正装
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正装(せいそう)とは、冠婚葬祭や式典など公の場で着る衣服のこと。定められた衣服を着ることによって、敬意や謙譲の意を表現するものである。
何が正装に当たるかは文化や状況によって異なる。一般的には19世紀ごろのヨーロッパにおいて確立した服飾意識が全世界的に通用するとされているが、その民族固有の民族衣装のうち礼式にかなったものを着ればそれもまたたとえ他民族の場にあっても礼装となりうるという認識も現在ではひろく共有されている。
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[編集] 19世紀ヨーロッパの服飾に由来するもの
人種や民族にかかわらず、比較的普遍的に礼装として受け入れられているのは19世紀ヨーロッパに起源を持つ服飾である。その概要を示すと以下のようになる。
- 最礼装
欧米発祥の正装だが、日本も含め世界中で着られている。特に国家間の話し合いの席では人種・宗教・文化に関わらずスーツであることが多い。結婚式にはタキシード、葬儀には黒ネクタイ、ヤクザなら白スーツなど、幾つかの定番が存在する。但し、どの場合でも普通は黒の皮靴と合わせる。ドレスは女性のみに、めでたい場、楽しむための場で着られる。畏まった場では女性もスーツである。
[編集] 様々な正装
[編集] 和服
日本における正装の一つである。
- 男子
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- 衣冠束帯 - 平安時代に男子の正装として定められ、貴族や官僚が着用した。現在では皇族が神事や即位礼の際に用いている。
- 直衣 - 平安時代の略礼服に由来する。現在では皇族や神職が神事の際に用いる。
- 狩衣 - 平安時代の平服に由来し、江戸期にいたるまで公家や高位の武家が着用した。現在では神職や雅楽の伶人が用いる。
- 直垂・素襖・大紋 - 鎌倉時代の武家が用いたものだったが、後に礼装として扱われるようになり、江戸時代には高位の武家が着用した。現在では雅楽の伶人や能楽の囃子方、大相撲の行司などが用いる。
- 裃 - 室町時代末期ごろから発達し、江戸時代の武家や身分のある町人が用いた。現在では祭礼や葬儀(いずれも地方による)のほか、能楽師・歌舞伎役者など江戸期に発展した伝統芸能の世界でひろく用いられている。
- 紋付羽織袴 - 江戸時代の略礼服に由来し、明治期に勲章着用規定においてモーニング・燕尾服と同格とされて以来、広く用いられている。紋付でなくとも、羽織袴を着用すれば、略礼服になるとされる。
- 羽織着用 - 着流しよりも礼にかなうとされる。
- 女子
和服における女子の礼装は、歴史上女性が公的な場面で活躍することがきわめて少なかったために、男子のそれと比べて未整理であり、起源的にも新しいものが多い。上の1,2は平安時代の、3,4は江戸時代の服飾を参考にして、いずれも明治以降に新しく整備されたものであり、いわば「作られた古典」の一種であるともいえる。なお、古典芸能などの分野においては、女性・女形は男子の礼装に習うことが多いことも付言しておく。
[編集] アオザイ
ベトナムの正装。