ウイングガンダムゼロ
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ウイングガンダムゼロ(Wing Gundam Zero)は、アニメ『新機動戦記ガンダムW』シリーズに登場する架空の兵器(モビルスーツ・略称MS)。(型式番号:WWWXG-00W0)通称ウイングゼロ。
なお、本項では大河原邦男デザインのテレビ版、カトキハジメデザインのEndless Waltz(エンドレスワルツ、EW)版の両方、及び外伝作品に登場する各バリエーション機の概要も記述する。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] テレビ版
ウイングガンダムゼロ | |
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型式番号 | XXXG-00W0 |
設計者 | ハワードを含む6人の科学者グループ |
建造者 | カトル・ラバーバ・ウィナー |
生産形態 | 試作機 |
全高 | 16.7m |
本体重量 | 8.0t |
装甲 | ガンダニュウム合金 |
武装 | ツインバスターライフル ビームサーベル×2 マシンキャノン×2 ウイングバルカン×2 シールド |
アビリティレベル | ファイティングアビリティ:レベル150 ウエポンズアビリティ:レベル150 スピードアビリティ:レベル160 パワーアビリティ:レベル140 アーマードアビリティ:レベル140 ※リーオーをオールレベル100として換算 |
主な搭乗者 | ヒイロ・ユイ カトル・ラバーバ・ウィナー ミリアルド・ピースクラフト(ゼクス・マーキス) 張 五飛 デュオ・マックスウェル トロワ・バートン トラント・クラーク |
[編集] 機体解説
アフターコロニー(A.C.)暦におけるMSの黎明期において、当時トールギスの開発スタッフであった6人の科学者がコストや兵器としての実用性を度外視し、高性能のみを追求し設計した機体。しかし、彼等が所属していた地球圏統一連合が軍事力により全世界を統一する動きを見せた為、開発途上で科学者達は設計図を持って逃亡。そして約15年後のA.C.195年、スタッフの1人ハワード博士を除く5人の科学者達が、オペレーション・メテオの切り札として各々開発した5機のガンダムの原型となった。
元設計こそ15年以上前の機体だが、ガンダニュウム合金を本格的に採用した初のMSであり、基本性能は当時、最強のMSと謳われたトールギスを凌ぐ。更にネオバード形態と呼ばれる高速移動形態への変形も可能であり、機体自体の性能の高さと、制御系に組み込まれたゼロシステム(後述)の危険性もあって、設計した科学者達でさえも完成させる事を躊躇した機体であった。以上の事から、本機はA.C.暦において最強の機体であると言える。
[編集] ゼロシステム
ゼロシステム(Z.E.R.O. System)とは、「Zoning and Emotional Range Omitted System」(直訳すると「領域化及び情動域欠落化装置」)の略。
ゼロシステムはシステムが分析、予測した状況の推移に応じた対処法の選択や結末を搭乗者の脳に直接伝達する。単純に言えば、勝利する為に取るべき行動を予めパイロットに見せるのである。
その予測とは、基本的に戦術的な勝利を目的とし、その為であれば搭乗者の死傷すら問わない。つまり、搭乗者の事情、感情などお構い無く、勝利の為の行動を優先するのである。更にこのシステムはコクピット内に高性能フィードバック機能を備えた機器を搭載、脳内の各生体作用をスキャンし、脳そのものに刺激を与える(パイロットの能力を強化する)事も出来る。そして脳内の活動状況から搭乗者のコンディションを読み、MSの機動や運動によって発生する衝撃や加重等の刺激情報の伝達を緩和、或いは欺瞞し、本来人間の限界を超えた高G環境下での機体制御を可能とする。
またこのシステムは、分析、予測の結果に基づいた行動をパイロットに強制させようとする。状況によってはパイロットの死亡や機体の自爆、友軍を巻き添えにする攻撃の実行等、パイロットに非人間的な選択を強要する場合もあり、パイロットにはシステムから与えられる膨大な情報に耐え、望ましくない結果に繋がる行動を拒否するだけの強靭な精神力が求められた。当然パイロットがシステムに言われるまま暴走する危険性をも孕んでおり、事実、この機体を復活させたカトル・ラバーバ・ウィナーですらシステムによって自身の抱えていた悲しみを増幅され暴走してしまった。その危険性故に、博士達はこの機体を封印していたのである。5人のガンダムパイロットやゼクス・マーキス等がこのシステムを体験したが、結局最後までこれで戦い抜いたのはヒイロ・ユイのみである。
[編集] ネオバード形態
鳥を彷彿とさせる高速移動形態。シルエット、変形方法は本機の派生機の1つウイングガンダムに類似するが、主に大気圏内での運用を前提としていたウイングガンダムと異なり、複数のスラスターを備えた宇宙戦重視の仕様となっている。しかしその高推力は大気圏内においても充分有効であり、無重力空間と変わらぬ機動性、航続能力を誇る。
[編集] 武装
- ツインバスターライフル
- 2挺のバスターライフルを平行連結した連装型ビーム兵器。その威力はウイングガンダムのバスターライフルと比較して倍以上。建造物を破壊する最大出力モードと、2挺に分割し高機動戦闘に対応した連射モードとがあり、複数方向への同時攻撃を可能とする。ウイングガンダムのバスターライフルは銃自体に設置された3基のカートリッジよりエネルギードライブを行う方式であった為、発射回数が僅か3発のみに制限されていたが、ゼロの場合は機体ジェネレーターから直接ドライブを行う方式である為、安定した連続使用が可能である。
- ビームサーベル
- ショルダーアーマー内にマウントされた斬撃武装。デバイスのサイズ自体は一般の量産機のものと変わらないが、より高出力のビーム刃を形成可能。
- A.C.世界のガンダムに装備されたビームサーベル系武装の発光色は基本的にグリーンで統一されており、OZ等その他の機体は概ねピンクに統一されている。
- マシンキャノン
- 両肩に内蔵された4銃身式機関砲。ウイングガンダムの装備と異なり、発砲時は肩部装甲自体が180度回転展開し銃身が露出する。基本的に牽制や近接防御が主用途だが、ガンダムタイプ以外の機体であれば充分破壊可能な威力を持つ。
- ウイングバルカン
- 左右ウイングに装備された機関砲。主にネオバード形態時の機銃として用いられる。
- シールド
- ガンダニュウムの塊と言える対ビームコーティング仕様の防御兵装。デザインは本機を参考に開発されたウイングガンダムに類似し、同じくネオバード形態時の機首を兼ねる。その際、ツインバスターライフルは分割状態で両側面にマウントされる。先端部は伸縮構造となっており、敵への打突攻撃の他、機体冷却用の放熱装置としても機能する。
[編集] 劇中での活躍
開発が中断されて以降、建造はされていなかったが、カトル・ラバーバ・ウィナーが父親の死を目の当たりにして、家族を死に追いやったコロニーの人々と、宇宙に存在する武器を憎悪し、H教授の残していた設計図を元にウィナー家の資産で建造した。しかし、カトルはゼロシステムに取り込まれてしまい、トロワ・バートンのヴァイエイトを破壊してしまう。その結果ようやくゼロから解放されたカトルは月面基地においてメリクリウスの自爆装置を作動させ、この機体を消滅させようとしたが結果的に失敗に終わった。
その後OZのトラント特尉が本機を回収し、その性能に魅了されて実験を繰り返したが、ゼロシステムの負荷に耐え切れず自滅。宇宙空間に放置されている所を、OZによって爆破処理されようとしたが、ゼクス・マーキスの手に渡る。最終的にはサンクキングダムでのガンダムエピオンとの対決の後にヒイロに手渡され、彼が最後まで搭乗し続けた。地球軌道上におけるエピオンとの最終決戦で激闘の末に勝利。そして地球へ落下するリーブラの破片を最大威力で狙撃し、これを破壊している。尚、漫画版ではエピオンを含む6機のガンダムでリーブラを破壊している。
[編集] Endless Waltz版
OVA『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』を描く際にカトキハジメによってデザインリファインされた機体。(テレビシリーズ本編のガンダムと同一の機体であるという設定である為、劇中での名称は同じ)。
ウイングガンダムゼロ(EndlessWaltz版) 別名:ウイングガンダムゼロカスタム |
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型式番号 | XXXG-00W0 |
設計者 | ハワードを含む 6人の科学者グループ |
建造者 | カトル・ラバーバ・ウィナー |
生産形態 | 試作機 |
全高 | 16.7m |
本体重量 | 8.0t |
装甲 | ガンダニュウム合金 |
ジェネレータ出力 | 3,732kw |
スラスター総推力 | 88,150kg |
武装 | ツインバスターライフル ビームサーベル×2 マシンキャノン×2 |
主な搭乗者 | ヒイロ・ユイ |
[編集] 機体解説
ウイングガンダムゼロ(XXXG-00W0)と呼ばれるこの機体は、背中に装備された4枚の翼が最大の特徴である。(劇中では起動するシーンにて、羽根を散らすかの様なイメージも描かれている)。ウイングガンダムゼロカスタムと呼ばれる事もある。
この4枚の翼は本体同様ガンダニュウム合金で製造されており、2枚ずつ2対からなる。1対は自在に開閉・移動が出来る可動式の主翼2枚。もう1対は翼自体の面積が可変する副翼2枚で構成されており推進・姿勢制御用スラスターとして特化された機能を持つ(普段は背部に折り畳まれている)。この主翼は地上では文字通り翼としての機能し、また宇宙空間ではAMBAC作動肢としての機能を持ち、トールギスを超える凄まじい運動性と機動性を与えている。
[編集] 大気圏突入形態
大気圏突入時は主翼を機体前面を覆い摩擦熱から保護する。その際の姿は翼を畳んだ鳥を思わせる。また主翼を2枚喪失したとしても、飛翔能力を失う事は無い。 尚、TV版には無かった「ゼロフレーム」と呼ばれる機体フレームの存在が新たに設定されており、ネオバード形態への変形機構もオミットされている。また惑星間航行用ブースターを装着する事も可能で、作品中では回収した本機を逸早くヒイロの元に届ける手段として、カトルがヒイロの指示により使用している。
[編集] 武装
- ツインバスターライフル
- テレビ版と同等の武装だが、より巨大で武骨なデザインとなった。不使用時は分割した状態で両副翼にマウントされる。
- ビームサーベル
- EW版では格納箇所が副翼アーム内部に変更されている。
- マシンキャノン
- テレビ版と基本的に同様の装備であるが、カバーの色、展開方法が異なる。
- EW版のゼロはウイング以外はウイングガンダム(アーリータイプ)と同一形状である為、基本的には同じ武装(性能的な差異は不明)。
[編集] 劇中での活躍
マリーメイア軍の蜂起に対抗する為、太陽に向けて廃棄されつつあった本機を宇宙空間で受け取ったヒイロは、アルトロンガンダムと交戦しながら地球に降下。一度海中に沈むも、マリーメイア軍司令部があるブリュッセル大統領府をツインバスターライフルで3発連続攻撃し、対核シェルターを崩壊させた。しかしこの際に精密射撃の体勢を取っていた為に、回避行動を取れない本機はサーペントの集中砲火を浴びる事となる。それに加え宇宙でのアルトロンとの交戦で機体各所が損傷していた為、ツインバスターライフル発射の反動に耐え切れず、各部が爆発し墜落、大破している。
『新機動戦記ガンダムW BATTLEFIELD OF PACIFIST』にも登場し、ビクター・ゲインツの搭乗するスコーピオを撃墜した。
『新機動戦記ガンダムW EPISODE ZERO』収録の後日談『PREVENTER・5』では、作業用MSをハリボテで見かけだけはそっくりに似せたウイングガンダムゼロが登場する。
また3DCGによる短編集『GUNDAM EVOLVE../7』では、地球軌道上に建造されたコロニーキャノンを破壊するために潜入したヒイロの前に極秘裏に修復されたウイングガンダムゼロが現れた。デザインはエンドレスワルツ版を踏襲しているが、CGモデルにはガンプラ・マスターグレード版の製作に用いられたCADデータが流用された。
[編集] 機体名について
OVA発売と同時期に販売されたプラモデルや、2000年発売のパーフェクトグレード版ガンプラ等では「ウイングガンダムゼロカスタム」という名称で販売されている。これは商品名を変える事によって混乱を避ける為の策であったが、設定を知らない人達に逆に混乱を招く結果となってしまった。2004年に発売されたマスターグレード版では「ウイングガンダムゼロ(エンドレスワルツ版)」という商品名に変更され販売されている。同様に、劇場版のパンフレット等において初期の5機のガンダムのリファインデザインがカトキハジメによって描かれ「アーリータイプ」と呼ばれたが、後に商品化された際に「Ver.Ka」とも呼ばれるようになっている。
スーパーロボット大戦シリーズでは、『第2次α』までは「カスタム」と付いていたが、『第3次α』からは「ウイングガンダムゼロ」と表記されている。SDガンダム GGENERATIONシリーズでは、2005年5月に発売された『DS』ではゲーム中では「Wゼロ (EW)」となっていたが、公式サイトでは「カスタム」のまま[1]、2006年8月に発売された『PORTABLE』ではゲーム中でも「カスタム」のままである[2]。
[編集] バリエーション機
[編集] ウイングガンダムセラフィム
実業之日本社から刊行された『新機動戦記ガンダムWエンドレスワルツ最強プレイングブック』内の『新機動戦記ガンダムW ~ティエルの衝動~』に登場する機体。
OZに回収されたウイングゼロのデータを元に、「ウイングガンダムゼロの量産機」を前提として開発された戦闘攻撃MS。ウイングが合計4枚である。サブウイングはそのまま背中に装備されているが、大気圏突入用のウイングが、サイドアーマーへの収納式となっているのが特徴。また、一般兵士が扱える様改良が施されたゼロシステム、通称「ゼロシステムVer.2.5」を搭載。コスト面等も考慮してバスターライフルは1挺のみとなっているが、それでも他の量産機を超える攻撃力と機動性を誇る。ティエル・ノンブルーが搭乗する。
[編集] ガンダムルシフェル
実業之日本社刊行の『新機動戦記ガンダムWエンドレスワルツ最強プレイングブック』内の『新機動戦記ガンダムW ~ティエルの衝動~』に登場する機体。
ウイングガンダムセラフィム量産直前に、ゼロシステムの試験機として建造されたMSで、言わば「セラフィムの量産試作機」を前提とした機体。セラフィム設計に当たって試作実験機として建造された機体。 ウイングが合計4枚である。外見上はゼロカスタムのサブウイングがメインウイングと同形状になったもので、 戦闘目的の機体ではない為、一切の武装を持たない。しかし、この試験機に搭載されているゼロシステムver2.0はパイロットの目的に対して出した解答を、強制的に精神へフィードバックしてしまう危険な欠陥プログラムで、本機のテストパイロットだったティエルの兄カールは「地球に平和をもたらすには?」という疑問を発した為に、「人類の殲滅」という解答を導き出され、暴走を引き起こしてしまう。試作実験機の為か、全体のカラーリングが灰色と地味。
[編集] ガンダムルシフェルカスタム
実業之日本社刊行の『新機動戦記ガンダムWエンドレスワルツ最強プレイングブック』内の『新機動戦記ガンダムW ~ティエルの衝動~』に登場する機体。
ウイングガンダムセラフィム量産直前に、ゼロシステムの試験機として建造されたMSを改修した機体。ウイングが合計12枚である。発見された時には多くの装甲が剥がれていた。食料と必要最低限の生命維持装置のみが機動していて推進剤も切れていていた。ティエルの兄カール・ノンブルーが搭乗する。
[編集] 関連項目
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