A-1 (航空機)
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A-1 スカイレイダー
ダグラス A-1 スカイレイダー (Skyraider) は、第二次世界大戦中に開発が始まった、アメリカ海軍の爆撃・雷撃兼用艦載攻撃機。空軍との名称統合前はAD-1~7だった。
艦載機がプロペラ機からジェット機へと入れ替わった1960年代までに3,000機以上生産され、アメリカ海軍の主力攻撃機として、朝鮮戦争・ベトナム戦争において活躍した。第二次世界大戦後半に活躍した、前任の雷撃機TBF/TBM アベンジャー・急降下爆撃機SB2Cヘルダイバーよりも小型軽量であるが、全ての面で前任機を凌駕する汎用攻撃機であった。
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[編集] 開発
1944年、アメリカ海軍は従来別々の機体を使用し、また複座であった艦上爆撃機と艦上雷撃機を、単座の艦上攻撃機に一本化する方針を軍用機メーカーに打診し、各社の競合の結果ダグラス・エアクラフト社が受注を獲得した。
ダグラス社は単座艦上攻撃機XBT2Dの開発に着手、1945年には試作機が完成した。折りしも日本軍との激戦中であったため開発・配備が急がれ、1945年3月18日に初飛行に成功すると直ちにアメリカ海軍はBT2D デストロイヤーIIとして500機以上の大量発注を受けた。しかし、太平洋戦争には間に合わず、配備開始は1946年12月までずれ込んでしまい、終戦により発注は277機に減少した。
1946年6月にはAD-1 スカイレイダー(Skayraider)と名称が変更され、AD-1のうち35機は電子妨害を任務と複座のAD-1Qとなった。その後もAD-2、AD-3、AD-4、AD-5、AD-6、AD-7と改良されながら、1957年まで生産が続けられた。なお、1962年に命名規則が陸海空軍で統一されたことにより、A-1となっている。
[編集] 戦歴
1950年に朝鮮戦争が勃発すると対地攻撃任務に投入され、朝鮮民主主義人民共和国・中華人民共和国軍撃破に大きく貢献した。A-1は戦闘機並みの優秀な飛行性能・空戦能力と3tを超える武装搭載能力を有していたが、特に兵器搭載量においてはIl-10等当時のソ連製攻撃機を大きく凌駕しており、その攻撃能力の高さから海兵隊にも多数が配備された。この朝鮮戦争では、空母プリンストン(タイコンデロガ級航空母艦)に搭載されたA-1による攻撃隊が、航空魚雷で北朝鮮国内のダムを破壊するという戦果を挙げている。
攻撃ヘリコプターやより新型のジェット攻撃機が登場するとA-1の役割は減じ、またレシプロ機であることから旧式機として軽んぜられがちであった。しかし、1965年にベトナム戦争が勃発すると拠点を破壊するヘリボーンや撃墜されたパイロットの救出が行われる際にA-1はヘリ部隊の護衛を行い、必要であれば搭載火器を駆使して戦闘を掩護することもできた。また、ベトナム戦争時には小型化していたエセックス級航空母艦でも運用できたことからも重宝された。
高い機動能力を発揮してジェット戦闘機MiG-17Fを撃墜した記録が残っている。これはMiG-17Fがオーバーシュートしたところを機銃により撃墜したものである。ジェット攻撃機の攻撃能力発展によりアメリカ海軍のA-1は1966年に一線を退いたが、空軍では護衛任務のためベトナム戦争の最終局面まで使用された。
使用国も多く、アメリカ海軍、海兵隊、空軍のほか、イギリス、フランス、南ベトナム、カンボジア、ガボンなどでも使用された。
余談だが、本機の兵装搭載量は当時、「キッチン以外に運べない物はない」と評価されるほどであり、朝鮮戦争では実際に流し台を搭載し、投下したことがある。また、ベトナム戦争の際には信管を取り付けた便器を実戦で投下した。
ちなみに、クリント・イーストウッド主演、監督の映画ファイアーフォックスでは主人公が墜落しベトナムゲリラに捕まった時、ヘリコプターと共に助けに来たのが本機だった。女の子が本機の攻撃を受けて炎に包まれ死亡。それが主人公のトラウマとなった。作中で登場する最高速度マッハ5以上、ステルス機能と架空の制御システム搭載の架空の最新鋭機と対照的だった。
[編集] 要目
[編集] 派生型
- AD-1 - 初期型。242機生産。
- AD-1Q - 電子妨害機。複座。35機生産。
- AD-1U - AD-1の電子妨害および標的曳航機型。武装なし。
- XAD-1W - 早期警戒機であるAD-3Wの原型機。
- AD-2 - エンジンをライトR-3350-26W(2,700馬力)に換装。156機生産。
- AD-2N - AD-2の夜間攻撃型。
- AD-2Q - AD-2の電子妨害機型。複座。21機生産。
- AD-2QU - AD-2の電子妨害および標的曳航機型。武装なし。1機生産。
- AD-2W - 早期警戒機型。
- XAD-2 - 原型機XBT2D-1の燃料タンク増大型。
- AD-3 - 燃料タンク増大、着陸脚強化、キャノピーデザイン変更。125機生産。
- AD-3N - AD-3の夜間攻撃型。3座。15機生産。
- AD-3Q - 早期警戒機型。31機生産。
- AD-3W - 早期警戒機型。2機改修。
- XAD-3E - 対潜任務機。AD-3Wより2機改修。
- AD-4 - 着陸脚強化、レーダー改良、対Gスーツ機材設置。344機生産。
- AD-4B - 20mm機銃を2門から4門に強化。戦術核爆弾運用能力付与。194機生産。
- AD-4L - 寒冷地対応能力強化。
- AD-4N - 夜間攻撃および電子妨害型。
- AD-4NA - AD-4Nの改良型。
- AD-4Q - AD-4の電子妨害機型。39機生産。
- AD-4W - 早期警戒機型。168機生産。
- AD-5 (A-1E) - サイド・バイ・サイド配置の複座。垂直尾翼面積拡大。一部ダイブブレーキ廃止。212機生産。
- AD-5N (A-1G) - 夜間攻撃および電子妨害型。
- AD-5Q - AD-4の電子妨害機型。54機改修。
- AD-5W (A-1E) - 早期警戒機型。156機生産。
- AD-6 (A-1H) - 低空侵攻用。713機生産。
- AD-7 (A-1J) - エンジンをライトR3350-26WB に換装。機体構造強化。72機生産。