赤毛のアン
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『赤毛のアン』(原題:Anne of Green Gables、グリーンゲーブルズのアン、グリーンゲイブルズのアン)は、カナダの作家ルーシー・M・モンゴメリーが1908年に発表した長編小説。モンゴメリーは新聞記事で読んだ男の子と間違えて女の子を引き取った夫婦の話に着想を得てこの作品を書いた。彼女はプリンス・エドワード島の田舎で育った自身の少女時代も作品に投影した。グリーンゲーブルズはアンが住むことになるカスバート家の屋号。
孤児院暮らしだったアン・シャーリーが、11歳でアヴォンリーのカスバート家に引き取られてからクィーン学院を卒業するまでの少女時代 5年間を描いた『赤毛のアン』は人気作となり、モンゴメリーはアンを主人公とする続編や周辺人物にまつわる作品を多数著している。
第1作『赤毛のアン』ほか、シリーズ全作には、シェイクスピアやイギリス、アメリカの詩、『聖書』の句が多数引用され、原典を知っている人なら、感嘆させられる。『赤毛のアン』を読んだマーク・トウェインはモンゴメリに、1908年10月3日付けで「the dearest and most moving and most delightful child since the immortal Alice」(「『不思議の国のアリス』以来の魅力的な少女」)と絶賛の手紙を送った。これはその後のアンの宣伝コピーとして使われることになった。
目次 |
[編集] アン・シリーズ一覧
- 赤毛のアン(Anne of Green Gables)1908年:11~16歳
- アンの青春(Anne of Avonlea)1909年:16~18歳
- アンの愛情(Anne of the Island)1915年:18~22歳
- アンの幸福(Anne of Windy Willows, Anne of Windy Poplars(米国))1936年:22~25歳
- アンの夢の家(Anne's House of Dreams)1917年:25~27歳
- 炉辺荘のアン(Anne of Ingleside) 1939年:34~40歳
- 虹の谷のアン(Rainbow Valley)1919年:41歳
- アンの娘リラ(Rilla of Ingleside)1921年:49~53歳
- アンの友達(Chronicles of Avonlea)1912年
- アンをめぐる人々(Further Chronicles of Avonlea)1920年
一般に『赤毛のアン』から『炉辺荘のアン』までがアン・ブックスとされている。『虹の谷のアン』及び『アンの娘リラ』はアンの子供たちが主人公となっており、アンは母親としての部分的な登場しかなく、主人公ではない。また、『アンの友達』及び『アンをめぐる人々』は、同じくアヴォンリーを舞台にしているが、他の作品との関連はほとんど無いか、全く無い短編集である。 なお、日本で最も一般的な村岡花子訳では、1,2,3,9,4,5,6,10,7,8の順番で並べられており、アン・シリーズの一環とされているが、作者によるあとがきでその旨は明記されている。時系列的には、1→8の順番である。
[編集] 邦訳一覧
- (1954年) 村岡花子訳 - 日本にアンを普及させた名訳として知られているが、完訳ではなく所々に省略箇所がある。三笠書房、新潮文庫。※外部リンクを参照。
- (1957年) 中村佐喜子 訳 - 角川文庫。
- (1969年) 岸田衿子 訳 - 学習研究社
- (1973年) 神山妙子 訳 - アニメ作品の底本となった訳。これも名訳。旺文社文庫、新学社文庫。旺文社文庫版は絶版入手困難。新学社文庫版は中学生用図書教材であり、一般書店では流通しておらず、最寄りの新学社教材取扱店が注文を受けてくれれば個人でも現在入手可。
- (1975年) 猪熊葉子 訳 - 講談社文庫(旧版)。
- (1987年) 茅野美ど里 訳 - 偕成社。
- (1989年) 石川澄子 訳 - 東京図書。
- (1989年) きったかゆみえ 訳 - 全訳に近い抄訳。金の星社。
- (1990年) 谷詰則子 訳 - 篠崎書林。
- (1992年) 曾野綾子 訳 - 抄訳。河出書房新社・河出文庫、新学社世界文学の玉手箱シリーズ。
- (1993年) 松本侑子 訳 - 訳者の研究による注釈が豊富な訳本。文学引用を解説している。集英社。
- 『赤毛のアン』ISBN 4-08-747201-9
- 『アンの青春』ISBN 4-08-747867-X
- (1999年) 掛川恭子 訳 - 完訳シリーズ。ただしトビラでのブラウニングの詩の引用がない。講談社(2005年4月から文庫化)。
- (1999年) 山本史郎 訳 - 『The Annotated Anne of Green Gables』(注釈つき『赤毛のアン』)の翻訳。訳が独特。原書房。
[編集] 派生作品
[編集] 映画作品
ミーガン・フォローズの主演による『赤毛のアン』は、初めてプリンス・エドワード島でロケを行ったことで話題となった。更に、『アンの青春』とその続編の計3作が映画化されている。第3作目は小説版での第3作『アンの愛情』とはかけ離れたオリジナル・ストーリーである。 製作、監督、脚本はケビン・サリバン。
- (1985年)赤毛のアン
- (1988年)赤毛のアン アンの青春
- (2000年)赤毛のアン アンの結婚
[編集] 舞台作品
1964年カナダで、ノーマン・キャンベル(Norman Campbell )等によって制作、初演。1969年イギリス、1970年日本、1971年アメリカで、それぞれ上演された。代表的なミュージカルナンバーは、アイスクリーム。日本では劇団四季が断続的に上演、他にもエステー化学主催で毎年8月に全国で上演しており、アン役はこれまでにタレントの山川恵里佳、歌手の華原朋美、島谷ひとみが務めている。
[編集] アニメ作品
世界名作劇場でのアニメ化作品については『赤毛のアン』を参照。
[編集] 関連項目
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[編集] 外部リンク
- プロジェクト・グーテンベルク
- 赤毛のアン電子図書館
- 赤毛のアン記念館・村岡花子文庫
- 東京都大田区にある『赤毛のアン』を翻訳した村岡花子の記念館。
[編集] 関連書
- 『誰も知らない「赤毛のアン」 背景を探る』松本侑子 集英社 ISBN 4-08-774468-X
- 『赤毛のアンに隠されたシェイクスピア』松本侑子 集英社 ISBN 4-08-774511-2
- 『赤毛のアンの翻訳物語』松本侑子、鈴木康之 集英社 ISBN 4-08-774345-4
- 『赤毛のアンの秘密』小倉千加子 岩波書店 ISBN 4000220217