行政機関
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行政機関(ぎょうせいきかん)は、行政の事務を担当する機関のこと。主に国の行政事務を担当する機関を指すが、地方公共団体の自治行政の事務を担当する機関を含めることもある。立法機関、司法機関と対比される。国と地方公共団体の行政機関を総称して行政庁(下記の講学上の概念とは異なる)ともいう。
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[編集] 概説
行政は、国・地方公共団体などの法人が「行政主体」となり、その名(名義)と責任において実施する。この行政主体は法人であるため、実際にその手足となって行為する機関を設け、自然人をその機関の職にあてて職務を行わせなければならない。行政主体のために、その手足となって職務を行う機関を「行政機関」という。
行政機関には、法律により、一定の権限と責任が割り当てられる。行政機関が、その割り当てられた範囲内で行った行為の効果は、法律上もっぱら行政主体に帰属する。行政機関そのものには帰属しない。このように、行政機関の行為の効果が行政機関に帰属しないことを、法律学の言葉遣いで「行政機関には人格がない」と表現する。人格(法人格)は行政主体(国など)にある。これをたとえると、A君がB君を殴ったら、責められるのはA君自身であって、A君の右手のこぶしではないということである。
「行政機関」概念には、講学上の行政機関概念と、国家行政組織法上の行政機関概念がある。
[編集] 講学上の行政機関概念
講学上の行政機関とは、行政の事務を担当する機関のことである。この行政機関は、その機能から次の6種に分類され、それぞれが行政機関とされる。
- 行政庁 - 行政主体の法律上の意思を決定し、外部に表示する権限を持つ機関。特に国の行政庁を行政官庁という。行政庁や行政官庁という語は、一般的な用法では組織や建物を指すが、法律学上は法律により権限を与えられた自然人(独任制)または自然人の合議体(合議制)を指す。
- 諮問機関 - 行政庁から諮問を受けて、意見を具申する機関。各種の審議会など。
- 参与(議決)機関 - 行政庁の意思を拘束する議決を行う行政機関。電波監理審議会(電波法94条に基づく総務大臣の決定を拘束する)、検察官適格審査会(検察庁法23条に基づく法務大臣の決定を拘束する)など。
- 監査機関 - 行政機関の事務や会計の処理を検査し、その適否を監査する機関。総務省行政評価局、会計検査院、監査委員など。
- 執行機関 - 行政目的を実現するために必要とされる実力行使を行う機関。警察官、自衛官、海上保安官、徴税職員、消防職員など。(注:地方自治法では、議会を「議決機関」とし、その対比として知事部局を「執行機関」と定める。講学上の言葉遣いとは異なるので注意を要する。)
- 補助機関 - 行政庁その他の行政機関の職務を補助するために、日常的な事務を遂行する機関。事務次官、局長、課長から一般職員の多く。
[編集] 国家行政組織法上の行政機関概念
国家行政組織法上の「行政機関」は、府・省・庁・委員会など、事務配分の単位としての官署そのものを指す。例えば、総務省なら総務省で一つの行政機関であり、法務省なら法務省で一つの行政機関である。国家行政組織法上、「内閣の統轄の下における行政機関で内閣府以外のもの」を「国の行政機関」とし、国家行政組織法により組織の基準が定められる。国家行政組織法の適用を受けない内閣府や人事院、会計検査院もそれぞれ一つの行政機関である。
講学上の行政官庁は、「行政機関の長」とする。省の長は大臣であり、委員会の長は委員長、庁の長は長官である。省は「内閣の統轄の下に行政事務をつかさどる機関」として置かれる。委員会と庁は、省にその外局として置かれる。