電気通信設備工事担任者
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電気通信設備工事担任者(でんきつうしんせつびこうじたんにんしゃ)は、公衆回線やCATVの通信回線に接続する端末設備の接続及び配線工事を行ったり、実地に監督するための国家資格である。略して「担任者」(たんにんしゃ)や「工担」(こうたん)と呼ばれることがある。 ほかの資格で担任者というものはあまりないので、担任者といえば、大抵の場合工事担任者である。
法的根拠である電気通信事業法では「工事担任者資格者証の交付を受けている者(以下「工事担任者」という。)」とされているが、何の工事担任者なのかわからないため、「電気通信の工事担任者」や「電気通信設備工事担任者」と付記して呼ばれることも多い。
また、時折「工事担当者」と誤って記載等されることがあるので、注意が必要である。
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[編集] 種別
これまで、アナログ・デジタル総合種、アナログ第1種、アナログ第2種、アナログ第3種、デジタル第1種、デジタル第2種、デジタル第3種の7つの資格区分があったが、2005年8月1日の工事担任者規則改正により、次の7つの資格区分に変更された。なお、旧来の資格者証は新制度になっても有効でそれぞれ従来通りの範囲の工事を行うことができる。
- AI・DD総合種 : アナログ伝送路設備又はデジタル伝送路設備に端末を接続する全ての工事。
- 基本的には、DD第1種とAI第1種を合わせた物で双方の資格を持っている者は申請にて取得可能。
- DD第1種 : デジタル伝送路設備(ただしISDNを除く)に端末を接続する全ての工事。
- DD第2種 : 接続点におけるデジタル信号の入出力速度が100Mbps以下の端末の接続工事。ただしISDNへの接続工事はできない。
- DD第3種 : 接続点におけるデジタル信号の入出力速度が100Mbps以下の端末で、かつ主としてインターネット接続のための回線に接続する工事。ただしISDNへの接続工事はできない。
- AI第1種 : アナログ伝送路設備およびISDNに端末を接続する全ての工事。
- AI第2種 : アナログ伝送路設備に端末を接続する工事は外線50回線以下であって内線200回線以下のもの。ISDNに端末を接続する工事はISDN回線の数が64kbps換算で50以下のもの。
- AI第3種 : アナログ回線1回線およびISDN基本インタフェース1回線の工事。
ここで、アナログはダイヤル(パルス)回線・プッシュ(トーン)回線を含めた普通のアナログ回線のことである。デジタルは、INS64などのISDN回線及びCATV回線、光ファイバーを用いた回線である。CATVは一見アナログと同じに見えるが、ケーブルモデムはパケット通信方式であるのでDD種の資格が必要である。また、ADSLはアナログであるという認識をしている人も多いが、デジタル伝送路として扱われる。
[編集] 工事担任者を要しない工事
[編集] 試験
電気通信国家試験センター(財団法人日本データ通信協会)が、総務大臣(旧郵政大臣)の指定を受けて年2回実施している。工業高校などで通信、電子関係の学科を卒業していると事や実務経歴があれば免除科目がある。昭和60年以前は、電電公社の設備に自営設備の接続をするのは開放されていなかった関係で通信工事を行う業者向けに、パケット交換種、回線交換種、1種~4種など公社独自の試験が行われていた。これらの資格を持っていた者は、パケット交換種がデジタル1種に、交換種がデジタル2種、1種から3種がアナログ1種に、4種がアナログ2種へ工事担任者への資格の書き換えが行われていた。
基本的には3種、2種、1種の順で試験の出題範囲が大きくなる。また通信技術の進歩に伴い、ADSLなど新しい通信関係の分野が年々追加れている。
試験は科目合格方式を採っているため、基礎、技術及び理論、法規で基準以上の点(現在100点満点で60点)を取る必要がある。また、一部のみ科目合格した場合は科目合格した科目が合格の日から2年以内に行われる試験なら免除される。また、基礎科目などにおいて種が違っても免除される場合がある。例えば、DD第2種で基礎が科目合格しAI第1種で技術と法規が科目合格した場合、AI第1種は次回の試験に於いてDD第2種の基礎の合格とAI第1種の技術、法規の科目合格が有るため全科目免除となる。この場合、申請を行う事でAI第1種の合格となる。 この様に科目合格を積み重ね受験する人もいる。近年はIT時代もあり、SEやネットワーク管理者や電気工事士や女性の受験者も増えてきている。
[編集] 試験科目
- AI第1種
- 電気通信技術の基礎(基礎科目)
- 端末設備の接続のための技術及び理論(技術科目)
- 端末設備の接続に関する法規(法規科目)
- AI第2種
- 電気通信技術の基礎(基礎科目)
- 端末設備の接続のための技術及び理論(技術科目)
- 端末設備の接続に関する法規(法規科目)
- AI第3種
- 電気通信技術の基礎(基礎科目)
- 端末設備の接続のための技術及び理論(技術科目)
- 端末設備の接続に関する法規(法規科目)
- DD第1種
- 電気通信技術の基礎(基礎科目)
- 端末設備の接続のための技術及び理論(技術科目)
- 端末設備の接続に関する法規(法規科目)
- DD第2種
- 電気通信技術の基礎(基礎科目)
- 端末設備の接続のための技術及び理論(技術科目)
- 端末設備の接続に関する法規(法規科目)
- DD第3種
- 電気通信技術の基礎(基礎科目)
- 端末設備の接続のための技術及び理論(技術科目)
- 端末設備の接続に関する法規(法規科目)
- AI・DD総合種
- 電気通信技術の基礎(基礎科目)
- 端末設備の接続のための技術及び理論(技術科目)
- 端末設備の接続に関する法規(法規科目)
[編集] 資格を要する行為
現在の工事担任者資格制度が誕生する以前は電話回線に、何かをつなぐといえば、モデムをつなぐためと購入した電話機を接続することが「自営業者」の主な目的であった。「自営」とは電電公社のものでない設備のことである。留守番電話機やボタン電話機をつなぐことに資格が必要であった。現在では、モジュラージャックで接続されているが、かつてはローゼットまたは、直接、通信線でつながっていたので、その付け外しには送出レベル等の調整が必要であった為、これを勝手にやると通信線の品質を損なう為、違反であった。また、現在に於いてもモデムの出力レベルの調整も担任者の資格が必要である。
通信の開放と共に、屋内配線も有資格者であれば工事を行える様になった。 一般的に多く利用されている資格はアナログ2種と3種で屋外からの引き込み口から宅内のモジュラージャックコンセントまでの工事を行う事が出来る。電気工事と並行して行う事が多いため。アナログ3種を持っている電気工事店が多い。大型の事務所などでは内線電話の数が多いのでアナログ2種が必要になる場合もある。
デジタル種は主に通信業者で使用されている。その殆どが事務所の工事や通信機器の設置である。一般家庭向けには、FTTHなどの光ファイバー工事やCATVなどのモデムの設置もDD種の資格が必要である。