監察官
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監察官(かんさつかん)とは、官吏等の監督査察などを担当する職名である。
強制力を行使する権力的公務など、特に職務の性質上、内部の監察を要する官庁その他には監察官が置かれている。
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[編集] 中国
伝統的に中華王朝は官吏の監察を重視しており、清朝滅亡後も、中国独自の「五権」(通常のいわゆる「三権」に、官吏の採用システムたる「考試」と官吏の監察システムたる「監察」を加えたもの)を構想した孫文らからの流れを受けて、中華民国憲法(中華民國36年1月1日國民政府公布)でも、一章(第9章)を割いて監察院の定めを置いている。
満州国でも国務院とは独立して監察院を置いていた。中華人民共和国でも中央官庁として監察部を置いている。
[編集] 監察官が置かれている官庁
冠称のない「監察官」という名称の職が置かれているのは枚挙に暇がないが、例えば次のようなものがある。
- 各地域の公安調査局総務部(公安調査庁組織規則第21条)
- 財務省大臣官房秘書課(財務省組織規則第2条1項)
- 海上保安庁本庁(海上保安庁組織規則第56条)
- 北海道開発局開発監理部(北海道開発局組織規則)
- 国土交通省大臣官房(国土交通省組織令第22条)
- 海上自衛隊の各地方総監部(地方総監部組織規則第22条)
- 陸上自衛隊の各方面総監部、師団司令部、旅団司令部(方面総監部、師団司令部及び旅団司令部組織規則第25条)
また、冠称付きの「監察官」としては次のものがある。
- 郵政監察官
- 中央労災補償監察官(厚生労働省組織規則第36条)
- 監理監察官(航空総隊司令部、航空支援集団司令部、航空教育集団司令部、航空開発実験集団司令部、航空方面隊司令部、航空混成団司令部及び航空団司令部組織規則第18条)
[編集] 日本警察
[編集] 警察の監察官
警察における監察官は警察庁・警視庁・各道府県警察に設置される常設職であり、特に全国日本警察のトップたる監察官のことを「首席監察官」と呼ぶ。階級は警視長または警視監警察官がその任にあたる。
主席監察官以外の通常の監察官については警視がその任にあたる。各都道府県警察により多少の違いはあるが、身内を調査する監察官はその因果な役割からか、警視の中でも所属長にあたる副署長経験者が1年ほどの任期で、次の移動により所轄署長・本部の課長に昇任するまでの短期間のスルーのポストでもある。また逆に署長を務めた後監察官に就任し、翌年本部の課長になるケースもある。
警察における監察官は警察内部の不祥事の調査、服務規定違反など内部罰則を犯した警察官への質疑、内部犯罪の取り締まりや監視・さらには会計上の監査業務にも口をはさめる権限を与えられている。
いわば警察の中の警察であり、警視庁・道府県警本部の監察官室も警務警察セクションたる警務部に編成されている。
しかし、近年監察官に対し接待や馴れ合いなどで不正との批判等を受ける事案も発生しており、さらに警察庁の監察官は上位階級の警察官で占められているために、上には甘く下とは馴れ合う監察風習ができあがっており、それがカラ監察などの風潮を生み出す原因にもなったとされる。新潟県で発生した少女監禁事件の際に発覚した賭けマージャン事件なども警察庁の特別監察チームを新潟県警幹部が過度に接待をしたことが原因といわれる。
[編集] 警察庁監察官
警察庁の監察官は警察庁組織令第6条で首席監察官の設置が規定されている。監察官は、いずれも上位階級の国家公務員たるいわゆるキャリアの者が占めており、全国の監察の統括的立場にある。そのため、上部監察として各地の県警等に出張することもしばしばであり、警察庁監察官の権限は相当に強力なものといえる。ただし首席監察官であっても全ての警察官の監察を行うわけではなく、警察庁長官や警視総監などの最高幹部の監察は国家公安委員会が担当することとされている。なお、警視総監は東京を管轄する警視庁の長という位置付けであるが、身分が国家公務員になるので都知事や都公安委員会による処分・勧告などは一切行えず、東京都の自前の権限では裁くことが出来ない。また同様に各道府県警本部長も全て警視監・警視長の階級を有する国家公務員なので県知事・県公安委員会レベルの権限では処分が下せない点が消防吏員との最大の違いといえる。
[編集] 関連項目
- ケンソル - 古代ローマにおける監察官
- 満州国監察院
- 中華人民共和国監察部
- 死神監察官雷堂
- 秘命監察官ドン