線維筋痛症
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線維筋痛症(せんいきんつうしょう)は、全身に痛みが生じる病気である。原因は不明であり、通常の医者が行なう血液検査では異常が現れない。また、治療法も確立されていない。原発性線維筋痛症と続発性線維筋痛症に大別される。現在では両者はまったく異なる疾患ではないかと推定されている。原発性線維筋痛症は特発性線維筋痛症もしくは全身性線維筋痛症とも呼ばれている。線維筋痛症は線維筋痛症候群とも訳され、英語ではFibromyalgiaもしくは Fibromyalgia Syndromeと呼ばれている。略語はFMS(FibroMyalgia Syndrome)が使われることが多い。筋痛症は筋肉が痛い疾患すべてを指すわけではなく、病理組織学的に筋炎および血管炎、神経炎が存在しないことが条件になる。
続発性線維筋痛症は慢性関節リウマチや自己免疫性甲状腺疾患等に続発する線維筋痛症のことで、何らかの自己免疫・自己抗体の関与が推定されている。続発性型は将来的に生検で筋炎が明確になれば(皮膚炎を伴わない)皮膚筋炎との異同が問題になる。続発性とは自己免疫疾患等に続発する型をさし、交通事故・出産等を契機に発症したものは原発性線維筋痛症である。
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[編集] 歴史
欧米では100年以上も前から知られていた病である。診断方法ができたのは最近で、1990年にアメリカリウマチ学会が分類基準を作成している。アメリカでは人口の2%がこの病気であるという統計がある。日本では現在のところ厚生労働省が調査研究している段階である。日本では医者の間でもこの病気の知名度が低いことから、患者がこの(原発性)線維筋痛症という病名を教えてくれる医者に会うまでに平均6~8軒の病院を回ると言われる。
[編集] 症状
全身に激しい痛みが生じる。痛みの種類は普通の人が日常経験する痛みと異なり、「電気が走るような痛み」[要出典]や「ガラスの破片が流れるような痛み」(「闘病記・手記>40歳女性の場合」線維筋痛症友の会)などという表現で患者に形容される。症状には個人差があり、軽度なら仕事を続けられる場合もあるが、重度の場合は日常生活に支障をきたし自力で生活できない場合がある。付随する症状として、こわばりや疲労感、頭痛、微熱、などがある。ドライアイの報告もありこの場合は将来シェーグレン症候群合併皮膚筋炎への移行を警戒する必要がある。
この病が直接の原因となり死に至ることは無いと言われているが、その全身の痛みは凄まじいもので、痛みの苦痛等が間接的に患者を死に追いやることはありえる。2007年2月2日に43歳で亡くなった日本テレビの元アナウンサー、大杉君枝はこの病を苦に自殺したと報道されている。後述のとおり、この病は患者のストレスや精神状態が症状に与える影響が大きく、神経や精神状態の改善が症状を改善させるという臨床例が多く認められている。この病は原因が不明で、患者の痛みの理由が周囲にわかりにくいことから、しばしば怠け病や詐病と周囲に誤解されやすいところが、患者のストレスを更に増加させるものと考えられる。うつ病に対する場合と同様、周囲のこの病に対する理解が必要である。
同様の病(日本では病と認定されておらず、知名度が低く、原因不明の病)に慢性疲労症候群(CFS)がある(但しCFSは痛みではなく日常生活が困難となるほどの強度の疲労を伴う病である)。繊維筋痛症を発症した後に慢性疲労症候群と合併する例もある。
[編集] 診断
原発性線維筋痛症は病院で行なうような通常の採血検査では異常があらわれない。現在では、1990年にアメリカリウマチ学会が作成した分類基準を用いて診断するのが普通である。全身にある18箇所の圧痛点を4kgfの力で押したときに、11箇所以上痛いと(原発性)線維筋痛症と診断される。ただし、症状が他の病気によるものでないことが条件になるので、筋生検による筋炎(皮膚筋炎等)・血管炎・神経炎の除外は必須である。続発性線維筋痛症では先行する原疾患の検査による評価、筋生検、定期的な各種自己抗体の検索を要する。
[編集] 原因
原発性線維筋痛症は現在のところ、原因は不明である。ストレスや事故が原因で発症しているのではないかと言われる。細胞の器質的な問題があるというより、神経的な問題があるらしい。ただし細かいことはよくわかっていない。続発性線維筋痛症も単一抗体は確定していない。
本症を発症するのは壮年期の女性に多いとされるが、精神科医の香山リカは著書『いまどきの常識』(岩波新書)で現代社会での女性のストレスについて、「少子化社会で女性の労働力はますます重要なものとなり、女性の社会進出は今とは形を変えることはあってもストップすることはないだろう。そうなると、一方で『女は女らしく』と言いながら、他方で『女性もどんどん働いて』と勧める教育を施さなければならなくなる。それこそ、心理学の世界では『ダブル・バインド』と呼ばれるもっともストレス度の高い状態だ」と述べている。
[編集] 治療
原発性線維筋痛症は非ステロイド性消炎鎮痛剤が処方されることが多い。ただしこれまで安定した効果を持つ特効鎮痛剤は見つかっておらず、非ステロイド性消炎鎮痛剤にて治癒軽快した例はきわめて少ない。
原発性線維筋痛症は神経や精神状態の改善が症状を改善させるという臨床例が多く認められている。古くから抗不安薬(フェノチアジン系、ブチロフェノン系、ベンズアミド系、ベンゾジアゼピン系)や三環系抗うつ薬などが有効とされ、またSSRI・SNRIによる治療の報告も増えている。但し、これらの薬剤に熟知した専門医による処方が必須である。 また薬物による治療だけでなく、認知療法、腹式呼吸などの呼吸法や瞑想、ヨガやストレッチ・エアロビクスなどの軽い運動、健康的な睡眠の確保といった、ストレスを緩和させる手法も有効ではないかと考えられている。
続発性線維筋痛症は先行する原疾患のコントロール及び、他種の自己免疫性疾患の治療と同様の治療方法が望まれる。
現在、日本のバイオベンチャーであるそーせいにより線維筋痛症候群の経口治療薬が開発中である。 (現在有効性、安全性および忍容性を評価する第II相臨床試験を英国およびオーストラリアで実施中) 2006年後半に有効性の結果が出る予定。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 線維筋痛症友の会
- 線維筋痛症(篠ノ井総合病院浦野医師)
- Co-Cure-Japan
- 治療に成功した患者の例
- NIAMS/NIH
- The National Fibromyalgia Association U.S
- FM-CFS Canada: patient groups, Q & A sessions, news, everything free
- Clinical Case Definition and Guidelines for Medical Practitioners(2006)
- ARC booklet
- ncf.ca
- fibromyalgia.md
- Fibromyalgia Fact page
- ArthritisMD
- Fibromyalgia caused by hypothyroidism?(discussion article)
- Long Term Disability Claims - FAQ's
- Fibromyalgia information and international support group
- Fibromyalgia Support
- | Fibromyalgia and Long Distance Bike Touring
- LIVING WITH FIBROMYALGIA - A Documentary Film
- UK Fibromyalgia Association
- Patient-expert Devin Starlanyl's site
- But You Don't Look Sick support boards
- Fibrohugs
- Fibromyalgia for Pharmacists, a medication guide
- The Whitcomb Method of correcting Fibromyalgia
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