病院船
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病院船(びょういんせん、hospital ship)は、戦争や飢餓、大災害の現場で、傷病者に医療ケアのプライマリケアを提供したり、病院の役割を果たすために使われる船舶である。世界中のさまざまな国々の海軍により運用されているのが通例である。hospital shipという呼称が広く一般的に使用されているが、ドイツ語圏では、過去にLazarettschiffeという表現もあった。 直訳すれば、「傷病兵船」。キリストが死者の中から蘇らせたという「ラザロ」の名から由来している。
最初の病院船のひとつとされるのは、1859年のアメリカ海軍のレッドローバー号で、この船は、1869年代アメリカの南北戦争で、南北両軍の傷病兵の医療ケアを行った。タイタニック号の姉妹船、ブリタニック号を始め第一次世界大戦、及び第二次世界大戦では、何隻かの大西洋を航行した客船が病院船に急遽改造されて活躍した。
しかし、故意過失を問わず攻撃される事態が度々発生し、過失による撃沈を防ぐ為に病院船は夜間も灯りを灯し病院船である事を主張した。純白の船体に赤十字のマーク、特に夜間は灯りを灯して航海しているため味方の心理的安堵感が増し、気が緩んだ隙に病院船周囲を周回している敵の潜水艦に撃沈される例があった。
現在、アメリカ海軍によってマーシー級病院船マーシー(USNS Mercy)とコンフォート(USNS Comfort)が運用されており、これらが世界でもっとも大型の救命救急の船舶として知られる。 今日の病院船は、ジュネーブ条約や戦時国際法により、赤十字や赤新月のマークを大きく掲げ、それによりいかなる軍事的攻撃からも保護されることになっている。
[編集] 代表的な病院船
[編集] 関連項目
- 慈善船
[編集] 参考文献
- 海人社『世界の艦船』1995年11月号 No.503 特集・日本の病院船
- 塩川洋志「今日の武力紛争における病院船の活動についての法的考察」 『波涛』第23巻第1号(1997年5月)
- 江畑謙介「今週の軍事情報 変わる病院船の概念」 『世界週報』第85巻第3号(2004年1月27日)