霊感商法
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霊感商法(れいかんしょうほう)とは悪質商法の一種。霊感があるかのようにふるまって、先祖の因縁や霊のたたりなどの話などを用いて、法外な値段で商品を売ったり、多額の祈祷料などを取る商法である。
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[編集] 概要
霊感商法(れいかんしょうほう)では人の不幸を聞き出して、あたかも霊感があるような振りをした売り手が、その不幸を先祖のたたりなどの因縁話で説明し、「この商品を買えば祖先のたたりは消滅する。」とか、「このままだともっと悪いことが起きる」などと相手の弱みにつけこんで、不安を煽り、法外な値段で商品を売りつける。
扱われる商品としては印鑑、念珠、表札、水晶、高麗人参、壺、多宝塔など様々である。
このような商法をそれまでは「開運商法」などと呼んでいたが、統一教会の問題をきっかけに「霊感商法」という言葉で呼ぶようになった(命名者は『しんぶん赤旗』)。 「霊視商法」とは同じような手法で、商品の販売ではなく、祈祷料、除霊料、供養料などの名目で高額のお金を払わせる商法を言う。
[編集] 統一教会(統一協会)の「霊感商法」
[編集] 「霊感商法」誕生の経緯
「統一教会」(統一協会)の元信者の証言によると、「統一教会」(統一協会)系企業である韓国の「一信石材」から大理石の壷が輸入されていたが、美術品としては売り上げは伸びなかったので、これからは教義を使って売っていこうと決まった。 それまでの体質改善をアピールするトークから、「壺は霊界を解放するため」とか、”救いのためには血統を転換するしなければならない”という”を教義を使って高麗人参は血を清めるため」というように体系化して行き、基本トークが出来上がった。 1977年から1978年頃には霊能者役のトーカーが全国から400人ほど集められて体験交流会が行われた。 トークが体系化すると、それまで5、6時間かかっていた販売時間が2,3時間に短縮され、3日間ぐらいの展示会で、1億円から2億円の売り上げがあった。悪いところでも5千万円の売り上げはあった。 この展示会を毎日のように北海道から九州まで行い、1983年から1984年には、100億円送金する月まであったと言う[1]。
[編集] 社会問題となる
昔から、人の不幸を先祖や水子の霊のたたりとして、供養を勧めることはよくあったが、”霊感商法”という名前で、大きな社会問題になったのは1980年代のことである。
その頃から「統一教会」(統一協会)が組織的に全国で、上記の手法で壷や多宝塔を販売していた。
1978年頃から、先祖の霊が苦しんでいるとか、先祖の因縁を説かれ、高価な印鑑、壺、多宝塔等を購入した多くの者が、国民生活センターや各地の消費生活センターに苦情を寄せるようになった。
1986年には『朝日ジャーナル』が「霊感商法」批判を連載した。
[編集] 典型的な手口の例
[編集] 概要
マインドコントロールのテクニックを駆使し、調べようのない「たたり」や「霊」を持ち出して、たとえ迷信とはわかっている人でさえ不安になってしまう心理を利用している。法外な値段で買わせて暴利を貪るために役割分担や手順を定めた詳細なマニュアルがある。
[編集] 無料をダシに誘う
無料の姓名判断、印相鑑定、手相占い等でアプローチする。 最初はいい運勢であることを賛美しながら、相手に話をさせ、ウイークポイントを見つける。今度は少し心配な所があると言い、無料だから、気軽に見てもらえばと、”霊場”と呼ばれる会場に誘う。
[編集] ヨハネトークで偽霊能者を権威づける
ゲストを連れて行った案内役の信者は、霊能者を装った信者を徳の高い「先生」のように扱い、「霊山でご修業を積まれ、過去、現在、未来を見通す霊力をお持ちです」「大変人気のある方で、相談に乗ってもらえるのはかなりラッキー」など、いかにその霊能者が優れているかを説いて信頼させる。[2]
[編集] 事前情報で霊感があると信じさせる
先生役の信者は宗教的なペンネームを名乗り、初めに予め調査してあった相談者(ターゲット)の情報を、あたかも霊感を使って当てているのように話す。この際、相談者の警戒心を解くため、非常に好意的でポジティブな内容を話すことが多いと言う。事情を知らない相談者は、例え初めは半信半疑であっても、次第に次々と当てられていく自分の事柄を聞くうちに、本当に霊能者のことを信じてしまうと言う。
[編集] マッチポンプのためのネガティブな予言
その後頃合を見計らい、今度は一転してネガティブな予言を始める。このままでは、家族が自分や病気に会う、絶家になるなどと不安を煽る。その具体的な解決方法として、神秘的な力のある壷や多宝塔を買うように勧められる ゲストの財産状況や、壷や像などに支払うことが出来る具体的な金額、どの程度霊能者の意見を信じているか、等は、相談者の案内役を通して全て霊能者や「タワー長」と呼ばれる統括責任者に筒抜けになる仕組みになっている。場合によっては先祖のお告げだと言って、事前に調べたゲストが出せるくらいの金額を示したたりすることもあり、それらを知らない相談者は次々と自分のことを言い当てる霊能者を結果的には信じ、法外な値段で壷や多宝塔などを買ってしまう。
[編集] 帰らせない手口
場合によっては、長時間その場から返さない、会場係がゲストを引き止めたり、最初に手荷物を預かることで帰りにくくする、といった手法が使われていることもある。
[編集] キャンセル防止の手口
物品の契約をしたゲストにはクーリングオフ(訪問販売の一種と考えられる場合が多いので)を阻止するために、それにあたる期間は人に言えば御利益が無くなる、あるいは不幸な目に遭う等と説明をしたり、現金一括払いに持ち込もうとするなど、全てにおいて用意周到に考え抜かれている。[3]
[編集] 国会での議論
国会でも霊感商法問題は何十回も取り上げられ、警察庁の刑事局保安部生活経済課長が「でもこの種の商法というのは人の弱みといいますか、人の不安につけ込むというもので、悪質商法の中でも最も悪質なものの一つということで、全国の警察に繰り返し厳しく取り締まるように指示をしておるところでございます。その結果、この数年間で十三件検挙した事例が出ております。各種の法令を適用して検挙しておる実態でございます。」と答弁した。[4]
また原価の10倍から数百の倍もの法外な値段で売ることがマニュアルで指示されていたことも語られている。[5]
[編集] 相談事例・被害報告
[全国霊感商法対策弁護士連絡会]の1987年から1996年までの資料によると、「相談件数」は1990年が最も多く、2,880件。 「被害金額」は1987年が最も多く、約163億円。 この9年間で「相談件数」は約1万千件。 「被害金額」は約6,800億円にも上る。
[編集] 明覚寺グループなどによる「霊視商法」
チラシなどで格安または無料相談などで人を集め、霊視鑑定をした後「水子の霊が憑いている」「このままでは不幸になる。」と言うのは「霊感商法」と同じである。
この「霊視商法」では愛知県警が宗教法人明覚寺系列の満願寺(名古屋市)の僧侶らを摘発した。1992年12月、文化庁は「組織ぐるみの違法性が認められる」と、刑事事件を受けた例としては国として初めて、和歌山地裁に「明覚寺」に対する解散命令を請求し、和歌山地裁は解散命令を決定した。
[編集] 法律論と裁判
法律的には、霊感商法等をする側が霊感等を持っていないという自覚があれば詐欺罪となることがあり、不安の煽り方が社会通念を逸脱したものであれば恐喝罪になることがある。
「統一教会」(統一協会)の関わった事例では、1984年1月12日青森地裁弘前支部は霊感商法を行っていた被告人2人に対し恐喝罪にあたるとされた。札幌地裁でも [6]、「そもそも、信者らの任意団体たる連絡協議会の存在が訴訟上主張され始めたのは、いわゆる霊感商法問題について最初に民事訴訟が提起された昭和621986年から七年を経過した後のことである。」「しあわせサークル連絡協議会」なる独立の任意団体の存在自体が極めて疑わしい」と判断された。
[編集] 判例
[編集] 判例1
大理石の壺などを販売していた統一教会の信者2人が、霊感商法の手口を使い、47歳の主婦に1200万円を支払わせた事件で、2人は主婦をホテルの一室に約9時間半にわたって軟禁し、「おろした子どもや前夫が成仏できず苦しんでいる。成仏させないと今の夫と子に大変な事が起こる。全財産を投げ出しなさい」などと迫った。
青森地裁弘前支部1984年(昭和59)1月12日判決[7]は、行為が恐喝罪にあたるとして懲役2年6月(執行猶予5年)の判決を下した。押収された「クレーム対策委員会」と題する書面には、証拠を残さないように注意すべき旨が記載されていた。
刑事事件になったのはこの1件で、他は民事の損害賠償訴訟がたくさん起こされたが、「統一教会」(統一協会)はずっと一部の信者がやったこと責任逃れをしてきたが、1994年5月27日福岡地裁の霊感商法に対する損害賠償訴訟で「統一教会」(統一協会)の組織的責任が初めて認定されてから、統一教会が実質的に指揮していたとして「統一教会」(統一協会)に使用者責任があるとした判決がいくつか出ている。
[編集] 判例2
「統一教会」(統一協会)の「霊感商法」や献金などで多額の出費を強いられたとして、元信者10人が統一教会に約2億6000万円の損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は2001年11月20日、「価値の乏しい商品に異常に高額の金を出させた違法な行為だ」と認め、統一教会に約1億6000万円の支払いを命じた[8]。一部の献金については「(原告が)信仰心から自発的にしたもので、「統一教会」(統一協会)の教義や宗教活動そのものが違法とはいえない」と判断した。
[編集] 参考文献
- 山口広(著)『検証・統一協会 霊感商法の実態』緑風出版 ISBN 4846193667 1993年03月
- 霊感商法被害者救済担当弁護士連絡会『証言記録 告発統一協会・霊感商法 つぎつぎとあばかれる統一協会の実態 』晩稲社 1991/01
- 有田 芳生 (著)『霊感商法の見分け方』晩聲社 ISBN 4891881712 (1988/01)
- 朝日ジャーナル(編集)『追及ルポ 霊感商法 朝日ブックレット』朝日新聞社 ISBN 4022680865 (1987/07)
- 「霊感商法」問題取材班 (著) 『「霊感商法」の真相―誰もここまでは迫れなかった』世界日報社 ISBN 4882010623 (1996/08)(統一教会系企業である「世界日報が取材した形で、統一教会が「霊感商法」の正当性を弁明した本。)
[編集] 註
- ^ 有田芳生『「神の国」の崩壊―統一教会報道全記録』
- ^ 札幌青春を返せ訴訟・最終準備書面に詳しい説明がある
- ^ (昭和59年04月11日 衆-法務委員会-8)
- ^ 第108回国会 法務委員会 第3号 昭和六十二1986年五月十五日]
- ^ 衆議院 物価問題特別委員会(昭和62)1986年05月21日参照
- ^ 2001年6月29日の札幌地裁
- ^ 青森地裁弘前支部1984年(昭和59)1月12日判決
- ^ 大阪地裁で「統一教会」(統一協会)の霊感商法に対し、過去最高の賠償額を認めた判決
[編集] 関連項目
- カルト、似非宗教
- 世界基督教統一神霊協会(「統一教会」または「統一協会」)
- ハッピーワールド
- 法の華三法行
- 明覚寺
- 悪徳商法
- マッチポンプ
- バーナム効果
- コールド・リーディング
- ホット・リーディング
- 疑似科学
- マインドコントロール
[編集] 外部リンク
- 霊感商法の実態(「全国霊感商法対策弁護士連絡会」による霊感商法被害についてのサイト)
- カルト被害を考える会の「青春を返せ裁判」裁判書類を参照
- 弁護士紀藤正樹のLINCの[1]参考判例集参照
- 大阪国際宗教同志会平成十二年度総会第二回例会における植田勝博弁護士の記念講演(霊視商法被害大阪弁護団長を務める植田勝博弁護士が「霊視商法」裁判の経緯について講演。)
- 邦画「忘れられぬ人々」盗聴盗撮カメラを使った霊感商法
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