IRA
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IRA(Irish Republican Army、アイルランド共和軍) は、アイルランド独立闘争(対英テロ闘争)を行った武装組織である。
英愛条約締結によりアイルランド自由国が成立した後、アイルランド国防軍に加わらず下野した者達によって、北アイルランドを連合王国から分離させ、全アイルランドの統一をめざすグループであるアイルランド共和軍暫定派 (Provisional Irish Republican Army, PIRA) 、IRA暫定派が結成された。単にIRAと称してこの組織を指す場合もある。この組織は英語ではプロヴォ (Provo) と呼称されている。
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[編集] 現況
現在ではIRA暫定派から分離した過激派が真のIRAを標榜しテロ活動を行っている。2000年5月にIRA暫定派は段階的な武装解除を表明し、独立国際武装解除委員会の受け入れにも応じており2005年7月28日に武装闘争の終結を宣言した。
2003年の北アイルランド自治議会選挙では、事前に武装解除宣言を行っていた事により、IRA暫定派の政治組織であるシン・フェイン党が躍進を遂げている。
[編集] 歴史
IRAの設立には、16世紀のイギリス本土での清教徒革命で実権を握ったオリバー・クロムウェルのアイルランド侵攻以後のプロテスタントによるカトリック弾圧、その後19世紀の中頃に世界的なナショナリズムが高揚するとアイルランドにおいてもイギリスの圧政に対して独立を目指す反英ナショナリズムが全土に広がっていた事が背景にある。
[編集] IRA創設まで
イギリスのアイルランドにおける重要地であったアルスター地方では、プロテスタントの親英連合派と、カトリックの民族派との緊張が高まり、双方の武力衝突が頻発していた。1858年にアメリカのニューヨークでアイルランド移民が創設して活動していた秘密結社であるアイルランド共和同盟(IRB)が、ダブリンの民族派組織と合併してアイルランド本島での活動を始める。また、1907年にアイルランド文化の復興運動を掲げて政治活動をしていたシン・フェイン党も勢力を拡大する。プロテスタントの親英連合派が1913年に結成した実力部隊であるUVF(アルスター義勇軍部隊)に対抗して、IRBとシン・フェイン党、および保守党、労働党に次ぐ第三の勢力である自治主義のアイルランド国民党は、IV(アイルランド義勇軍)を設立して対抗する。さらに1914年に第一次世界大戦が勃発すると、イギリス本国がアイルランドの情勢に介入している余裕を失っており、独立達成の機会と考えたIRBは、JIRA(統合アイルランド共和軍)を組織し、イギリス、連合国の敵である同盟国のドイツから武器弾薬を調達すべく秘密活動を開始する。
[編集] 自由国成立と国土分裂
1916年にはダブリンでイースター蜂起を行うが、兵力・弾薬不足と市民側の支援を得られなかった事が原因で、蜂起はわずか6日間で失敗する。しかし、イギリス総督府が蜂起の首謀者であるJIRAの幹部16名を即決の軍事裁判で処刑したが、武装したまま逮捕されて当人たちも容疑を認めており、事実関係が明白だったこと、ドイツと連絡していたこと、反乱が多数のダブリン市民を巻き添えにしたことを考えれば、決して不公平ではない。しかし、これでアイルランド市民は蜂起に同情的になり、蜂起に消極的だった穏健派のシン・フェイン党は上手く立ち回って人気を集め、1918年の選挙で議席を伸ばして躍進する。19年1月にシン・フェイン党はドール・エーレン(アイルランド国民議会)の設立に着手し、マイケル・コリンズを軍事担当に任命する。臨時政府の国防大臣、カサール・ブルッハーはIVをIRA(アイルランド共和軍)と改めた。一説によると、軍事部門に対するコリンズの影響力増大により、リーダーの私兵と化すこと(←イースター蜂起で既にこの傾向があった)を恐れたシン・フェイン幹部らが、共和国の軍隊としての自覚を促すために改称したらしい。
その後、コリンズの指導の下での対英テロ闘争の結果、1921年、臨時政府首班のデ・ヴァレラとイギリス首相ロイド・ジョージとの首脳会談が実現し、和平が成立する。
この和平の結果、英連邦内の自治領「アイルランド自由国」が成立するが、あくまで共和国設立を目指すデ・ヴァレラらは条約締結に反対し、アーサー・グリフィスやマイケル・コリンズら条約派と対立した。その結果IRAは、自由国軍に編入されるグループとデ・ヴァレラ派に分裂した。そして、条約の賛否を問う国民投票でデ・ヴァレラら反条約派が敗れると、IRAは武装蜂起し、内戦がダブリンを中心に広まり、コリンズも反対派により殺害される。そして内戦を格好の口実としてアルスター議会は自由国からの離脱を宣言してしまった。最近まで活動していたIRAは、デ・ヴァレラ派の系列であり、創設時のIRAとはやや異質である。
[編集] IRA(暫定派)設立後
内戦後の苛酷な弾圧(デ・ヴァレラも首相になったとたんに弾圧に転じた)のため、IRAは一時衰退したが、第二次世界大戦直前、ナチスの援助で活動を再開した。
第二次世界大戦後に東西冷戦が起こるとソ連やリビアからの軍事的支援を受けて闘争を続け、スペインのETAやイタリアの赤い旅団などのヨーロッパの左派系テロ組織とも交流する。冷戦体制が終結すると援助する勢力は無くなり、和平合意もなされて、テロ活動も収まっている。
[編集] リアルIRA
詳細はリアルIRAを参照
1998年に発表されたIRA暫定派による休戦後に組織内の過激派メンバーがIRA暫定派を離脱しリアルIRAを設立した。日本語では"真のIRA"とも呼ばれている。設立直後から北アイルランドにおいて車爆弾を用いた無差別テロを繰り返した。1998年に発生したオマーのショッピング街でのテロでは29人の市民が死亡、200人以上が負傷している。これは過去30年間の北アイルランド紛争における最大のテロ事件だった。
リアルIRAはバルカン半島からアムステルダムを経由してアイルランド及びイギリスへの武器の密輸に積極的に従事している。密輸品の中にはRPG-22のような対戦車兵器もあり、2000年9月20日にはロンドン中心部のイギリス情報局秘密情報部(通称MI6)本部に発射される事件がおこった。現在リアルIRAは北アイルランドにおいて最も活発に活動しているテロ組織の一つである。
[編集] 関連作品
- 映画『男の敵』(1935年 監督 : ジョン・フォード、主演:ヴィクター・マクラグレン)
- 映画『パトリオット・ゲーム』(1992年 監督 : フィリップ・ノイス、主演:ハリソン・フォード
- 映画『父の祈りを』(1993年 監督 : ジム・シェリダン、主演:ダニエル・デイ=ルイス
- 映画『マイケル・コリンズ』(1996年 監督 : ニール・ジョーダン、主演:リーアム・ニーソン)
- 映画『ジャッカル』(1997年 監督 : マイケル・ケイトン・ジョーンズ、主演:リチャード・ギア、ブルース・ウィリス)
- 映画『デビル』(1997年 監督 : アラン・J・パクラ、主演:ブラッド・ピット、ハリソン・フォード)
- 映画『ブラディ サンデー』(2002年 監督 : ポール・グリーングラス、主演:ジェームス・ネスビット)
- 舞台『ウィー トーマス』(2001年 作 : マーティン・マクドナー)
- 映画『麦の穂をゆらす風』(2006年 監督 : ケン・ローチ、主演:キリアン・マーフィ)
アイルランド共和国軍 (IRA) を名乗る組織 |
アイルランド共和国軍 (アイルランド共和国暫定政府の正規軍) (1919年–1922年) |
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その後の組織 アイルランド共和国軍 (1922年–1969年) | オフィシャルIRA (1969年–現在) | IRA暫定派 (1969年–現在) | |