オタネニンジン
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?オタネニンジン | ||||||||||||||||
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Panax quinquefolius |
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分類(クロンキスト体系) | ||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||
Panax ginseng | ||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||
オタネニンジン |
オタネニンジン (御種人参、Panax Ginseng) は、ウコギ科の多年草で、薬用植物として知られ、チョウセンニンジン(朝鮮人参)、コウライニンジン(高麗人参)、単にニンジンとも呼ばれる。ニンジン(人参)の名称は、根の形が人間の姿を思わせることに由来する。
目次 |
[編集] 概要
原産地は朝鮮半島で、中国東北部やロシア沿海州にかけて自生する。現在、全体の70%以上が韓国と中国で栽培されているが、日本でも江戸時代から栽培されている。
日本では古くから「朝鮮人参」と呼ばれてきたが、韓国においては単に「人参」(インサム、인삼)と呼ぶ。韓国ではニンジンは「唐根」(タングン、당근)と呼び、明確に区別する。土産物用、輸出用の人参製品には「高麗人参」(コリョインサム、고려인삼)と表記されるが、これは現在の韓国で「朝鮮」という呼称を忌避しているためである(なお「高麗」は、かつて朝鮮に存在した統一王朝の名称である)。
戦後、日本の人参取扱業者は輸入元の韓国に配慮して「朝鮮」の語を避けて「薬用人参」と専ら称してきたが、「薬用」の名称が薬事法に抵触するとする行政指導を受け、呼称を「高麗人参」に切り替えた。「高麗人参」の呼称は当初なじみが薄かったものの、現在では消費者にも広く普及している。
「御種人参」の名は、江戸幕府の八代将軍徳川吉宗が対馬藩に命じて試植。その後各地の大名に種を分け栽培を奨励したことに由来すると伝えられている。
[編集] 産地
古くから薬効が知られ珍重されていたが、栽培は困難であり18世紀はじめの朝鮮で初めて成功した。韓国では忠清南道錦山郡と仁川広域市江華郡、北朝鮮では開城が産地として有名。中国では長白山(白頭山)の麓で「長白山人参」として栽培される。日本では福島県会津地方、長野県東信地方、島根県松江市大根島(旧八束町)などが産地として知られる。
栽培物より天然物の方が薬効が強いが、野生の人参の採取は非常に困難であり、産地では高値で取引されている。
北米・中米ではアメリカ先住民によって自生の近縁種が利用されてきた。19世紀中頃にはアメリカ種の栽培も開始された。
[編集] 利用法
主要な薬用部位は根で有用成分はジンセノサイドとよばれるサポニン群であり、滋養強壮に効能があり、古くから愛飲されてきた。ただし、血圧を高める効能があるため、高血圧の人は控えるべきである。
自律神経の乱れを整える作用もある。
根を天日で乾燥させたものを白参(はくじん、ペクサム、백삼)、湯通ししてから乾燥させたものを紅参(こうじん、ホンサム、홍삼)ということもある。なお、日本薬局方においては、根を蒸したものを紅参としている。他に、濃い砂糖水に漬け込んでから乾燥させる糖参もあり、白参に分類される。
江戸時代には大変に高価な生薬で、庶民には高嶺の花だった。このため、分不相応なほど高額な治療を受けることを戒める「人参飲んで首括る」のことわざも生まれた。
韓国では煎じたものを人参茶(高麗人参茶)として飲用したり、サムゲタンなどの料理にも利用するほか、乾燥させる前の「水参」(スサム、수삼)をスライスして蜂蜜につけて食べたりもする。人参入りの栄養ドリンクやガム、石鹸なども市販されている。人参石鹸は韓国土産の定番でもある。釜山の港の売店には高麗人参味のハイチュウが売られているとの情報もある。
北朝鮮では開城の人参酒が主要な輸出品となっており、韓国でも京畿道坡州市の烏頭山統一展望台などで購入できる。
[編集] その他
ウコギ科の薬用植物は他に花旗参、竹節人参、田七人参、エゾウコギなどがある。
- 独参湯:人参のみで構成された漢方方剤。通常、漢方では複数の生薬を組み合わせて用いるため、人参を単独で用いる本方は、特異な処方である。