虚空蔵菩薩
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虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ、こくぞうぼさつ)は、仏教における信仰対象である菩薩の一つ。サンスクリットではAkasagarbhaという。
「虚空蔵」は文字通り「虚空を蔵する」の意で、虚空蔵菩薩とは広大な宇宙のような無限の智恵と慈悲を持った菩薩、という意味である。胎蔵曼荼羅の虚空蔵院の主尊であり、密教でも重視される。
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像容は右手に宝剣、左手に如意宝珠を持つものと、右手は掌を見せて下げる与願印(よがんいん)とし、左手に如意宝珠を持つものとがある。後者の像容は、記憶力増進を祈念する修法「求聞持法」(ぐもんじほう)の本尊で、東京国立博物館蔵の国宝の画像はこれに当たる。
彫像の代表例としては、奈良県大和郡山市・額安寺像、京都市・広隆寺講堂像などが挙げられる。 奈良県斑鳩町・法輪寺の木造虚空蔵菩薩立像は7世紀にさかのぼる古像だが、当初から虚空蔵菩薩と呼ばれていたかどうかは定かでない。また、法隆寺の百済観音像は明治時代前半までは寺内で「虚空蔵菩薩像」と呼ばれていたことがわかっている。
[編集] 五大虚空蔵菩薩
五大虚空蔵菩薩は、虚空蔵菩薩のみ5体を群像として表わしたものである。虚空蔵菩薩の五つの智恵を5体の菩薩像で表わしたものとも言い、五智如来の変化身(へんげしん)とも言う。五大虚空蔵菩薩像は、息災・増益などの祈願の本尊にもなっている。五大虚空蔵菩薩の名称、方位、身色は次のとおりである。
- 法界虚空蔵(中央、白色)
- 金剛虚空蔵(東方、黄色)
- 宝光虚空蔵(南方、青色)
- 蓮華虚空蔵(西方、赤色)
- 業用(ごうよう)虚空蔵(北方、黒紫色)
五大虚空蔵菩薩の彫像の作例としては、京都・神護寺多宝塔安置の像(平安初期・国宝)が著名である。京都・東寺観智院安置の五大虚空蔵菩薩像(重文)は、空海の孫弟子にあたる恵運が唐から将来した像である。法界、金剛、宝光、蓮華、業用の各像はそれぞれ馬、獅子、象、金翅鳥(こんじちょう)、孔雀の上の蓮華座に乗っている。この観智院像は、もとは山科(京都市山科区)の安祥寺にあったものである。
[編集] 真言
- のうぼう あきゃしゃ ぎゃらばや おん あり きゃまりぼり そわか
- おんばざら あらたんのう おんたらく そわか