とは関係がない。しかしながら、禁煙の場所が増えてきた今日、禁煙の措置を取らないか、喫煙できる場所を設けている喫茶店もあるため、会社員や外回りの営業マンなどの間でコーヒーとともにタバコを一服する場所としても利用されている。
[編集] 日本の喫茶店
食品衛生法施行令が定める喫茶店営業では茶菓を提供できる。しかし、実際には、日本で喫茶店と言われる店には、ケーキ、ホットケーキ、パフェなどの菓子だけでなく、サンドイッチ、スパゲティなどの軽食、モーニングセットなどの独自のメニューがある場合も多く、都市部では、サラリーマン、学生等が朝食に利用する事が多い。また、昼食時限定で提供される店が多いカレーライスや定食類を求めて入る場合も多い。この様な店の場合、飲食店営業の許可を取った上で、主に飲み物や茶菓を提供している。
日本では、若者および女性向けに内装や食器、雰囲気などを重視した店舗を中心に「カフェ」と呼ばれることも多くなってきた。また、見晴らしの良いテラスにて「カフェテラス」を行っているところもある。ヨーロッパ風の店をヨーロピアン・カフェ、イタリア風の店をイタリアン・カフェと呼ぶ事もある。 また、店内に設置されていることが多い、新聞や雑誌を目当てに入る人もいる。
[編集] 世界の喫茶店
- ヨーロッパの都市には、路上にテーブル席を並べたカフェ(Cafe)があり、社交の場にもなっている。
- バール (イタリア) - イタリアの軽食喫茶
[編集] 喫茶店の歴史
- コーヒーハウスは新聞を読んだり、政治を論じたりといった男社会の交流の場でもあった(ロンドン、ギャラウェイが特に有名)。
- 1675年、パリに世界最古のカフェができる(現在のカフェ・プロコップ)。
- 1878年、神戸元町の「放香堂」が店頭でコーヒーを提供(元町3丁目に茶商として現存)。
- 1888年、東京下谷に本格的なコーヒー店「可否茶館」ができる。
- 1920年代、日本で喫茶店ブーム。当時コーヒー一杯10銭。
- 1950年代後半、日本でジャズ喫茶(JAZZ喫茶)、歌声喫茶、名曲喫茶などが流行。
- 1952年、ムジカが大阪市北区にオープン。日本初の本格的英国式紅茶の店となる。
- 1959年、談話室滝沢が東京都内にオープン。日本の高級喫茶店のはしりとなる。
- 1960年代後半から1970年代、日本で純喫茶が流行。店主自らコーヒーを淹れるこだわりの店が増える。
- 1970年代、スペースインベーダーの登場にはじまるアーケードゲームブームが興り、多くの喫茶店にテーブル筐体が設置された。ゲームが子供の教育上よくないと思われたことより、学校の校則に喫茶店への入店を制限するものが日本全国でみられた。
- 1980年代、セルフ式コーヒーチェーン店のドトールコーヒーが誕生(2006年現在、日本国内で一番店舗数の多い喫茶店でもある)。
- 1990年代、日本へスターバックスなどシアトル系チェーン店が進出。コーヒー一杯を400円から500円で売る。
[編集] 喫茶店の多い地域とサービス
日本の愛知県、岐阜県などは喫茶店の数が多いことで知られている。特に愛知県や岐阜県の場合、1999年の総務省統計局発表データによれば、全飲食店のうち喫茶店の占める割合が、全国平均は24.3%、東京都は17.7%、多いといわれている大阪府でも36.1%に対し、愛知県は41.5%、岐阜県は40.4%となっていて、喫茶店に対する支出も愛知県は全国平均の約2倍、岐阜県は約2.5倍を誇っている(なお、店舗数では大阪府が約13,000店で全国1位となっており、以下愛知県、東京都、兵庫県の順。都市人口当たりの店舗数では、大阪市、高知市、名古屋市、岐阜市の順となっている)。
当然ながら数の多い分だけ競争も激しく、それら地域ではコーヒーを頼めば菓子がついてくるのが半ば常識化している。また1960年頃から豊橋市・豊田市・一宮市などで「モーニングサービス」と称し、コーヒーの値段で朝の開店時刻から10時ごろまではゆで卵・トーストをつけるサービスもはじめられたが、これは好評だったので中京圏全域に広まっていたといわれる。
現在ではもっと競争が激しくなり、営業している全時間帯を「モーニングサービス実施」とする「フルタイムモーニング」や、ドリンク1杯分の値段でパンやゆで卵食べ放題のサービス、茶碗蒸し・サラダ・おにぎりといった物までつけ、朝食と変わらない量でコーヒー1杯分の値段とする店も出てきている。そのため、中京圏では町内の会談なども喫茶店で行うことが多いといわれる。また、スターバックスやドトールコーヒーといったセルフサービスのコーヒーショップも同地域に昨今進出しているが、前述の通り喫茶店の利用率が高いことから、なかなかシェアは獲得できずにいるともいわれている。コメダ珈琲店のように、名古屋から全国展開を始めるチェーン店もあるほどである。
[編集] 関連業種
[編集] 許可制度
日本において喫茶店を営業するためには、食品衛生法第21条の規定に基づき、喫茶店営業としての建物や調理場、衛生設備を含む各施設の基準を満たした上で、都道府県知事の許可を得る必要がある。
なお、食品衛生法施行令が定めるところによって、飲食店営業や菓子製造業・パン製造業、乳類販売業、あるいは風俗営業などとは別の業種と考えられているため、喫茶店の営業許可を得ただけでは、これらの営業をすることはできない。なお、飲食店営業の許可を取れば、喫茶店営業の許可がなくても、付随する形で茶菓を提供することは認められている。
許可を得た施設は、食品衛生法と食品衛生法施行令により、年間12回の監視または指導を受けることが定められている。