のび太と竜の騎士
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『のび太と竜の騎士 』(のびたとりゅうのきし)は、月刊コロコロコミック1986年11月号から1987年3月号に掲載された「大長編ドラえもんシリーズ」の作品。および、この原作を元に1987年3月14日に公開された映画作品。大長編・映画ともにシリーズ第8作。地底世界を舞台に、恐竜人をモチーフにした作品。
映画版の監督は芝山努。配給収入15億円、観客動員数310万人。同時上映は『プロゴルファー猿 甲賀秘境!影の忍法ゴルファー参上!』と『オバケのQ太郎 進め!1/100大作戦』。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] 物語の舞台
恐竜と恐竜人が暮らす広大な地底の空洞世界。二十四時間周期でしぼむ「日光ゴケ」によって昼夜が存在する。恐竜から進化した恐竜人が首都エンリルを中心に祭政一致の高度な文明を築いており、空洞間の移動は次元転換船によって行われる。地底世界の片隅には、恐竜人から「聖域」と呼ばれる正方形の空間がある。
[編集] ゲストキャラ
- バンホー (声優:堀秀行)
- 勇敢で心優しい恐竜人の騎士。恐竜を御している時は兜をかぶっている。下洞穴で迷子になったスネ夫を救助する。悪人ではないが、任務上ドラえもんたちと対立する運びとなってしまう。最後には和解。
- ロー (声優:神代智恵)
- バンホーの妹。地帝国にいる間、のび太たちのガイドを引き受ける。
- 祭司長 (声優:大塚周夫)
- 恐竜人が崇める神の祭司長。巨大な次元転換船を建造し、ある計画を企てている。
- 軍団長 (声優:田中信夫)
- バンホーが所属する竜の騎士団を率いる長。
- 法王 (声優:巖金四郎)
[編集] あらすじ
恐竜が今でも生き残っていると言い張って、スネ夫達に笑い者にされたのび太は、ドラえもんの秘密道具「○×占い」でも「地球上に生き残っている恐竜はいない」と判定されてがっかりする。
ところが、多奈川で巨大な生物を発見したスネ夫は、それが恐竜ではないかという疑問にかられてすっかり動転しまい、挙げ句の果てにノイローゼになってしまう。一方、のび太は0点の答案を隠すために秘密道具の「どこでもホール」を使い、地底にある大空洞を発見する。のび太とドラえもんは、しずかちゃんやジャイアン、スネ夫と一緒に地底の大空洞を秘密の遊び場にするが、スネ夫だけが仲間からはぐれて地底に取り残されてしまう。
壊れた「どこでもホール」の代わりに多奈川の河底から再び地底に入り込んだのび太たちは、河童そっくりな地底の野蛮人ナンジャ族に捕まってしまう。あわや地底人の生贄にされそうになったところで、竜の騎士バンホーが彼らを救い出す。地上で滅亡した恐竜は地底で生き残り、トゥロオドン(旧名:ステノニコサウルス)から進化した恐竜人(ディノサウロイド)は高度な文明を築き上げていたのだ。バンホーの案内で、地底国の首都エンリルに保護されていたスネ夫と再会したのび太たちだったが、武装した竜の騎士たちが不穏な計画を立てている事を知る。
[編集] スタッフ
- 監督:芝山努
- 脚本:藤子・F・不二雄
- 演出助手:安藤敏彦、原恵一
- レイアウト:本多敏行
- 作画監督:富永貞義
- 美術設定:川本征平
- 美術監督:沼井信朗
- 色設計:野中幸子
- 撮影監督:斎藤秋男
- 特殊撮影:三沢勝治
- 編集:井上和夫、渡瀬祐子
- 録音監督:浦上靖夫
- 効果:柏原満
- 音楽:菊池俊輔
- 監修:楠部大吉郎
- 制作デスク:田中敦
- 制作担当:山田俊秀
- プロデューサー:別紙壮一、小泉美明、波多野正美
- 制作協力:藤子スタジオ、旭通信社
- 制作:シンエイ動画、小学館、テレビ朝日
[編集] 概要
物語序盤ではスネ夫が恐竜の存在を否定しようとする展開で進行し、大長編には珍しくスネ夫が話の中心になっている。 また、以前に「アフリカを衛星写真で調べたことがある」とのび太の大魔境の話の後に起こったことが示唆されている。
序盤でスネ夫が行方不明になるが、主要メンバーの1人が序盤で行方不明になり、残りのみんなが助けに行くことから冒険が始まるという展開はドラえもん映画では初であり、後の映画にも受け継がれている(『のび太のドラビアンナイト』のしずかちゃん、『のび太とブリキの迷宮』のドラえもんなど。なお、のび太は冒険途中で行方不明になることが多い。)。
地底人ローによる地底世界の案内の部分では22世紀の道具であるヒカリゴケの存在や、「聖域」と呼ばれる奇妙な正方形の地下スペースの謎などが伏線として張られ、最後にこれらの地底世界・地底人の起源がドラえもん達の活躍だと判明する筋書きは評価が高い。ただし前作『のび太と鉄人兵団』がシリーズ1・2を争う人気作であるためか、どちらかというと影の薄い作品でもある。
地底人による祖先の恐竜の大絶滅を阻止しようとする計画「大遠征」をのび太が知り、人類の祖先を滅ぼすのではという誤解から(恐竜の大絶滅を阻止したら哺乳人類は誕生できなくなるため充分な脅威であるという見解もあるが)地底人とは対立の様相を呈する。
恐竜の大絶滅の原因として当時主流の学説であり一般的知名度もあがりつつあった巨大隕石の衝突を取り入れている。また恐竜人類はカナダの学者が提唱した仮想未来生物であり、当時は日本での知名度はあまり高くなかった。地底人とは話し合いで和解をし、映画ドラえもんでは珍しく明確な敵というものが存在しない作品(一応、一部文献では前述の巨大隕石が敵と言うことになっているがこればかりはどうしようもない。ちなみに本作以外で明確な敵がいない作品はのび太の創世日記のみである)ではとしても知られる。
この作品以降の映画は、歴史を扱ったものが多い(『のび太のパラレル西遊記』『のび太の日本誕生』『のび太のドラビアンナイト』など)。
他の見所はママの説教の早回しと、当時人気のテレビ番組の企画「風雲!たけし城」をモチーフにした風雲ドラえもん城であろう。大長編ドラえもんでこれほどハッキリとしたテレビパロディはあまり見られない。
なお、大長編原作では最後に「タイムパラドックス」を扱った作品でもある。以後の作品では過去に行くことや宇宙に行くことはあっても、時間改変によってストーリーに重要な意味を成すといった作品は作られなくなった。
[編集] 原作と映画の相違点
原作では「どこでもホール」が神成さんに壊されるという設定だが、映画では子供たちが転がした「どこでもホール」がトラックに轢かれて壊されるという設定になっている。
のび太が地底世界の天井に頭をぶつけた時に付いた「日光ゴケ」を、ドラえもんが不思議がるという、地底世界誕生に関する重要な伏線は、映画版では丸々とカットされている。(伏線としては露骨すぎるのでカットされたという説もある)
[編集] 主題歌
「友達だから」(作詞:武田鉄矢/作曲:山木康世/唄:大山のぶ代、森の木児童合唱団)