PL学園対横浜延長17回
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
PL学園対横浜延長17回(ぴーえるがくえんたいよこはまえんちょう17かい)とは、1998年8月20日に甲子園球場で行われた第80回全国高等学校野球選手権大会準々決勝第1試合で行われた南大阪代表・PL学園VS東神奈川代表・横浜高校との試合を指す。
この年、横浜は春のセンバツ大会の優勝チームであり、史上5校目の春夏連覇がかかっていた。また、この両チームは春にも1度対戦しておりこの時は横浜が3-2で勝利している。一方でPL学園も甲子園大会への常連となる強豪校であり、大会屈指の好カードが準々決勝で実現した。PLが選抜での敗戦の雪辱を果たせるか、もしくは横浜が連勝するか、注目を集めていた。
[編集] 試合経過
先攻横浜、後攻PLで8時30分試合開始。
- 1回表、三者凡退。
- 裏、2アウトからフォアボールで出塁するも無得点
- 2回表、三者凡退
- 裏、先頭の大西のヒットと送りバントがフィルダースチョイスとなり1・2塁、バントで送った後犠牲フライで先制。(P 1-0 横)
- さらに松丸のタームリーツーベースで2点目。ボークで3塁に進んだ後、田中のタイムリーで3点目。その後井関のヒットで再び2塁に進むが3アウト。しかしこの回PL学園が3点を先制。この時、横浜ではブルペンが早くも動いていた(P 3-0 横)。
- 3回表、1アウト後フォアボールで出て送るが無得点。
- 裏、先頭がフォアボールで出て送るが無得点。
- 4回表、先頭の加藤のツーベースで出て、2アウト後小山の2ランホームランで横浜が2点返す。(P 3-2 横)
- 裏、1アウト後松丸、田中一、井関の連打でPL学園が1点追加。(P 4-2 横)
- 5回表、先頭の斎藤と佐藤の連打の後、松本の2点タイムリーで横浜が同点に追いつく。(P 4-4 横)
- さらにファーストゴロの間に3塁に進んだ後、サードゴロの間にホームを狙うもタッチアウト。ワイルドピッチで再び2塁に進むが逆転はならず。
- 裏、三者凡退。
- 6回表、先頭の小山がヒットで出るがバントがキャッチャーフライでダブルプレー、三者凡退。裏も三者凡退。
- 7回表、三者凡退。この回からPL学園は上重を登板。
- 裏、1アウト後フォアボールと大西のヒット、三垣のタイムリーでPL学園が勝ち越し。(P 5-4 横)
- 8回表、先頭の加藤がヒットで出て、2アウト後盗塁で2塁に進み、小山のタイムリーツーベースで横浜が同点に追いつく。この時、PLの捕手・石橋がイレギュラーバンドした球を顔面にクリーンヒットして仕舞い続行が不可能(P 5-5 横)。
- 裏、1アウト後デッドボールとヒットでランナーをためるが無得点。
- 9回表、三者凡退。
- 裏、先頭の古畑がフォアボールで出るが牽制で刺され、三者凡退、延長戦へ。
- 10回表、先頭の打球がショートのエラーとなり2塁を狙うが好返球でアウト、三者凡退。
- 裏、2アウトからフォアボールで出るが無得点。
- 11回表、先頭の松坂がヒットで出て送り、柴のタイムリーで横浜が勝ち越し、初めて横浜がリードする。(P 5-6 横)
- 裏、先頭の平石がヒットで出て送り、2アウトから大西のタイムリーでPL学園が同点に追いつく。(P 6-6 横)
- 12回表、三者凡退。裏も三者凡退。
- 13回表、1アウト後松坂、小山の連打でランナーをためるが後続が凡退。
- 裏、三者凡退。
- 14回表、先頭の佐藤がヒットで出て送るが、セカンドライナーで2塁ランナー佐藤が飛び出しダブルプレー。
- 裏、三者凡退。
- 15回表、先頭の加藤がデッドボールで出るが、バントがフライになり1塁ランナー加藤が飛び出しダブルプレー。松坂のヒットで再び出塁し、小山のツーベースで3塁まで進めるが無得点。
- 裏、好調松坂に4イニング連続の三者凡退。
- 16回表、先頭の常盤が出て送り、松本のヒット、小池の内野安打で満塁に。ショートゴロの間にホームイン、横浜が延長に入って2度目の勝ち越し。(P 6-7 横)
- 裏、先頭の田中一の内野安打で5イニングぶりに出塁して送り、ワイルドピッチで3塁に進む。
- ショートゴロの間にホームを狙い、バッター本橋のヘッドスライディングでバランスを崩した1塁手後藤のホームへの送球が逸れて田中(一)がホームイン。本橋はアウトとなるが得点は認められPL学園が再び同点。この段階で大会委員会では再試合を用意していたと言う(P 7-7 横)。
- 17回表、2アウトから本橋の悪送球で出塁し、常盤の値千金の2ランホームランで横浜が2点を勝ち越し。(P 7-9 横)
- 裏、三者凡退で試合終了。最後の打者田中(雅)を見逃しの三振に抑え松坂は17回、250球を1人で投げ切った。試合終了12時7分。
尚、この戦いは翌年の1999年の第81回大会直前企画としてオールナイトで改めて放送された。
また、NHKにおいてもこの試合の特集番組が組まれ、朝日文庫よりドキュメント文庫本が出版されている。
この試合でPL学園が松坂を攻略した要因として、松坂がスライダーを投げる時に捕手・小山が中腰になる癖を見抜いたから、と言われている。しかし、小山はこの癖に気づき、試合途中に改善した。[1]このように、技術面だけでなく戦略面においても非常にハイレベルな試合であったと言える。
事実、この試合の球審を担当した岡本良一氏は「いつもなら試合終了後、勝った学校の校歌演奏時にその試合でのプレイ風景が浮かぶが、あの時は全く浮かび上がらなかった。皆放心状態で審判をしていたのでしょう。」と述懐している。
試合終了後には、敗者であるはずのPL学園ナインに笑顔があり、勝った側の小山捕手が号泣する場面が見られた。
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
横浜 | 0 | 0 | 0 | 2 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 9 |
PL学園 | 0 | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 7 |
[横浜高校]
[PL学園]
[編集] その後の2試合(準決勝、決勝)
試合後、エース松坂大輔を擁する横浜は、翌日の準決勝を松坂を疲労回復のために、温存して戦わなければならなくなった(松坂自身が試合後のインタビューで「明日は投げません」と自らコメントしている)。松坂は前日250球を投げた右腕にテーピングをして、左翼手の守備につく。その松坂の代わりの投手は、二人の2年生(袴塚健次・斉藤弘樹)だったが、二人共に明徳義塾の強力打線につかまり、失点が続いた。投手を援護したかった横浜の打線も不発で、明徳のエース寺本四郎からは7イニング連続無得点。8回表終了時点で明徳6-0横浜のスコア、誰もが横浜の勝利を諦めかけていた。実際横浜の渡辺元智監督も、この時横浜ナインに対して「残り2イニングでひっくり返すのは難しいから、もう後は好きな様にやれ」と言う程であった。
しかしそこから横浜は、8回裏から明徳の内野手のエラーをきっかけに、怒濤の反撃を開始。後藤武敏と松坂がタイムリーを放つ。その後明徳のエース寺本から交替した高橋一正投手の暴投などでも得点を重ねて、この回一挙4点を奪う。スコアは明徳6-4横浜となり、6点差からわずか2点差に迫った。その後右腕のテーピングを剥がした松坂は、9回表に左翼手から投手としてマウンドに立ち、1イニングのみ登板。その明徳の打者に対しては合計3人15球で片付ける。そして9回裏、横浜は無死満塁の絶好機となり、そこから後藤が2点タイムリーを放って、ついに6-6の同点に追いついた。そして明徳の投手は、高橋から再びエースの寺本へと交替となる。
それから2死後の横浜は、打者・柴武志の内野へのフラフラと上がったボールが、明徳の内野手のグローブをかすめ、センター方向にグラウンドに転がって試合が決着。この回横浜は合計3得点を挙げて、起死回生の9回サヨナラ大逆転劇を経ての勝利となる。明徳義塾相手に大きく苦戦するも、そのまま横浜が決勝進出を果たした。まさかのサヨナラ負けとなった明徳ナインの、エース寺本を初めその場にうずくまり、暫く立ち上がれなかった選手達の姿が印象深い。
- 横浜 7x - 6 明徳義塾(準決勝)
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
明徳義塾 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 | 1 | 0 | 1 | 0 | 6 |
横浜 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 3x | 7 |
- [審判](球)清水(塁)吉川・榎田・生越
この大会最後の試合となった決勝戦でも、またまた高校野球の歴史に永遠に語り継がれるであろうもの凄い試合となった。なんとエースの松坂大輔が、海草中の嶋清一以来、59年振り史上2人目の決勝戦でのノーヒットノーランの快挙を達成、優勝を果たしたのである。又、全国制覇と同時に横浜は1987年のPL学園以来、11年ぶりに春夏連覇も達成となった。
横浜は4回ウラ、二年生の松本勉のソロ本塁打で先制。5回ウラと8回ウラにも1点ずつ追加、スコアは3-0だった。松坂を擁する横浜は、予選を含む公式戦41連勝で参加4102校の頂点に立ったのである。
対戦相手の京都成章が出た打者走者は、3つの四球と1つの三振振り逃げによるものだけであった。それでも横浜の強力打線を3点に抑えた京都成章のエース、古岡基紀の投球も印象深い。
- 横浜 3 - 0 京都成章(決勝)
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
京都成章 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
横浜 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 1 | X | 3 |
- [審判](球)岡本(塁)清水・吉川・濱田