浅見光彦
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浅見光彦(あさみ みつひこ)は内田康夫の執筆する推理小説の劇中人物。主役として登場する素人探偵。
目次 |
[編集] 特徴
名家の次男坊で、ブルゾン姿でトヨタ・ソアラを乗り回すという、清潔かつスタイリッシュな特徴が『変わり者でアナーキーかつ不潔』(戦後すぐの金田一耕助に代表される探偵像)もしくは『背広姿でピシッとキマりすぎている』(少年探偵団時代の明智小五郎に代表される探偵像)といった従来の日本の探偵像と一線を画して人気を得る。
長身かつ甘いマスクの33歳で独身貴族といった設定が女性の人気をつかんでおり、彼の登場する『浅見シリーズ』はレディースコミックなどにおいて漫画化されているものも多数見受けられる。
内田康夫の第三作『後鳥羽伝説殺人事件』にてデビュー。モデルは当時内田を担当していた廣済堂出版(『後鳥羽伝説』を最初に刊行した出版社)の編集者。
内田康夫の執筆作の中でも『浅見光彦シリーズ』は群を抜いて数多く書かれており、名実共に内田康夫作品を代表する名探偵である。軽井沢(内田康夫の居住地)には浅見のファンクラブとクラブハウスが存在しており、その名も『浅見光彦倶楽部』と称する。ファンクラブ事務局の住所は長野県北佐久郡軽井沢町長倉504。
ちなみにシャーロック・ホームズシリーズにおけるシャーロキアンのように、浅見光彦の研究を行っているファンを『アサミスト』と称する事がある。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] プロフィール
- 浅見光彦の個人データを人物紹介の要領で以下に記す。
- 出演作品については内田康夫の項を参照のこと。
[編集] 基本データ
浅見光彦(あさみ みつひこ、2月10日生まれ、33歳)は、フリーのルポライター。近年は探偵としても有名。東京都北区西ヶ原の出身・在住(浅見家の所在地は北区西ヶ原3丁目)。
大学卒業後、商社・新聞社・薬品会社などを転々としてルポライターに。現在は主に旅雑誌『旅と歴史』を中心に、紀行文や旅案内のルポを専門として原稿を寄せている。
ルポの取材先などで殺人事件に巻き込まれる事が多く(一部の事情通は「自ら首を突っ込んで来る」と証言する)それに対して持ち前の好奇心で独自の調査を行うが、それが原因で警察に捕まる事があり取り調べを受けるが、光彦が警察庁刑事局の浅見陽一郎警視監の弟だと知ると態度が代わり、刑事も協力的になって、刑事と一緒に調査をすることもある。そして事件を解決に導く事が多くあるため『名探偵』と称される。だが、自らはその体験を記事などにする事はなく、その活躍は浅見より話を聞いた推理作家・内田康夫の著述物により明らかとなっている。
近年は探偵としての名声が上がっているため、内田氏などの知り合いを通じて直に探偵としての依頼を受けてしまう事も多い。しかし現場ではかたくなに自らを「ルポライター」と主張する。
父は大蔵省(現・財務省)官僚(局長)の浅見秀一(故人)。
兄は警察庁刑事局長の浅見陽一郎警視監。
[編集] 付随データ
- 基本データの「33歳」は作中年齢。全作品においてそのように取り扱っており、生年については『○○と同じ年に生まれた』などとぼやかして書かれている。
- 誕生日の「2月10日」は、彼のデビュー作『後鳥羽伝説殺人事件』の初版発行日。
- 身長175cm。血液型はB型。
- 浅見光彦が住んでいる西ヶ原の家は兄・陽一郎が受け継いだ家であり、光彦は兄一家ならびに母と同居。要は部屋住みの居候である。ちなみに北区西ヶ原は内田康夫のかつての居住地であり、1997年に内田は北区のアンバサダーになった。
- お手伝いさんから『坊っちゃま』と呼ばれていて、30代になってもそう言われる事に慣れはしてもコンプレックスがある。
- タバコは吸うが、アルコールには弱い。
- お化けと飛行機が大の苦手。トマトも嫌いらしい。
- 乗っている車はソアラである。
[編集] その他の登場人物
[編集] 浅見家の人々
家族構成は光彦から見た場合「母、兄、兄嫁、姪、甥、自分、妹」となる。
- 浅見雪江
- 陽一郎・光彦の兄弟にとって母・雪江は逆らえない存在。高級官僚で家庭持ちの兄と無職に近いルポライターで独身の弟を何かにつけて比較して光彦をせかす。浅見家ではこれを「賢兄愚弟の法則」と言い、絶対真理の如き常識となっている。
- 母・雪江は光彦の探偵ぶりを快く思っていない。賢兄の足を引っ張る行為であり、高級官僚を輩出しつづけてきた浅見家にとって恥であると考えているからである。が、他者が光彦の探偵としての才能を評価する事に対しては、謙遜してみせるがまんざらでもないらしい。何らかのやむをえない事情がある場合は、逆に光彦に事件を解決させようとする事もある。ただし、その際にも「陽一郎さんの迷惑にだけはならないように」と釘を刺すのを忘れない。浅見が現場でかたくなに自らを「ルポライター」だと主張するのは、この母の影響である。好物は、平塚亭の団子である。
- 浅見陽一郎
- 警察庁の刑事局長を務める光彦の兄。兄弟仲は案外と良好。光彦は出世頭の兄を素直に尊敬し、陽一郎もまた自分に無い才能を持ち自分にできない生き方をする弟を認めている。基本的に二人は互いの職域を越えないように気を配っているが、どうしても自らの手に余ると判断した場合は協力しあう事もある。妻は一歳年下の和子、子に「高校一年生」の智美、「学生」の雅人がいる。
- 吉田須美子
- 浅見家で雇われているお手伝い。愛称は「須美ちゃん」。
- 須美子は以前浅見家に仕えていた先代の『お手伝いのばあや』の同郷(新潟県長岡市のやまあいの村)者であり、その後継として浅見家にやってきた。須美子の『坊ちゃま』はそのばあやから受け継がれた筋金入りの呼称である。
- 浅見祐子
- 光彦の妹で長女。大学生の時、事故に巻き込まれて死亡。とりもなおさず、この事故にまつわる謎こそが『名探偵・浅見光彦』を生み出すきっかけとなった。浅見が初めて探偵となった背景には、悲しくも強い家族の絆があったのである。
- 浅見佐和子
- 光彦の妹で次女。留学のためにニューヨークに在住。
- その他の家族
- 光彦は甥に「おじさん、イソーローってなぁに?」と尋ねられてしまった事がある。
[編集] 交友関係
- 藤田克夫
- 雑誌「旅と歴史」の編集長。
[編集] 宿敵
前述のとおり浅見シリーズは数多く、中には宿敵とも言える存在も何度か出てくる。
- 保全投資協会
- 「漂白の楽人」で初登場した、ありえぬ投資を持ちかけて多くの資産家・企業だけでなく高齢者をも騙して金銭を巻き上げていた詐欺集団。モデルは豊田商事と思われる。浅見の大学時代の友人が巻き込まれて命を奪われた。浅見は彼の敵を討つため、この団体を追い詰め、崩壊させた。その後、日本中に隠されたとされるこの詐欺集団の「隠し財産」をめぐり、浅見は様々な事件に関わることになる。また、この団体の残党にとって浅見は仇敵であり、憎んでも飽き足らぬ相手である。後に発表された「浅見光彦殺人事件」にも、この協会の影がちらつく。
- 官僚・議員団体
- 主には兄・陽一郎の政敵や地方開発で利権をむさぼる政治家とそれを取りまとめている団体。浅見は時折、そうした連中の企みを潰して殺人事件の犯人を挙げている。
[編集] 演じた俳優
- 国広富之 - TBS ザ・サスペンス「後鳥羽伝説殺人事件」(1982/8/21)
- 篠田三郎 - テレビ朝日 土曜ワイド劇場「小樽殺人事件」(1986/10/11)
- 水谷豊 - 日本テレビ 火曜サスペンス劇場版浅見光彦ミステリー・全8作(1987/9/8~1990/7/3)
- 榎木孝明 - 角川映画「天河伝説殺人事件」/フジテレビ 金曜エンタテイメント版浅見光彦シリーズ・初代・全14作(1991/3/16~2002/4/12)
- 辰巳琢郎 - TBS 月曜ドラマスペシャル版浅見光彦シリーズ・初代・全13作(1994/4/25~2000/3/27)
- 沢村一樹 - TBS 月曜ドラマスペシャル⇒月曜ミステリー劇場⇒月曜ゴールデン版浅見光彦シリーズ・2代目・現在10作(2000/9/4~)
- 高嶋政伸 - 日本テレビ 火曜サスペンス劇場「貴賓室の怪人」(2002/2/5)
- 中村俊介 - フジテレビ 金曜エンタテイメント版浅見光彦シリーズ・2代目・現在12作(2003/2/28~)
[編集] 補足
- 火曜サスペンス劇場(1987年6月~1990年7月、日本テレビ、全8作)版浅見光彦ミステリーでは水谷豊が浅見役を演じたが、浅見の服装が原作とあまりにかけ離れている事に原作者の内田が抗議したが、局側がこれを無視した為に打ち切られた(主人公を「朝比奈周平」に変更しその後もシリーズは数本製作されている)。
- 1998年の月曜ドラマスペシャル「蜃気楼」では、沢村一樹が犯人役で出演している。
- 2002年に火曜サスペンス劇場の20周年記念作品の一つとして製作された「貴賓室の怪人」では高嶋政伸が同枠2代目の浅見役を演じたが、この作品では浅見の母・雪江を高嶋の実母・寿美花代が、浅見の兄・陽一郎を高嶋の実兄・高嶋政宏がそれぞれ演じていた。
- 作者・内田のお気に入りは映画版および「金曜エンタテイメント」版浅見光彦シリーズの初代浅見光彦を務めた榎木孝明であったと言われている。事実、内田は浅見シリーズ115冊目にあたる自作『黄金の石橋』にて榎木をモデルにした役者・絵樹卓夫を登場させている。
なお同作は「金曜エンタテイメント版浅見光彦シリーズ」の14作目にあたり「榎木版浅見シリーズ」の最終作。榎木は浅見と絵樹の2役を同時に演じ、話題を呼んだ。その後、榎木は内田のたっての希望により同シリーズで西岡徳馬に変わって浅見の兄・陽一郎役を演じている。 - テレビドラマ版では、提供スポンサーの都合上、パトカーなどの劇用車が提供スポンサーの車種に統一されていてもソアラだけはエンブレムが隠されることなく登場している(まれにソアラが登場せず他の車種に乗る場合でも愛車ではなくレンタカーという形を取っている)。ただし映画版の愛車はソアラではなくジャガーだった。
- 週刊文春の阿川佐和子との対談で浅見役に織田裕二を希望したことがある。
[編集] 関連項目
- 内田康夫
- 推理小説の名探偵一覧
- 名探偵コナン - キャラクター『円谷光彦』『円谷朝美(光彦の姉)』『内田麻美』の名前にモデルとして使われている。
- 浅見光彦シリーズ