高松琴平電気鉄道30形電車
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高松琴平電気鉄道30形電車(たかまつことひらでんきてつどう30がたでんしゃ)は、高松琴平電気鉄道の電車で、以下の3つが存在する。
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[編集] 30形 (初代)
二軸電動貨車(有蓋)で、1912年~1913年梅鉢鉄工所製。長尾線の前身である高松電気軌道の貨1形である。開業の1912年に貨1が、翌年貨2が製造されている。 全長7.04メートルで木造、運転台はオープンデッキ構造であった。
高松琴平電気鉄道成立時に、30形31~32に改番された。1945年には長尾線の改軌にあわせ、当形式も台車の改造を国有鉄道多度津工場で受けている。しかし、同年7月4日の米軍による高松市街空襲により、32は焼失・廃車となった。
残る31は、戦後の車輌不足の際に旅客輸送に使用されたが、東京急行電鉄と山陽電気鉄道から購入したボギー車の使用開始に合わせこれは終了した。旧高松電気軌道の車両としては唯一戦後まで生き残った車両だが(旅客車の1形→20形は一部が戦災で焼失、残りも終戦直後に廃車)、その後はあまり使用されず、1963年に正式に廃車となった。
[編集] 30形 (2代)・50形 (2代)
もと阪神電鉄881形で1941年・1942年川崎車輌製。1964年~1967年に入線。制御電動客車の27~39、および制御客車の50形55~57が在籍した。 前面貫通扉のデザインから鉄道ファンの間では「喫茶店」の通称で親しまれた。
30形でありながら27から始まっているのは、40番台を忌み番として避けたためである。入線順に31から39まで達したあと、29、28、27と付番した。なお、初代20形は21~29が存在したため、27~29は2代目となる(2代目20形は21のみ、現存する3代目20形は24まで)。また、50形が55~57であるのは、当時50形 (初代)の除籍が完了していなかったためである。
琴電では直流600V区間用として登場した。当初、長尾線・志度線で使用されたが、1966年に志度線の架線電圧が1500Vに昇圧されたため、長尾線専用となった。これにより、木造車および簡易鋼体化車(木造車体の上に鋼板を張った車両、「ニセスチール車」)が1969年までに廃車され琴電から消滅した。
その後、長尾線も架線電圧が1500Vに昇圧されることになったが、本形式は戦時中の製造で車体の老朽化が進んでいたことや、新造以来の東芝製RPC-51自動加速制御器・自動ブレーキ・バンドン型密着連結器を使用しているためHL制御・SME(非常弁付直通ブレーキ)方式の他車と連結が不可能なこと、電気関係の配線の被覆が布製であり、老朽化が進んで1500Vへの昇圧に耐えられないこと、それに何よりRPC-51をはじめとする制御器の老朽化が著しく、しかもスペアパーツの入手が困難で最終期には半数に当たる8両が使用不能状態に陥っていたことを理由として、廃車されることとなった。廃車は状態不良で休車中の車両から1975年より開始され、一部は長尾線昇圧前日の1976年12月25日まで残存したが、翌1977年に全車除籍され、解体処分された。
なお、台車・主電動機[1]などの下回りは車体よりも多くが導入された。また廃車後、後述の30形(3代)などに転用されたものもあり、2006年7月現在でも一部が使用されている。
[編集] 30形 (3代)
もと京浜急行電鉄230形で、1930年~1936年 川崎車輌または汽車会社製。1977年~1980年に入線した。最大時、25~38の2両編成7本が在籍したが、1999年以降廃車が進み、現在は27-28の1編成が残るのみである。なお、この30形 (3代)は志度・長尾線用では初の2両固定編成・貫通路及び貫通幌付き車輌である。
入線にあたっては、以下の改造が行われた。
- 偶数番号車の電装を解除し、附随制御車化した。一方で、電動発電機と空気圧縮機を搭載。当初、パンタグラフを載せていたが、これは使用されなかった。のちに撤去され、琴電在来車のそれを置き換えている。
- 奇数番号車は、台車・主電動機を主に30形 (2代)のもの[2]に交換。なお、本来京急230形が取りつけていた機器一式は1020形の機器統一や、1010形のHL制御化等に使用された。
- 弱め界磁付きの自動加速制御器を手動加速方式のHL制御器に変更(直列4段、並列3段)。
- 連結面の連結器は自動連結器に交換。高さをクリアーするために幌枠も移設された。(連結器は後に密着自動連結器に交換された。)
- 1979年以降に入線した37-38、25~30は、行き先表示板交換を容易にするため前面に貫通扉を設置。前面の連結器は自動連結器に交換。(後に密着自動連結器に交換された。)
- ブレーキをA動作弁によるAMA自動空気制動から、電磁SME(非常弁併設電磁弁付直通空気制動)に変更。これに伴い圧力計を変更。
- ATS、無線アンテナなど保安装置を琴電用に交換。
最初に導入された31-32は当初75形75-76を名乗っていた。これは入籍時点で30形 (2代)の除籍が完了していなかったためである。また、2代と同様の理由により、38まで来たところで29-30、27-28、25-26と付番している。なお、車号のうち27~29は3代目、25・26は2代目である。
昇圧が完了した長尾線と志度線は車輌が共通となり、一時期は、両線の主力として使用された。1994年の瓦町駅改良工事着工に伴う志度線分断により、25-26、33-34、35-36の3編成は長尾線、残りの4編成は志度線の所属となる。
1998年以降、両線に冷房車の600形、700形の投入が開始された。30形はこの代替で1999年~2000年にかけて順次廃車となった。志度線の27-28も2001年度に600形の代替で廃車の予定であったが、2001年12月の民事再生法申請に伴い計画は白紙になった。その後、計画が変更され2002年末に、この600形は613-614として長尾線に投入されたため、27-28は2006年7月現在も志度線に在籍している。
琴電では2002年以降、旧形車はピンク+アイボリーのツートンから茶色+アイボリーのツートンに塗色変更されているが、27-28は志度線標準塗装に変更され、600形・700形同様「ことでん」ロゴの貼り付けが行われている。
[編集] 車歴
- 25←京急デハ271←東急デハ5271←京浜電鉄デ86
- 1936年汽車製 1980年入線 2000年廃車
- 26←京急デハ276←東急デハ5276←京浜電鉄デ91
- 1936年汽車製 1980年入線 2000年廃車
- 27←京急鉄デハ257←東急デハ5257←京浜電鉄デ72
- 1932年汽車製 1979年入線
- 28←京急デハ264←東急デハ5264←京浜電鉄デ79
- 1932年汽車製 1979年入線
- 29←京急デハ275←東急デハ5275←京浜電鉄デ90
- 1936年汽車製 1979年入線 2000年廃車
- 30←京急デハ266←東急デハ5266←京浜電鉄デ81
- 1932年汽車製 1979年入線 2000年廃車
- 31←75←京急デハ245←東急デハ5245←京浜電鉄デ15←湘南電鉄デ15
- 1930年川崎製 1977年入線 2000年廃車
- 32←76←京急デハ258←東急デハ5258←京浜電鉄デ73
- 1932年汽車製 1977年入線 2000年廃車
- 33←デハ265←京急デハ267←東急デハ5267←京浜電鉄デ82
- 1932年汽車製 1978年入線 2000年廃車
- 34←京急デハ270←東急デハ5270←京浜電鉄デ85
- 1936年汽車製 1978年入線 2000年廃車
- 35←京急デハ277←東急デハ5277←京浜電鉄デ92
- 1936年汽車製 1978年入線 1999年廃車
- 36←京急デハ272←東急デハ5272←京浜電鉄デ87
- 1936年汽車製 1978年入線 1999年廃車
- 37←京急デハ235←東急デハ5235←京浜電鉄デ5←湘南電鉄デ5
- 1930年川崎製 1979年入線 1999年廃車
- 38←京急デハ256←東急デハ5256←京浜電鉄デ71
- 1932年汽車製 1979年入線 1999年廃車
[編集] 脚注
- ^ 東洋電機TDK-596A(端子電圧600V時定格出力48.5kW/675rpm)。なお、使用されなかったものの、他の阪神800番台車に搭載されていたTDK-513T(端子電圧600V時定格出力48.5kW/595rpm)も予備として購入されていた。
- ^ 台車:川崎BW形、主電動機:TDK-596A(端子電圧750V時定格出力60kW/845rpm)x4。
[編集] 参考資料
- 共通
- 真鍋裕司「私鉄車輌めぐり[121] 高松琴平電鉄(下)」、鉄道ピクトリアル404号、電気車研究会、1982年6月
- 真鍋裕司「琴電 近代化への歩み」、鉄道ピクトリアル574号、電気車研究会、1993年4月増刊
- 初代
- 大島一朗『JTBキャンブックス ことでん長尾線のレトロ電車』JTBパブリッシング、2006年/ISBN 4533064124
- 2代目
- 宮崎光雄「私鉄車輌めぐり[69] 高松琴平電気鉄道(上)」、鉄道ピクトリアル190号、電気車研究会、1966年11月
- 高橋修『RMライブラリー024 関西大手私鉄の譲渡車たち(下)』、ネコ・パブリッシング、2001年7月/ISBN 4873662389
- 3代目
- 高島修一「他社へ行った京急の車両」、鉄道ピクトリアル656号、電気車研究会、1998年7月増刊
- 慶應大学鉄道研究会『私鉄電車のアルバム1A』、交友社、1980年
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営業用(カルダン駆動・冷房車):600形・700形・1070形・1080形・1100形・1200形 営業用(釣掛駆動・非冷房車):20形III・30形III・60形・1000形・3000形・5000形 事業用:デカ1形・13000形 |
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