直線
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直線(ちょくせん、line)とは、太さを持たない幾何学的な対象である曲線の一種で、どこまでもまっすぐ無限に伸びて端点を持たない。同様の対象に、有限の長さと両端を持つ線分(せんぶん、line segment)と、一つの端点を始点として無限にまっすぐ伸びた半直線(はんちょくせん、ray)がある。
光はその直進性により、何もない真空中では直線上を移動する。重力があれば光が曲がったように見えるが、それは重力により空間がゆがんでいることによるもので、光はその曲がった空間中内の直線の上を進むのだと考えたのはアインシュタインである。このような考え方は、非ユークリッド幾何学の成果によるものである。正確にはこれは、光は最短経路を通るということを言っているのであって、光が進むのは測地線である。
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[編集] 概要
ユークリッドの幾何学では、直線は本質的に無定義術語である。つまり、「直線とは何か」というのを直接定義せずに、ただある関係(公理・公準)を満たすものであるというふうにして理論を展開していくのである。ユークリッド幾何学においては以下のようなことである:
- 二つの異なる点を与えれば、それを通る直線は一つに決まる。
- 一つの直線とその上にない一つの点が与えられたとき、与えられた点を通り与えられた直線に平行な直線を、ただ一つ引くことができる。
また、このような公理から例えば以下のようなことが導かれる:二つの異なる直線は高々一つの点を共有する。二つの異なる平面は、高々一つの直線を共有する。
通常は、直線や線分は向きを持たず、半直線は向きを持つものとして扱われる。たとえば、2 点 A と B を結ぶ線分を AB と書くと、AB = BA である。一方で、向き付けられた直線、線分や向きを持たない半直線というものも考えることがある。たとえば線分の始点と終点を区別し、線分に "向き" (direction) を考えたものを有向線分と呼んで、有向線分としては AB ≠ BA と考える。
ユークリッド空間内の有向線分を、その位置のみの違いを除くことにより類別して、幾何学的ベクトル(いわゆる矢印ベクトル)の概念を考えることができる。逆にベクトルを用いてユークリッド空間やその中の線分・直線を定式化することもできるが、これについては後述する。
ユークリッド幾何のように、無定義述語と公理によって構築される幾何学では直線が "まっすぐ" であるなどのイメージは本質を持たない。事実、曲がった空間の幾何学である非ユークリッド幾何学での "直線"(測地線)はユークリッド幾何学の中で見ると曲がって見えるのである。
[編集] 座標
直線上の点に実数を対応させることで数直線(すうちょくせん、(real) number line)を考えることができる。具体的には、直線上に原点 O と単位点 E を指定し、任意の実数 x に対し、直線上にあり、一方の端点を原点とし、原点から単位点までを結ぶ有向線分との(向きまで込めた)線分比が x となるような線分の、原点ではない側の端点と x とを対応付けたもののことをいう。
しばしば、原点と単位点の距離の整数倍で数を目盛ったものを指す。数直線は向きを持った直線であり、原点から単位点の向きに矢印を記すことがある。また、数直線は、1 次元ユークリッド空間 R に対する座標系と捉えることもできる。
また、数直線を用いることで数の和や差が図として視覚的に与えることができるため、しばしば教育に用いられる。例えば、上の数直線では足し算(和)は右に進む、引き算(差)は左に進むことであり、
- 2 + 1 は目盛りの 2 から 1 目盛り右に進むから 3 である。
- 2 − 1 は目盛りの 2 から 1 目盛り左に進むから 1 である。
互いに直交する向き付けられた数直線によってデカルトは絶対的な静止座標系を定義した。これは直交座標系と呼ばれる。
原点を固定し、原点を始点とする半直線を用いて極座標系が定義できる。このときの半直線は始線と呼ばれる。
[編集] 1 次元アフィン空間
アフィン空間の概念を持ち出すと、次のようにしてベクトルによって直線を定義することができる: ユークリッド空間 En に対して、任意の一点 P と 0 でない一つのベクトル a が与えられたとき、
で表されるような集合 L を直線という(これは一般のベクトル空間にも拡張できる)。つまり、直線とは 1 次元のアフィン(部分)空間のことである。この定義においては直線は向きを持つものとみなされる。a は直線の方向を決めるベクトルであり、P は直線上の点になる。同じ直線を与える点とベクトルの組 P, a は一通りではない。また、この定義で λ の動く範囲を限定すると半直線
や線分を記述することができる。また同じことだが、原点を固定して点とその位置ベクトルとを同一視すると、ユークリッド空間の異なる 2 点 A(a), B(b) ∈ En が与えられた時に、
なる集合 L は、A, B を含む直線となる(向きを考慮するなら、方向ベクトルは b - a で、これは A から B へ向かって引かれる)。この定義で、λ を 0 と 1 の間に限定すると A から B までを結ぶ(有向)線分
が得られる。
解析幾何学的な記述法では、直線はある種の1次方程式(の零点集合)の形で与えられる。例えば、直交座標系を入れた 2 次元ユークリッド空間 E2 を考えている時には、適当な実数の定数 a, b, c を選んで
の形に表される集合 l が直線である。これは本質的にはベクトルによる記述と同等である。実際に一般次元において
は直線を描き、特にこれは p = (p1, p2, ..., pn) を通る、方向ベクトル d = (d1, d2, ..., dn) の直線であって
と記すことができる。また実数の代わりに任意の体 K を基礎におく空間においてもこのような線型方程式系のグラフとして記述される部分集合をしばしば K 上の直線と称する。
[編集] 1-単体
幾何学的な線分は、ある 2 点の間を結んだ "最短経路" であるとして、その 2 つの端点を与えることによって一意的に決定される。このことは、線分を 2 点からなる集合として形式的に取り扱う視点を与える。
点集合 V が与えられたとき、直積集合 V × V の元を有向線分 と見なし、さらに同値関係 ∼ を 任意の a, b ∈ V に対し (a, b) ∼ (b, a) と定めたときの集合 E = V × V / ∼ の元(同値類) [(a, b)] (a, b ∈ V, a ≠ b) のこと(これをしばしば {a, b} と記す)を a と b を結んだ線分と呼ぶ。
このような線分の捉え方は、グラフ理論における辺 (edge) であるとか、1次元単体の組合せ論的取り扱いであるとかに見て取ることができる。
[編集] 関連項目