オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート
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オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート | |
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艦級概観 | |
艦種 | フリゲート |
艦名 | 海軍功労者。一番艦はオリバー・ハザード・ペリーに因む |
前級 | ブルーク級ミサイルフリゲート |
次級 | フリーダム級沿海域戦闘艦 |
性能諸元 | |
排水量 | 満載:3,605t、LAMPS III対応型:4,100t |
全長 | 135.6m、LAMPS III対応型:138.1m、124.4m |
全幅 | 14.4m |
吃水 | 4.4m |
機関 | GE社製LM2500ガスタービンエンジン 2基 1軸推進 COGAG方式、41,000hp |
最大速力 | 29kt+ |
航続距離 | |
乗員 | 215名(士官17名) |
探索装置 | SPS-49 対空レーダー SPS-55 対水上レーダー ELQ-32 ESM SQS-56 ハルソナー SQR-19 曳航ソナー (TACTAS) |
武装 | ・Mk 13 単装ミサイル発射装置 1基(スタンダードミサイル/ハープーン用) ・Mk 75 3インチ62口径単装速射砲 1門 ・Mk 32 3連装単魚雷発射管 2基 ・Mk 15 ファランクスCIWS 1基 |
射撃管制装置 | SPG-60 射撃指揮装置 1基 Mk 92 射撃指揮装置 1基 |
航空機 | SH-2F 対潜哨戒ヘリコプター2機 (FFG 9-19, 30, 31) SH-60B 対潜哨戒ヘリコプター2機 (FFG 8, 28, 29, 32, 33, 36-61) |
オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート (Oliver Hazard Perry Class) はアメリカ海軍などが保有するミサイルフリゲート。アメリカ海軍では1977年から1989年にかけて51隻が就役した。ちなみにオリバー・ハザード・ペリーはマシュー・ペリーの兄。
目次 |
[編集] 概要
1960年代アメリカ海軍は従来までの駆逐艦やフリゲートを代替するには高性能艦だけでは予算の問題から不可能と考え、高性能艦を製造すると同時に性能を押さえた安価な艦も製造し、必要な数を補うハイ・ロー・ミックス (High Low Mix) という構想を考えだした。このハイ・ロー・ミックスでいうハイに当たる艦がスプルーアンス級駆逐艦で、ペリー級はローにあたる。前述の通り数が重要な艦であったため、コスト削減を最優先に設計が開始された。防空ミサイルを装備する多くの艦が三次元レーダーを装備しているのに対し、二次元のSPS-49のみとなっているのも、コストを極力抑えたためである。
それと同時に開発におけるリスクをなるべく少なくするため、1番艦と2番艦の建造間隔を2年開け、2番艦以降は1番艦の製造が終わり様々な問題点や改善点を把握した上で建造が行えるようにされた。また各造船所における能力の違いを考慮し、基本的な設計は指定するも、ある程度自由な設計も行えるよう配慮がされた。2番艦以降の建造はハイペースで行われ約12年で51隻が就役した。
ペリー級は小型である割に艦隊防空ミサイルを装備し、対潜ヘリを2機搭載するなどアメリカ以外の諸外国では主力艦として活躍できる能力を持っている。このため、オーストラリア海軍やスペイン海軍、中華民国海軍、ポーランド海軍などにおいてもライセンス生産や輸入という形で導入された。
旧型化および国防予算削減の影響を受け、初期の艦はアメリカ海軍から退役しつつあるが、臨検任務などでの活躍により当初予想されたよりも退役のペースは落ち、2005年現在でも30隻程度が現役で活躍している。
[編集] スターク被弾事件
イラン・イラク戦争のさなか、1987年5月17日の夜、ペリー級23番艦のFFG-31 スタークがイラク軍のミラージュF1 1機から2発のエグゾセ空対艦ミサイル攻撃を受け被弾した。この事件はペリー級の抗堪性の高さを証明したと同時にシステムの弱さを露呈した事件でもあった。
イラク軍は当時タンカーに対する攻撃を行っており、このイラク軍のミラージュF1に搭乗していたパイロットもスタークをタンカーと判断し攻撃を行った。ミサイルは時間差をおいて2発が発射され、2発とも左舷に命中。1発目は不発だったものの、ロケットの残燃料による高温で火災が発生、1発目が着弾してから20秒後に2発目が命中、爆発した。これによりスタークは37名の死者を出したが、乗員の活躍により沈没は免れた。この働きは英雄的な活躍と賞賛され、アメリカ海軍の練度の高さを知らしめた。
しかし同時にアメリカ海軍の弱点も露呈した。スタークは事件の4時間前にはDDG-40 クーンツからペルシャ湾の哨戒任務を引き継いでおり、決して戦闘が不可能な状態ではなかった。またミラージュF1はアメリカ空軍のAWACSや僚艦のクーンツ、さらにはスターク自身のレーダーでも捕捉しており、旗艦のラ・サールにもその旨が報告されていた。にもかかわらずスタークは被弾した。これはイラン・イラク戦争当時、アメリカはイラクを支援しており、イラク軍からの攻撃は想定していなかったのが原因であった。そのためスタークは戦闘機を捕捉し、警告するもミサイル攻撃を許してしまい、スタンダードミサイル、CIWSなどによる防御手段も講じることができなかった。
後にイラクはこれを誤射と認めて謝罪。スタークはバーレーンでの応急処置を行った後、アメリカ本土で修復工事が行われ1988年9月に復帰した。この事件を受けアメリカはペルシャ湾におけるROE(交戦規定)を、必要に応じて先制攻撃も可能なよう改訂したが、この改訂は翌年のイージス艦ヴィンセンスによるイラン航空機誤射事件の原因の一つとなった。
[編集] 船体
上部構造物は従来までの艦船のように艦橋や煙突などがそれぞれ独立しておらず、艦橋から煙突、後部ヘリ甲板まで艦の前後にわたって平坦に続く。艦首は甲板が波をかぶらないよう長く前に伸び、さらに波よけのブルワーク(艦首の1段上がっている部分)も装備されている。
推進はスプルーアンス級と同じLM2500ガスタービンエンジンを使用している。スプルーアンス級がLM2500を4基搭載し2軸推進を行うのに対し、ペリー級では2基1軸で使用されている。また抗堪性を持たせるため補助推進装置として艦橋下付近に引き込み式の補助ポッド2基を装備し、スクリューまたは舵が破損した場合にはそれによって推進と操舵を行う。このポッドは360度自由に旋回ができるため、低速時の操舵にも使用できる。余談だが、前述のスターク事件では、被弾後このポッドペラを使用し、微速ながら自力で帰還している。
[編集] 兵装
[編集] ミサイル
ペリー級が装備するミサイルは艦隊防空ミサイルであるスタンダードミサイル (SM-1) と艦対艦ミサイルであるハープーンの2種で、両者とも艦前部に装備されているMk 13Mod4から発射される。Mk 13の装弾数は40発、最大約8秒おきの発射が可能で、通常スタンダードミサイル36発、ハープーン4発が装備される。対潜ロケットであるアスロックは装備せず対潜攻撃は搭載する2機の対潜ヘリによって行う。
なお近年主任務の変化によりペリー級からMk 13は撤去されてきている。ペリー級の任務は本来空母艦隊の防空や対潜哨戒であったが、1990年代以降は防空能力が飛躍的に向上したイージス艦の出現と、冷戦崩壊による艦隊への脅威の消滅により、近年ではもっぱら麻薬密輸を行う小型艇に対する臨検任務などに使われるようになっていた。Mk 13で使用するスタンダードミサイルやハープーンはこのような小型艇に対しては完全にオーバースペックであり、全く使われることはない。さらに2001年のアメリカ同時多発テロ事件以後このような任務は特に重視されるようになった。Mk 13は、このように用途が見出せなくなっただけでなく、装備するミサイル(SM-1)の生産終了、旧式化、保守整備費用の負担などから、撤去され、かわって、新たな任務により適した小口径の機銃・機関砲が追加されることとなった。
[編集] 艦砲
艦砲はOTOメララ社製の76mm砲をアメリカでライセンス生産したMk 75を装備している。通常艦砲は射角を広くとるため艦首または艦尾に装備されるのが一般的であるが、ペリー級ではスペース上の問題から船体の中央部・艦体構造物の上に装備している。
[編集] 対潜ヘリコプター
ペリー級は2機の対潜ヘリを搭載する。初期型ではLAMPS SH-2Fを搭載していたが、後にSH-2Fよりやや大型のLAMPS III SH-60Bが採用されたため、27番艦のFFG-36移行ではそれにあわせヘリ甲板の拡張とヘリコプター運用支援設備 (RAST) の装備がされた。27番艦以前の一部の艦も改修が行われている。なお甲板の拡張が行われた型でも水線長は変わっていないためSH-60Bを装備する艦は艦尾が大きくオーバーハングしており、それがSH-60B搭載型のひとつの特徴となっている。
[編集] 同型艦
- オリバー・ハザード・ペリー (USS Oliver Hazard Perry, FFG-7)
- マッキナニー (USS Mclnerney, FFG-8)
- ワズワース (USS Wadsworth, FFG-9):ポーランド海軍へ移管
- ダンカン (USS Duncan, FFG-10)
- クラーク (USS Clark, FFG-11):ポーランド海軍へ移管
- ジョージ・フィリップ (USS George Philip, FFG-12)
- サミュエル・エリオット・モリソン (USS Samuel Eliot Morison, FFG-13):トルコ海軍へ移管
- サイズ (USS Sides, FFG-14)
- エストシン (USS Estocin, FFG-15):トルコ海軍へ移管
- クリフトン・スプレイグ (USS Clifton Sprague, FFG-16):トルコ海軍へ移管
- ジョン・A・ムーア (USS John A Moore, FFG-19):トルコ海軍へ移管
- アントリム (USS Antrim, FFG-20):トルコ海軍へ移管
- フラットレイ (USS Flatley, FFG-21):トルコ海軍へ移管
- ファーリオン (USS Fahrion, FFG-22):エジプト海軍へ移管
- ルイス・B・プラー (USS Lewis B. Puller, FFG-23):エジプト海軍へ移管
- ジャック・ウィリアムズ (USS Jack Williams, FFG-24):バーレーン海軍へ移管
- コープランド (USS Copeland, FFG-25):エジプト海軍へ移管
- ギャラリー (USS Gallery, FFG-26):エジプト海軍へ移管
- マーロン・S・ティスデイル (USS Mahlon S. Tisdale, FFG-27):トルコ海軍へ移管
- ブーン (USS Boone, FFG-28)
- スティーブン・W・グローブス (USS Stephen W. Groves, FFG-29)
- リード (USS Reid, FFG-30):トルコ海軍へ移管
- スターク (USS Stark, FFG-31)
- ジョン・L・ホール (USS John L. Hall, FFG-32)
- ジャレット (USS Jarrett, FFG-33)
- オーブリー・フィッチ (USS Aubrey Fitch, FFG-34)
- アンダーウッド (USS Underwood, FFG-36)
- クロメリン (USS Crommelin, FFG-37)
- カーツ (USS Curts, FFG-38)
- ドイル (USS Doyle, FFG-39)
- ハリバートン (USS Halyburton, FFG-40)
- マクラスキー (USS McClusky, FFG-41)
- クラクリング (USS Klakring, FFG-42)
- サッチ (USS Thach, FFG-43)
- ド・ワート (USS De Wert, FFG-45)
- レンツ (USS Rentz, FFG-46)
- ニコラス (USS Nicholas, FFG-47)
- ヴァンデグリフト (USS Vandegrift, FFG-48)
- ロバート・G・ブラッドレイ (USS Robert G. Bradley, FFG-49)
- テイラー (USS Taylor, FFG-50)
- ゲイリー (USS Gary, FFG-51)
- カー (USS Carr, FFG-52)
- ハウズ (USS Hawes, FFG-53)
- フォード (USS Ford, FFG-54)
- エルロッド (USS Elrod, FFG-55)
- シンプソン (USS Simpson, FFG-56)
- ルーベン・ジェームズ (USS Reuben James, FFG-57)
- サミュエル・B・ロバーツ (USS Samuel B. Roberts, FFG-58)
- カウフマン (USS Kauffman, FFG-59)
- ロドニー・M・デイヴィス (USS Rodney M. Davis, FFG-60)
- イングラハム (USS Ingraham, FFG-61)
[編集] 登場作品
- レッド・オクトーバーを追え! :ルーベン・ジェームス(FFG-57 Reuben James)がアメリカ海軍の艦艇として登場。
- エースコンバット5 :オーシア海軍の艦艇として登場。
[編集] 関連項目
オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート |
アメリカ海軍 |
オリバー・ハザード・ペリー | マッキナニー | ワズワース | ダンカン | クラーク | ジョージ・フィリップ | サミュエル・エリオット・モリソン | サイズ | エストシン | クリフトン・スプレイグ | ジョン・A・ムーア | アントリム | フラットレイ | ファーリオン | ルイス・B・プラー | ジャック・ウィリアムズ | コープランド | ギャラリー | マーロン・S・ティスデイル | ブーン | スティーブン・W・グローブス | リード | スターク | ジョン・L・ホール | ジャレット | オーブリー・フィッチ | アンダーウッド | クロメリン | カーツ | ドイル | ハリバートン | マクラスキー | クラクリング | サッチ | ド・ワート | レンツ | ニコラス | ヴァンデグリフト | ロバート・G・ブラッドレイ | テイラー | ゲイリー | カー | ハウズ | フォード | エルロッド | シンプソン | ルーベン・ジェームズ | サミュエル・B・ロバーツ | カウフマン | ロドニー・M・デイヴィス | イングラハム |
オーストラリア海軍:アデレード級フリゲート |
アデレード | キャンベラ | シドニー | ダーウィン | メルボルン | ニューカッスル |
スペイン海軍:サンタ・マリア級フリゲート |
サンタ・マリア | ヴィクトリア | ヌマンシア | レイナ・ソフィア | ナバラ | カナリアス |
中華民国海軍:成功級フリゲート |
成功|鄭和|繼光|岳飛|子儀|班超|張騫|田單 |
アメリカ海軍フリゲート一覧 |