空蝉 (源氏物語)
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空蝉(うつせみ)とは、
帖 | 名 | 帖 | 名 |
---|---|---|---|
1 | きりつほ | 28 | のわき |
2 | ははきき | 29 | みゆき |
3 | うつせみ | 30 | ふちはかま |
4 | ゆふかほ | 31 | まきはしら |
5 | わかむらさき | 32 | うめかえ |
6 | すゑつむはな | 33 | ふちのうらは |
7 | もみちのか | 34 | わかな(上下) |
8 | はなのえん | 35 | かしはき |
9 | あふひ | 36 | よこふえ |
10 | さかき | 37 | すすむし |
11 | はなちるさと | 38 | ゆふきり |
12 | すま | 39 | みのり |
13 | あかし | 40 | まほろし |
14 | みをつくし | 41 | くもかくれ |
15 | よもきふ | 42 | にほふみや |
16 | せきや | 43 | こうはい |
17 | ゑあはせ | 44 | たけかは |
18 | まつかせ | 45 | はしひめ |
19 | うすくも | 46 | しひかもと |
20 | あさかほ | 47 | あけまき |
21 | をとめ | 48 | さわらひ |
22 | たまかつら | 49 | やとりき |
23 | はつね | 50 | あすまや |
24 | こてふ | 51 | うきふね |
25 | ほたる | 52 | かけろふ |
26 | とこなつ | 53 | てならひ |
27 | かかりひ | 54 | ゆめのうきはし |
- 『源氏物語』五十四帖の巻の一つ。第3帖。
- 『源氏物語』に登場する女性の一人に対する通称。十代の頃に源氏と知り合い、影響を与えた女性たちの一人である。名前の由来は、求愛に対して一枚の着物を残し逃げ去ったことを、源氏がセミの抜け殻に託して送った和歌から。主だった登場は「帚木」「空蝉」と「関屋」の3巻のみ。
[編集] 境遇
中級貴族の娘として生まれ育ち、伊予の介(伊予国(現在の愛媛県)の国守の次官)を務める男の元に年の離れた後妻として嫁いだ。当時、女性の地位は父か夫の位に順ずるので、彼女は貴族としては中級の身分であり、上流中の上流の源氏とは身分がつりあわなかった。
作中に伊予介の娘(軒端荻)が登場するが、前妻の娘であった彼女と空蝉はほとんど同年輩と言う、かなりの年の差結婚である。
夫との間に子供は出来なかったようだが、年の離れた幼い弟(小君)を一人手元に置いて我が子のように養育していた。この子は後に源氏に仕えて、西国下りにも同行する腹心となり、夫との死別の後はその縁と言う触れ込みで源氏に引き取られた。
[編集] 生涯
空蝉は後ろ盾となる父を早くに亡くし、後妻を探していた伊予の介の元に妻として引き取られて、地味で堅実な生活を送っていた。
あるとき、彼女の噂を聞いて興味本位に方違と言う名目で訪問してきた源氏と情を通じてしまう。
魅力的な源氏の求愛に惹かれながらも、身分が釣り合わない立場であることを理解しており、二度目に寝所に忍び入られた時には一枚の着物だけを残して逃げ出し、その後、いくら掻き口説かれても靡こうとはしないまま、夫に従って京を離れた。
皮肉にも、驕慢な貴公子であった源氏にとって、空蝉の拒絶が彼女を忘れられない存在にした。源氏は彼女の弟を手元に引き取り、後には尼となった彼女の生活を助けることとなる。
[編集] 人物
非常に地味で容貌も控えめな女性であったが、小柄で立ち振る舞いが水際立っており趣味も良かった。求愛に対しても、悩み迷いながらも最後まで品良く矜持を守り通し、貴公子である源氏を感心させている。
彼女のモデルに関しては、境遇や身分が似ているため、作者である紫式部自身がモデルではないかと言われている。