未成年者喫煙禁止法
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通称・略称 | なし |
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法令番号 | 明治33年3月7日法律第33号 |
効力 | 現行法 |
種類 | |
主な内容 | 未成年者に対する喫煙禁止 |
関連法令 | 未成年者飲酒禁止法、たばこ事業法 |
条文リンク | 総務省法令データ提供システム |
未成年者喫煙禁止法(みせいねんしゃきつえんきんしほう、明治33年3月7日法律第33号)は、未成年者の喫煙を禁止する法律である。
目次 |
[編集] 概説
この法律は、満20歳未満の者の喫煙を禁止する(1条)。また親権者やその他の監督者、煙草を販売・供与した者に罰則を科す。 1900年(明治33年)3月7日に未成年者飲酒禁止法よりも早く制定され、1947年に改定された後、長らく改定がなかった。しかし、未成年者の喫煙は、飲酒とならんで、青少年の非行の温床にになるという懸念などを背景に、その取締りを強化するために、2000年(平成12年)、2001年(平成13年)に、相次いで改定された。全6条からなる法律である。
[編集] 条文
- 第1条
- 満20歳未満の者の喫煙を禁止している。
- 第2条
- 未成年者が、喫煙のために所持する煙草およびその器具について、没収のみが行政処分として行われる。ただし、現在、この行政処分の手続きなどについての法令は存在していない。
- 第3条
- 未成年者の喫煙を知りつつも制止しなかった親権者やその代わりの監督者は、科料に処せられる。
- 第4条
- 煙草又は器具の販売者は未成年者の喫煙の防止に資するために年齢の確認その他必要な措置を講ずるものとされている。
- 第5条
- 未成年者が自分自身で喫煙することを知りながらたばこや器具を販売した者は、50万円以下の罰金に処せられる。
- 第6条
- 煙草を未成年者に販売した者の経営組織の代表者や営業者の代理人、使用人、業務委託先・偽装請負などで従事している従業者が、業務に関して未成年者に販売した場合には、行為者とともに営業者を前条と同様に罰する(両罰規定)。
[編集] 罰則
本法は、未成年者の喫煙を禁止し、未成年者自身の喫煙目的での販売のみを禁止しているだけであり、未成年者が煙草を所有・所持や、喫煙以外の使用をすることを禁止していない。 本法には、違反行為をした未成年者本人を処罰する規定が無いので未成年者本人は刑事処分されない。
未成年者本人が喫煙することを知りながら煙草を販売した営業者とその関係人は、50万円以下の罰金に処せられる。
[編集] 少年法との関係
少なくとも喫煙する様な悪いことをしているのだから、家庭裁判所で少年審判に付されるかと思えば、少年法(昭和23年7月15日法律第168号)第3条で審判に付される少年は、次のように定められている。
- 罪を犯した少年
- 14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年
次に掲げる事由があつて、その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年
- イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
- ロ 正当の理由がなく家屋に寄り附かないこと。
- ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。
- ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。
本法は未成年者本人も罰せられる刑罰法令ではなく、当然、罪も犯していない(第1号・第2号)。ただ単純に喫煙したからといって、家出(第3号イ・ロ)、暴走族や暴力団へ加入(第3号イ・ハ)、売春(第3号ニ)と直結するはずもなく、大麻・覚醒剤等の濫用や密売のように重大性がない限り、本法違反のみで審判に付すことはほとんど困難である。
少年法第24条の2には没収の規定があるものの、没収するものはすべて刑罰法令に触れる行為に付随したものを、調査又は審判での決定時に併せて没収するため、本法は未成年者本人に適用がある刑罰法令ではないので、少年審判では、家庭裁判所が煙草と器具を没収することはできない。
[編集] 行政処分
未成年者が喫煙した時に使用し、所持する煙草や器具などは、没収のみの行政処分を受けると規定されているが、現在、それに対応して処分をする行政庁や、具体的な方法に関する法令が存在しない。また処分をするにしても次のような問題がある。
- 処分ができるのは未成年者本人が喫煙した以降であり、持っているだけではできず、さらに本人が喫煙時以降に発覚まで所持していなければならず、隠したり、他人に預けたりした場合はできない。
- 没収しかできず、煙草を人体や建築物の壁や建材に埋めたり隠した場合できない。喫煙がばれないように建物本体に煙突や空気清浄機をつけた場合も同じ。
- 未成年者は制限能力者なので親権者か未成年後見人がその処分の法定代理人として参加しなければならない。
- 処分庁はその未成年者に対して行政手続法第13条2号による文書による「弁明の機会の付与」とその処分の理由を提示する必要がある。
- 事件発覚からその行政処分の最終的な確定(裁判であれば確定判決まで)後、その処分庁が権限を行使するまでの間に、所有・所持する煙草や器具などを差押などの保全の権限などが存在していないために、未成年者本人や家族の手で勝手に煙草・器具を廃棄することができてしまう。
[編集] 煙草の定義
本法には『煙草』という言葉と、『煙草ヲ喫スルコト』という言葉が出てくるが、それらについての具体的定義はない。
『煙草ヲ喫スルコト』が、日本たばこ産業が製造販売している『たばこ』と言うものなのか、それに火をつけて吸引することなのか。それなら、煙草を食することや、煙草から抽出した液体を飲用することや、喫煙車や喫煙室内で副流煙を吸引することなどは入らないのかどうか、どうとでも解釈できる状況である。
[編集] 未成年者への販売
本法は未成年者への煙草の販売は、販売者が未成年者本人が喫煙する目的であること知っている場合に禁止しているのであって、一律に未成年者への煙草の販売を禁止しているものではない。
根拠とされる第第5条では、あくまで販売者のみであり、喫茶店などの業態上喫煙する店舗は対象外の上、成年者が未成年者に煙草を供与したり、喫煙させたりすることは禁止されていない。未成年者自ら喫煙することを知った上で販売することを要件としており、販売者が、他の未成年者のために購入することや、未成年者自身が成年に達した時点以降に喫煙することを前提とした(引渡し時にはすでに成年に達している)予約注文をしたり、成年者のために代理購入をしたり、他の未成年のたばこ販売者(たばこ小売業免許は未成年者でも取得できる)に日本たばこ産業や輸入たばこをたばこ卸売業者が卸売販売しても本条に抵触しない。
[編集] 年齢確認
関係省庁や業界団体などでは、煙草販売時に年齢確認を行うのはあたかも義務であるかのよう表現をポスターやチラシに掲載しているが、本法第4条は、『煙草又ハ器具ヲ販売スル者ハ満二十年ニ至ラザル者ノ喫煙ノ防止ニ資スル為年齢ノ確認其ノ他ノ必要ナル措置ヲ講ズルモノトス 』と、訓示規定である。
法律用語で「義務」を課す場合には「○○スへシ」、「○○為スへシ」と「べし」と文末がなるが、「モノトス」では、義務を課すものではなくそれらを訓示する意味である。
[編集] 関係省庁・関係団体の対応
本法の所管庁は一応、経済産業省とされるものの、青少年の保健・保護育成など観点を含めると厚生労働省や内閣府など多数の関係省庁や都道府県、さらに担当する内部部局が縦横無尽に存在しているが、本法の実施に関して主務官庁は定まっていない。業界団体についても、目的は同一でも所管庁や設立の根拠法が異なるため、統一的団体が結成不可能であるため、未成年者の喫煙禁止に関するポスターやチラシ、書籍について、必ず2~100の多数の官公庁・団体名・部局名が掲載されるのはこのためである。
そのため、政府や業界団体の見解・解釈の統一化が現実的に不可能であったために、本法自体の仕組みについての広報は一切行われず、未成年者への販売はしない、未成年者への煙草の販売は法律で禁止されている旨のみの事実に反する発表(未成年者飲酒禁止法と違い、本法には煙草の販売禁止規定が無い。)しか行われていないために、本法が未成年者への煙草の販売の一律禁止であるとの印象を与えるような結果を招くような、嘘ではないが真実ではない報道発表を繰り返している状況である。
2006年現在、たばこ小売業者や各業界団体は、全部が「直ちに自ら喫煙するための購入」と一律にみなして未成年者への煙草の販売に応じていない。成年者の代理や非喫煙用などと偽って購入を企む不良未成年者の存在も否定できないものの、未成年者が行うたばこ小売業者は、免許取得した後も成年になるまで通常業務に就けず、中学・高校卒業者は日本たばこ産業やたばこ卸売業者に就職することできない状況となっている。
[編集] 沿革
販売者などに対する罰金額は、長らく低額のままであったが、2000年(平成12年)に制定された「未成年者喫煙禁止法及び未成年者飲酒禁止法の一部を改正する法律」(平成12年法律第134号) によって、その最高額が50万円に引き上げられ、その罰則が販売行為者のみから、経営者、経営法人、役員、従業員などへ拡大し、さらに、販売者は未成年者の喫煙の防止に資するために年齢の確認その他必要な措置を講じるものとされた。
何故禁止されるのかと言うと、未成年者は成年者と違い、身体の成長の最中であり、タバコによって癌になりやすくまた病巣も広がりやすいなど、成年者よりも甚大な悪影響を受けるためである。
なお、法制定の背景として、当時は日露戦争前で、日本とロシアの対立が激化しており、強い兵士を育成するためには幼少時からの喫煙は好ましくないという考えがあったからだと言われている。
しかし、未成年者にも関わらず、そのタバコの見かけによる魅力や一種のあこがれ、青少年の精神的な問題から、この法律を破ってでもタバコに手をだす青少年は後を絶たない。作家の内田百間によれば、明治大正期の旧制中学校等では、すでに未成年の喫煙が当たり前のごとく横行していたといわれ、また当の百間もその違反者の一人であった事などからも分かる通り、法律の制定当時から続くいたちごっこの、根の深い問題であるといえる。
また、実際上、19歳と20歳で、そこまでの急激な身体の変化があるわけでもない。たとえ20歳以上であっても、喫煙は決して体によいものではないことも周知の事実である。
[編集] 業界の対応と課題
日本内外での公共スペースでの禁煙対策の広がり、国内における未成年者の喫煙に対する防止対策への要求の高まりなどから、業界団体では、早くから(具体的時期について要記載、[要出典])、自主的に、深夜・早朝(23時から5時)の自動販売機での販売を停止する対策を行ってきた。 しかし、未成年者の未成年者飲酒禁止法と同様、未成年者の喫煙は後を絶たず、喫煙防止対策は、不十分であるとされてきた。また、本法では、販売業者が未成年者への販売を避けるために年齢確認を行おうとしても、その法的根拠がなかったために、販売現場での支障が生じることもあった。
そこで、2000年の法改定により、4条が新設され、購入者に対する年齢確認等の未成年者喫煙防止対策が、明文で規定されたものの、法令に具体的な方法が定められていないため、年齢確認の為に個人情報を収集した場合、個人情報保護法に抵触する恐れがあり、年齢確認のために戸籍・住民基本台帳に関する謄本・抄本・証明書などを求めたり、収集した場合、同法により処罰される恐れがある状況である。
なお、厚生労働省、財務省、警察庁など関係各省庁は、それぞれ、年齢確認以外にも、未成年者の喫煙防止のための措置(ポスター掲示、年齢確認機能付きの新型自動販売機の設置など)を行うことなど、コンビニエンスストア、百貨店、スーパーマーケットなどの業界団体に対して、指導を続けている。
これを受けて、それぞれの業界団体は、未成年者の喫煙防止の各種キャンペーンを行っている。また、年齢確認をする自動販売機の全国展開が計画されている。
[編集] 一般人の意見と国の考え方
財務省は、2004年7月から1ヶ月間の間に、未成年者による喫煙防止を徹底するために、自動販売機の設置場所についての規制を強化する方向での通達改正に先立って、パブリックコメントを実施した。その結果[1]によれば、一般人353名(519件)が意見を提出し、それに対する財務省の考え方[2] が示されている。それらは次の通りである
- 一般人の意見
- 自動販売機の常時監視は不可能であり、自動販売機の設置を禁止して対面販売を促進すべき
- 自動販売機の年齢識別機能導入などにより、年齢確認を徹底すべき
- 喫煙を行った未成年者、親権者、販売業者に対する取締と罰則を強化すべき
- 自動販売機に深夜の販売の自主規制で十分であり、これ以上の規制強化は、消費者の利便性を損なう
- 家庭、学校、地域など社会全体での対策強化等が必要
- 自動販売機の設置にあたっては、従業員の目が届く場所という程度の規制では足りず、常時監視することを義務化すべき
- 規制を一律に行うのではなく、ゲームセンター、カラオケボックス、コンビニエンスストアなど未成年者が多く集まる場所に限り、特に規制を強化するなどのメリハリをつけるべき(大勢の大人の目があるスーパーマーケットなどでは規制強化は不要)
- 財務省(国)の考え方
- 平成16年6月に日本が締結した「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」、平成15年12月に決定した「青少年育成施策大綱」の内容に沿って、自動販売機の管理・監督を一層徹底するのが国の方針である。
- 自動販売機設置場所に関する基準を、通達の改正によって明確化する必要がある。
- たばこの自動販売機の業界団体(社団法人日本たばこ協会など)が自主的に年齢識別機能導入をすすめているので、自動販売機による販売禁止までは必要でない。
- 補導された不良行為少年の状況によれば、喫煙を理由とする補導が4割である。また、中学生、高校生の喫煙者の7割が、自動販売機でたばこを入手している。このような調査結果に示された問題に対応するには、自動販売機の設置場所を明確化して、規制・監督の強化が必要である。
- 社会全体での取組が必要との認識はもっとも。同時に国も、省庁間の連携・協調を深めたい。
- この通達改正は、自動販売機の管理責任者がいる場所から、その利用者を直接・容易に視認できない場所への設置を許可しないことが内容。(つまり、合理的な範囲での「常時監視」を求めたものともいえる)
- 工場、事務所など、自動販売機の利用者が設置場所の従業員に限られるような場合を除き、スーパーマーケットなどを規制の対象から除外することは適当ではない。
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
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