交通事故
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交通事故(こうつうじこ)とは交通機関における事故のことをさす。広義では鉄道、船舶、航空機などにおける事故を含むが、一般的には道路における自動車、自転車、歩行者などの間に発生した道路交通事故を指すことが多い。
以下では特に断り書きがない限り、日本での事例について述べる。
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[編集] 交通事故の定義
交通事故の定義を定める根拠法令等には、
- 道路交通法:道路における車両等(自動車、原動機付自転車、軽車両、路面電車、トロリーバスの全て)の交通に起因する人の死傷又は物の損壊(道路交通法第72条)
- 自動車安全運転センター法:道路交通法第72条に定めるものに道路外で発生したものを含む
- 自動車損害賠償保障法:自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。(自賠責法第3条)
- 厚生労働省疾病、傷害及び死因分類:基本分類コードV01-V99
などがある。一般的に「交通事故」といえば道路交通法上の交通事故を指す。
なお、以下の場合は、道路交通法上の交通事故とはされない。(また、一部は任意の自動車保険の保険金の支払い対象にならない事もあるが、詳細条件は異にする。)
- 道路外での事故
- この場合の「道路」は、一般交通の用に供する全ての場所である。ただ、運転免許の要件として「道路外致死傷」が新設され、道路交通法上でも一定の影響を及ぼすようになった。
- 歩行者の単独事故、または歩行者同士の衝突事故
- 車両等の交通(道路上での運転および駐車・停車)に起因しない事故。例えば、自動車が自然に爆発炎上したような場合、乗車中の人が車のドアやその窓に身体を挟まれたような場合や、駐車場に放置駐車している車両が崖崩れなどの災害により被害に遭った場合。なお、ドアの開閉により道路を通行中の他の歩行者と接触したような場合には、交通事故となる。また、車両等の運転中に崖崩れなどの外的要因により事故となった場合も交通事故となる。
[編集] 当事者の責任
交通事故を起こした場合、当事者は次の責任を負う。
交通事故の定義とは関係なく、車両等の運転者が過失により人を死傷させた場合は、行為の様態に応じて「危険運転致死傷罪」、「業務上過失致死傷罪」または「重過失致死傷罪」等に問われ、物を損壊した場合は、「過失建造物損壊」(その他の道路交通法違反)に問われる可能性がある。なお、故意に人の死傷や物の損壊を起こした場合には殺人(未遂)罪を始めとする凶悪犯・粗暴犯とされる。
また、交通事故を含む事故において故意または過失により他人の権利(生命、身体または財産)を侵害した場合、それによって発生した損害を賠償する責任を負う(民法の不法行為原則)。自動車または原動機付自転車の運行により人の生命または身体を侵害した場合には、加害者側で被害者の過失を立証しなければこれによって生じた損害(他人の生命、身体に対するものに限る)についてその責めを負い、重大な賠償責任を負担する事が殆どである。
さらに、行政処分として事故や責任の重さに応じて運転免許の取り消し、停止などがある。
[編集] 交通事故の身体への影響
無傷(外傷・骨折等がないだけでなく、むち打ち症などの後遺障害さえない)から、脳や内臓などが路面に散らばるなどの凄惨な状態での死まであり、「どんな殺人事件の死体でも、交通事故よりはまし」という言葉さえある。衝突状況やそのときの被害者の持ち物・状態・心身の状態、天候などによって、類似した状況下の事故でも大きく異なる。歩行者・自転車に乗った人などと、ごく低速の自動車・オートバイなどがぶつかった時、歩行者が大きなかばんを持っていてそのかばんにぶつかった場合などは、人的被害が皆無かまたそれに近い場合もある。
労働災害や自然災害といった他の要因による事故と比較して、被害者が頭部や腰部に激しい衝撃を受ける蓋然性が高いことから、被害者に遷延性意識障害を始めとする重度後遺障害が残る例が少なからず見られる。また、脳に衝撃を受けた場合には、頭部に外傷がなくとも高次脳機能障害になる場合がある。
[編集] 統計
[編集] 交通事故発生件数
近年増加傾向にあり、2004年は95万2068件発生している((財)交通事故総合分析センター提供資料より)。
世界的にも、自動車保有台数に比例して増加し続けている。21世紀に入ってからの先進国では、生まれたときにはすでに自動車が身近な存在になっていた世代が老齢に達するが、この高齢者の運転による事故も増加している。
[編集] 交通事故死傷者数
近年増加傾向にあり、2004年は119万0328人が死亡・負傷した((財)交通事故総合分析センター提供資料より)。
[編集] 交通事故死亡者
事故死亡者は、事故による被害者が、事故発生から24時間以内に死亡が確認された場合に対象となる。
交通事故死亡者数は、戦後の高度経済成長期に自動車保有率の上昇と呼応して増加し、年間1万人以上が死亡する事態となった。1960年頃から戦争でもないのに膨大な人数が犠牲となることを比喩して「交通戦争」と呼ばれる事態となった。特に1970年には交通事故で年間で1万6765人が死亡、史上最悪の年となった。当時の犠牲者の多くは歩行者であり、特に子供、それも幼児が半数以上を占めていた。この後、警察や行政などが交通安全対策に取り組んだこと、また、2度の石油ショックなどで経済の伸びが鈍化したことなどによる影響で、事故数、被害とも一端は減少に転じた。
その後、交通事故の犠牲者は1980年代に再び増加し、バブル経済真っ只中の1988年に1万人を超えたが、1993年以降減少に転じている。1970年代の減少と合わせ、経済の盛衰が交通事故犠牲者の増減と相関関係を示している。
車輌側の走行能力があがるにつれて1970年代後半からの交通事故犠牲者は運転中の乗員が主なものとなっていったが、車両側の安全装置(プリテンショナー(衝突時締付け)機能つきシートベルト・エアバッグ・衝撃吸収ボディ)の向上と、救急医療の発達によって救命率が上昇したことなどにより、自動車乗員の犠牲の減少に寄与している。
なお、被害者が24時間後以降に死亡した場合には対象とならないが、医療技術が発達した現在においては24時間以上生存している負傷者が増加したことも統計に影響を与えている。例えば、2003年における事故後1年以内の死亡者は1万人を超える。
[編集] 交通事故が多い産業
傾向として、運輸業や卸売業など、業務に車を使用する産業で事故が起きやすい。
- 営業販売中の場合、卸売業の事業所の33.1%、道路旅客運送業の事業所の34.7%で交通事故が発生している(全体では、13.5%)
- 配送作業中の場合、道路貨物運送業の事業所の53.3%、卸売業の事業所の20.6%で交通事故が発生している(全体では、13.8%)
出典:「労働安全衛生基本調査(2000年)」(厚生労働省)
[編集] 交通事故が多い都道府県
2004年度交通事故統計情報より
- 東京都 82,079件
- 大阪府 65,996件
- 神奈川県 61,957件
- 愛知県 61,013件
- 埼玉県 51,985件
- 福岡県 50,692件
- 兵庫県 41,953件
- 静岡県 41,177件
- 千葉県 37,616件
- 北海道 27,722件
など
[編集] 関連項目
- 交通安全対策基本法
- 交通安全
- 交通遺児
- 道路交通法
- 逆走事故
- 交通捜査
- 交通事故鑑定人
- 交通事故簡易見分システム
- ユーロNCAP
- アルコール検査
- 自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)
- 自動車保険
- 自動車事故対策機構
- 全国交通安全母の会連合会
- 交通刑務所
- ながら運転
- あおり運転
[編集] 外部リンク
- 国土交通省自動車交通局(政府による交通事故被害者救済対策の概要)
- 財団法人日弁連交通事故相談センター(自賠責保険に関する損害賠償の無料相談)
- 交通事故被害者家族相談室
- NPO法人交通事故後遺障害者家族の会
- 全国遷延性意識障害者・家族の会
- 全国交通事故遺族の会
- NPO法人KENTO
- 交通事故の示談交渉で負けないための知識
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