イーグル (漫画)
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『イーグル』はかわぐちかいじの漫画作品。1998年から2001年までビッグコミックで連載された。単行本は全11巻。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] 概要
アメリカ大統領選挙での初の日系人大統領候補と彼を取材に来た新聞記者との出会いや選挙活動のリアリティー、そして記者の出生の秘密などを描く。
[編集] あらすじ
沖縄出身の新聞記者・城鷹志は母の富子を事故で亡くし、天涯孤独で悲しみにくれながらもワシントンD.C.への異動を命じられる。アメリカ大統領選挙における候補者の一人、日系アメリカ人ケネス・ヤマオカ民主党上院議員の取材に当たるのだが、そこでケネスから城の父親が彼自身であることが伝えられる。ケネスは様々な政策を掲げたりあらゆる手段を用いたりしてアメリカ中の注目を集め、大統領選挙を勝ち進んでいく……。
[編集] 登場人物
[編集] ケネス陣営
- 城鷹志(じょう たかし)
- 本編の主人公。沖縄出身の毎朝新聞記者。母子家庭で育ち、母を亡くしてから天涯孤独の身に。やがてワシントンへの人事異動を命じられ、大統領選挙でケネスの密着取材に当たる。選挙後に、ケネス候補の密着取材における本を書くことになっている。
- ケネス・ヤマオカ
- 本編の主人公。アメリカの次期大統領候補者で日系三世の民主党上院議員(ニューヨーク州選出)。シアトル出身。イェール大学卒業。ベトナム戦争で死んだ兄・ジョセフの為、自らも海兵隊に志願兵で入隊し、ベトナムに出撃した。その前に本土復帰を控えた沖縄で城富子と出会い、恋に落ちたことがあった。選挙で銃規制や人種差別撤廃及び本土防衛目的以外の戦争禁止とそれによる全ての海外駐留基地からの軍の撤退及び国連軍の増強などを主張。日本から取材にやって来た鷹志にお前の父親だと名乗る。
- アーサー・マッコイ
- ケネスの大統領選挙対策本部長。ベトナム戦争の頃は衛生兵としてヘリコプターを用いての負傷兵の治療・後送、通称ダスト・オフに当たっていた所を瀕死の重傷を負ったケネスと出会う。そしてケネスからハッキリとは聞こえなかったものの、富子への伝言らしきものを耳にした。終戦後は陸軍を除隊してベトナム帰還兵におちぶれて職を転々としながらヤケ酒を煽った挙句、妻子に逃げられる始末だったが、弁護士として活躍していたケネスと再会し、やがて政界入りしたケネスの右腕として活躍するようになる。
- ジョージ・タクト
- 全米一の選挙コンサルタント。選挙においてケネスの有力な人物となる。元々は共和党専門の選挙コンサルタントだったが、ケネスとノアの教育政策をめぐる討論を見て、ケネスの当選を確信して陣営に入る。ケネスの政策や手腕を目の当たりにして、「奴さんが俺の商売敵でなくてよかった」と、アーサーとは違った方向から賞賛した。
- ジョン
- ケネスの大統領選挙対策本部スタッフ。スケジュール管理を担当。予備選序盤では昼食会のダブルブッキングという失態を犯すが、それ以降は順調に仕事を進めている。ニューヨーク州予備選でケネスが初の得票率トップに輝いた時は、パーティーの席で出席者一同を前に発表した。
- サラ
- ケネスの大統領選挙対策本部スタッフ。コーディネーターを務めており、彼女曰く「ケネスにどんな服が合うか、パトリシアより詳しい」とのこと。ケネスや鷹志に対して1人の男性として好意をもっているが、当の2人がそれぞれ意中の女性がいるので傍観者止まり。ただし、鷹志とレイチェルの恋については背中を押す言動をした。
- ロベルト・デュラン
- ケネスの大統領選挙対策本部スタッフ。カナダのケベック出身。情報調査を担当しており、対立候補ゴールドブラムのスキャンダル疑惑や、ユーイング総労組におけるコズリョフとザマルの対立について調べ上げた。終盤においてある陰謀に関わっていることが明らかになる。
[編集] ケネスの家族
- パトリシア・ハンプトン・ヤマオカ
- 大富豪・ハンプトン家の長女でケネスの妻。弁護士でニューヨークに法律事務所を構えている。ケネスとの間に息子のアレックスを儲け、レイチェルを養女として育てている。鷹志がケネスの隠し子であることを知っており、亡き富子に激しく嫉妬する。当初はケネスがアレックスを差し置いて鷹志を後継者にするのではと感じていたが、鷹志とレイチェルの恋、アレックスとの友情を目撃して以降次第に鷹志が何らかの思惑で近づいて来たと思うようになった。鷹志を一方的に事を問い詰めた末に手切れ金を渡して遠ざけようとするも、ケネスからの説明を受け誤解は解ける。最終的には今までMr.ジョウと呼んでいた鷹志に「タカシと呼んでもいいかしら?」と尋ね、和解した。
- レイチェル・ヤマオカ
- ケネスとパトリシアの養女でマリアの実子。ヒスパニック。大統領選挙で養父・ケネスの選挙プレスを担当。ワシントン支局への異動で渡米してきた鷹志と出会い、義兄であることは知らず、恋に落ちる。キューバ系の血を引く自分の境遇をケネスとパトリシアから教えられて育ったためか、精神的に力強い反面メキシコなどから来るヒスパニック層の現状に対して複雑な思いを抱いている。
- アレックス・ヤマオカ
- ケネスとパトリシアの息子。ハーバード大学に在学中。政治的野心を持つ父・ケネスにコンプレックスを抱いている。鷹志とは異母兄弟であることを知らず、彼を友人として意気投合。これを機に人間的な成長を見せた。
- ジョセフ・ヤマオカ
- ケネスの兄。秀才でケネスに尊敬される程人望が厚かった。ケネスと同じイェール大学を卒業したがその後にアメリカ陸軍からベトナム戦争に徴兵されて敢え無く戦死する。壮行会では高校時代の友人達や地元シアトル日系人社会からも多くの人々が集まったが、その時ケネスにのみベトナム出征に悩んでいた本心を打ち明けた。と、同時に弟・ケネスの成長を実感した。
- エリザベス・マクラウド
- ケネスの姉。ジョセフの戦死で反対する家族の中で唯一、不本意ながらもケネスのベトナム出征を許した人物。彼に絶対生還してくるよう約束していた。ケネスが重傷を負ったときは家族を代表して赴き、そこでケネスが「自分の力で」一命を取り留める場面に直面した。現在はニューヨークのブルックリンに在住しており、取材に訪れた鷹志にケネスとジョセフの話をした。
- チャールズ・ハンプトン
- ファースト・アメリカン・バンク頭取。ウィリアムの長男でパトリシアの兄。ケネスとは大学時代からの親友でもあり、パトリシアとケネスが出会うきっかけを作った人物でもある。負けず嫌いな性格だが、大学時代では珍しく家族に対して、ケネスのことをすごい奴だと語っていた。
- ウィリアム・ハンプトン
- ファースト・アメリカン・バンク会長。パトリシアとチャールズの父。チャールズが「大統領にだってなれる男」と評したケネスとバルコニーで一対一で語らい、パトリシアとの結婚を認めた。
- ウィリアム・ハンプトン一世
- ボストンに移民として第一歩を記したハンプトン家の始祖。ファースト・アメリカン・バンクの創業者でもある。その偉大さからボストンのハンプトン邸には彼の肖像画が飾られている。レイチェルは養女という出生のためか、この肖像画を見るときだけはハンプトン家に違和感を感じてしまうと鷹志に語った。
- ジョージ・ヤマオカ
- ヤマオカ家の大黒柱でケネスを含む二男二女の父。アレックスとレイチェル、そして鷹志の祖父に当たる。日系移民1世の父の苦労を見てきたからか、移民2世が遊んでいたら申し訳ないと定年後も精力的に活動している。家族と日系移民としての誇りを大事にする男。
- キャサリン・ヤマオカ
- ジョージの夫でケネスを含む二男二女の母。アレックスとレイチェル、そして鷹志の祖母に当たる。
- 山岡重吉
- 広島からシアトルに移民してきた日系移民1世。ケネスとエリザベスと死んだジョセフの祖父でジョージの父。エリザベスは取材に訪れた鷹志に祖父が広島出身であると話し、鷹志はシアトルにて重吉以来3代続くヤマオカ家の歴史が染み込んだ家に感動した。
[編集] ノア陣営
- アルバート・ノア
- 現職アメリカ合衆国副大統領。愛称はアル。ケネスと同じく次期大統領候補者で民主党大統領候補をめぐり、ケネスと予備選挙で激戦を繰り広げる。が、ケネスから副大統領候補を任せられる。モデルはビル・クリントン政権下で副大統領を務めたアル・ゴア。
- アンドリュー・ウォルシュ
- 副大統領主席補佐官。通称アンディ。ノア陣営のNo.2として彼を支える。ノアがケネスが自分を副大統領に望んでいることを察したとき、そのことを最初に打ち明けられた。ノアがケネス陣営の副大統領候補となってからは、引き続きノアを支えた。
- ディヴィッド・ローゼンバーグ
- 副大統領経済担当補佐官。アンディとは良き相棒の関係。ノアが予備選で苦戦を強いられたときに、マリアのスキャンダル情報を仕入れ、ノアの許可を受けて公表した。その後、失敗に終わった責任から自殺を試みるが、アンディに説得されて思いとどまった。
[編集] 南部諸州選挙
- ドン・テイラー
- テキサス・フーズ・カンパニー会長。テキサス州で大牧場を経営し、南部を中心に強い影響力を持つ。ケネスと同い年でテキサス大時代はフットボールのクォーターバックというポジションと、共通点を抱えている。一番の共通点はケネスがベトナムにて重傷を負ったのと同じく、少年時代に本人曰く「死に損なった」ということ。大牧場の御曹司として育てられた境遇への反発から、学校の授業で出たテキサスの南にあるメキシコとの国境線に興味を持ち、生まれて初めての本格的な家出を実行。荒野を南へとひたすら歩き続けたが3日目に持参した水も食料も底をついてしまう。しかしテイラーは、心躍るメキシコへの旅の果てに不思議といい気分であり、結局は父親の手配した捜索隊に救助された。
- サム
- テイラー牧場の牧童。かつては札付きの不良だったが、テイラーに一人前の牧童に育ててもらったことから彼を慕っている。ケネスがスター・カフェに現れた当初は銃規制を訴えるケネスに他の牧童同様反感を抱くも、次第にケネス支持に傾いていく。
- ウィリス
- U.S.グレイン社社長。愛称はウィリー。穀物生産者組合の実力者で、テイラーのビジネスパートナー。南部諸州同日選挙を前に民主党候補の誰を支持するかが定まらず不安になるも、最終的にはテイラーの意見を受け組合票をケネス支持一本にまとめた。
- ビル・ゴールドブラム
- 民主党ネバダ州知事。ネバダ州やテキサス州の民主党支持者を得票源としており、民主党大統領予備選序盤では支持率2位だったが、ケネスの仕掛けたスキャンダルによって危機管理能力の無さが露呈して支持率が急落する。その後、南部諸州同日選挙を目前にケネス支持を表明して選挙から離脱した。
[編集] その他
- ギルバート・ブラックバーン
- ニューヨーク市長。あらゆる民族との太いパイプを持っている。二期目の市長選当時にブロンクスの土地再開発計画をめぐる行政訴訟で弁護士だったケネスと争い、敗訴した。それ以降確執があるものの、ケネスが上院選に立候補した際は、妥協して選挙協力をしている。
- リチャード・グラント
- コロラド州出身の上院議員で共和党大統領候補。元空軍のエース・パイロットでアポロ計画においてアポロ15号で月に降り立ったこともあるアメリカの国民的英雄。航空及び宇宙産業や軍部、退役軍人団体とは太いパイプを持っており、「強いアメリカ」を主張してケネスと対立する。モデルは元宇宙飛行士で政治家のジョン・グレン、元大統領リチャード・ニクソンであると思われる。
- ビル・クライトン
- 現職アメリカ合衆国大統領。ヤマオカと話し合い、女房を副大統領候補に承諾させる。モデルはビル・クリントンと思われる。
- エラリー・クライトン
- ビルの妻。政治的野心が強く、ヤマオカや夫の計らいで副大統領候補者を目指した。しかし、最終的に副大統領候補から外される。パトリシアとは大学の同級生。モデルは元ファーストレディーのヒラリー・クリントンと思われる。
- マリア・ステファーノ
- レイチェルの実母。キューバ難民でノア陣営に引き取られたことで彼らにケネスの政治スキャンダルの手駒として利用され、レイチェルがケネスの隠し子ではないかと疑われるが、鷹志の尽力もあって疑惑を晴らす。ケネスに対して生まれて初めての燃えるような恋を抱いていた。
- ウォルター・クロンダイク
- シカゴ・トリビューン紙の名コラムニスト。マリアのスキャンダルを暴いた鷹志を賞賛し、ケネスそしてアメリカが行き着く先を語り合った。また、「クロンダイク・アワー」という対談番組を有しており、グラントとの対談を行った。
- ビリー・グラハム
- 民主党上院院内総務。選対委員長としてシカゴの党大会の議長役を勤める。ケネスが大規模軍縮を公約した後、党内右派の反発を憂慮して撤回を迫るも、ケネスの理想と信念を悟ったノアからの説得を受け認めた。
- ゲイリー・ケリガン
- PKF最高顧問。アメリカ海兵隊少将のち中将。政治家を嫌い、ベトナム戦争時のケネスの上官であった。ベトナム戦時の階級は中尉で、中隊長。ケネスから国家安全保障担当大統領補佐官のポストを引き受けるよう依頼され、またグラントからも第12海兵師団長のポストの後任を依頼される。最終的にはヤマオカ支持を表明する。
- マイケル・コズリョフ
- 航空産業ユーイング社労働組合委員長。ポーランド系移民の共和党支持者。父親が障害を持っているため少年時代から労働に従事しており、アメリカ労働総同盟代表になることを夢見ている。こうした出自から富裕層の家系に生まれたケネスのことを嫌っていた。精力的に組合員のために活動しているため、組合員からの信頼は厚い。労働紛争で会社の経営陣と裏取引したためにそのネタを理由に脅迫される。更に背任罪を犯したザマルの失脚により、自らも裏取引のことを打ち明けて組合員らに謝罪し退陣するが、組合員らの強い要望もあって復帰を遂げる。
- アブドラ・ザマル
- 航空産業ユーイング社労働組合副委員長。トルコ移民でコズリョフと同じ共和党支持者。会社のトップと裏で通じているネズミで労働組合の情報を逐一経営陣に報告していたようである。背任罪で警察に逮捕される。
- クルーニー
- ケネスの護衛責任者を務める刑事。階級は警部。南部ミズーリ州出身。人種差別が根強い州に生まれたため、人種差別そのものには否定的だが、これが原因で親友と小さな田舎町の警察署長だった父を失った苦い過去を持つため人種差別の根絶は不可能と諦めている。だが、ケネスの姿勢を見て考えを改めた。ケネスが狙撃された際は身を呈して守り、その後責任をとって辞任しようとするも、ケネスに留保された。
- ダニエル・ニコルズ
- フリーの政治記者。ケネスと鷹志の親子関係を見抜き、鷹志に接触を図る。記者としての取材能力は一流だが、名声を得る機会を得られず、一流記者の資料集め要員という境遇だった。鷹志とケネスが彼を報道官としてホワイトハウスに迎える懐柔案で合意した直後、ガス中毒で事故死する。
[編集] その他 (日本)
- 城富子(じょう とみこ)
- 鷹志の母。沖縄で小料理屋を一人で切り盛りしながら息子の鷹志を女手一つで育て上げたが、鷹志の渡米直前にガス漏れによる一酸化炭素中毒で他界する。生前中、本土復帰直前の頃に一人の米海兵隊員と恋に落ちて彼の子(鷹志)を宿し、また鷹志に父親のことについては余り語ろうとはしなかった。
- 自宅の茶箪笥の上に米海兵隊員と写した写真を飾っていたが、事件後姿を消してしまう。この写真が、鷹志に富子の死に対する疑惑のきっかけになる。
- 具志川(ぐしかわ)
- 沖縄県警金武警察署の刑事。城富子の事故死を息子の鷹志に知らせた人物。鷹志の依頼で富子の死の真相を調べる。
- 渡嘉敷ノブ(とかしき のぶ)
- 鷹志の実家である小料理屋「とみ子」の隣人。富子・鷹志母子と古くから親交があった。富子の遺体の第一発見者。
- 野々村(ののむら)
- 毎朝新聞ワシントン総支局の記者。鷹志のアメリカにおける先輩。
[編集] 関連項目
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