シールドトンネル
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シールドトンネルはシールドマシンによって掘削された円形の断面を持つトンネル。トンネル本体が分割されたブロック(セグメント)を組み上げることによって構築される。軟弱地盤でも掘り進むことができ、またセグメントを工場で大量製作することによりコスト削減が図れ、技術も進歩してきているため、最近の地下鉄、道路(主に都市内)、共同溝、下水道、地下水路、地下河川などのトンネル工事ではシールドトンネルが多く採用されている。
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[編集] 歴史
Sir Marc Isambard Brunel によって開発されたシールド工法を用いたトンネルの最初の成功例は、予定していた1843年までに開通しなかったが、1825年に掘削を開始したテムズトンネル (Thames Tunnel)である。 シールド工法のアイデアは、Brunel が造船所で働いている時にフナクイムシ(船食い虫)からヒントを得たと語っている。フナクイムシの幼貝は木造船の船体等に付着して水中の材木に穴を空けて大きな害を与える害虫であるが、掘る作業はとても効率的な動きをする。
1870年、Brunel が考えたシールド工法の基本的な初期形状は Peter W. Barlow によってロンドン中央を流れるテムズ川の下にタワー地下鉄 (Tower Subway) を建設中に改善された。Barlow が行なった改善の決定的な新規性は、Brunel が考案したものが長方形のクロスセクションによる動きであったのに対して、Barlow のそれはが円形のクロスセクションを持っている点である。これにより、建設中にはより単純な一回の動作で周囲の土壌の重量をより一層支持できるようにできるようになった。
Barlow タイプの形状はより大型化され、1884年には今日のロンドン地下鉄の Northern Line の一部区間として残る City and South London Railway の建設で、さらに James Henry Greathead によって改善された。今日に至るまで、たいていのシールドトンネルの多くは Greathead タイプのシールド工法に基づいている。
[編集] シールドトンネルの施工法
シールドトンネルはシールドマシンと呼ばれる機械を使用して掘削されるトンネルのことであり、その施工法はシールド工法と呼ばれる。 一般的なシールド工法の手順は以下の通りである。
- シールドマシンを地下へ運び発進させるために開削工法によって立坑(縦穴)が掘削・構築され、坑内に発進基地が作られる。いったん解体されたシールドマシンは、クレーンによって地下に下ろされ、立坑内で組み立てられる。(この立坑は、トンネル完成後は鉄道では駅、道路では換気塔などに転用されることが多い)。
- シールドマシンは一般的には円筒形で、底を抜いた茶筒を倒したような形である。マシン本体の外周の甲殻(茶筒の本体)は、マシン内部でトンネルが構築されるまでの間、周辺の土圧・地下水圧に耐える役割を果たす。
- マシン先端の切羽に接する部分(茶筒の蓋に相当する部分)はカッターヘッドという回転する面板となっており、ここにおろし金のような細かい刃(カッタービットあるいはビットと呼ばれる)が円周状・放射状に多く配置されている。ビットは常に土を掘り分け硬い石を削るという最も過酷な環境にあるため、超硬合金や焼結タングステンカーバイトなどの強靭な素材が用いられる。
- シールドマシンの後部にはジャッキが円周状に配置されており、このジャッキの推進力でマシン全体を前進させ、先端部を切羽の地盤に押し付けながらカッターヘッドを回転させて地盤を掘削し前進する。
- 泥土圧式シールドで土砂圧送方式によって土砂を搬出する場合、掘削された土砂(ズリ)は切羽で塑性流動化してパイプで地上まで輸送される。またズリ鋼車方式によって土砂を搬出する場合、シールドマシンのスクリューからベルトコンベアで後方台車の後部まで土砂を輸送して鋼車に載せる。土砂を載せた鋼車はトロッコによって立坑下部まで移動し、鋼車部のみをクレーンによって立坑上部(地上部)吊り上げる。吊り上げられた鋼車内の土砂は地上ヤードまたは立坑内に設置されたピットや土砂処理施設で処理・脱水されてダンプトラックを用いて土捨て場や産業廃棄物処理場へ搬出される。
- マシン内部ではあらかじめ工場製作されたセグメント(円弧状のブロック;鉄筋コンクリート製、鋼製、鋳鉄製など)を機械により組みあげ、トンネル本体がトンネル断面の1周分(1リング)ずつ構築される。
- セグメントは工場からトレーラーで現場に搬入され、立坑から地下のシールドマシン内部までクレーンとトロッコで運び込まれる。
- セグメントが1リング分配置されると、その部分のトンネル本体は完成する※。鉄道・道路トンネルでは、1リングは5~10個程度のセグメントで構成され、セグメントの幅(トンネル縦方向の長さ)は1.0m~1.5m程度である(これらはトンネルの径や形状、用途、使用するセグメント等によって異なる)。
- ※軌道敷設、道路床板設置、防水・防火などの目的のために、完成したトンネルのセグメント内側にさらにコンクリートなどを巻き立てる(二次覆工)場合がある。このためセグメントは一次覆工とも呼ばれる。
- セグメントが1リング分組みあがると、組みあがった部分にジャッキの反力をとってシールドマシンを前進させ、次の掘削・推進を行う(上記の2.~3.の工程を繰り返しながらトンネルを1リングごとに組み上げる)。
[編集] シールドマシンの種類
- 泥水加圧式シールドマシン
- 泥土圧式シールドマシン(土圧バランス式、加泥式、土圧加水式など)
[編集] セグメントの種類
- 鉄筋コンクリート(RC)セグメント(プレキャストセグメント)
- 鋼製セグメント
- 鋳鉄(ダクタイル)セグメント
[編集] 歴史
- 1818年にイギリスにおいて、フランス人技師マルク・ブリュネルよって考案された。
- 1825年にロンドンのテムズ河を横断する水底トンネルに初めて採用された。
- 1917年に日本において羽越本線折渡トンネルで初採用された。(但し一部区間)
[編集] シールドトンネルの採用例
- 鉄道トンネル
- 関門鉄道トンネル (世界最初の鉄道海底トンネルとして開業)
- 総武本線・横須賀線東京トンネル、JR東西線(JRの在来線規格で建設されたシールドトンネル)
- 近鉄難波線
- 東急田園都市線(地下区間)、みなとみらい21線、首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス線
- 埼玉高速鉄道線(トンネル下部を導水管として活用、荒川から綾瀬川・芝川へ送水)
- 大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線、東京都営地下鉄大江戸線(小断面のリニア地下鉄用単線シールドトンネル)
- ユーロトンネル(フランス側からの掘削は日本の川崎重工が参加した海底部総距離世界一のシールドトンネル)
- 鉄道の地下駅
- 木場駅(東京メトロ東西線)
- 高輪台駅(都営地下鉄浅草線)
- 新御茶ノ水駅(東京メトロ千代田線)
- 永田町駅(東京メトロ有楽町線、半蔵門線、南北線)
- 三越前駅(東京メトロ半蔵門線)
- 白金台駅(東京メトロ南北線・都営地下鉄三田線共有区間)
- 六本木駅(都営地下鉄大江戸線)
- 阿倍野駅(大阪市営地下鉄谷町線)
- 御陵駅(京阪京津線、京都市営地下鉄東西線)
- 道路トンネル
- 約9.5km、シールドマシン外径14.14mは当時世界最大。
- 首都高速中央環状新宿線(建設中)
- 延長約10km(トンネル部)、シールドマシン外径は最大で13.23m(西新宿シールド)。
- 首都圏外郭放水路(建設中)
- 延長約6.3km、内径約10m。国道16号の地下約50mに建設され、江戸川、中川、大落古利根川等をつなぐ地下放水路。
- 神田川・環状七号線地下調節池(第1期1997年完成、第2期建設中)
- 延長約4.5km、トンネル内径12.5m。環状七号線の地下約40~50mに建設される神田川の洪水調整池トンネル。シールドマシン外径13.94m(第1期)、13.44m(第2期)。
- 渋川雨水貯留管
(ほかにも何か追加してください。地下鉄だけでなく、水道管、放水路などもお願いします。)
- なお、青函トンネルは、シールド工法により掘られたと思われがちだが、新オーストリアトンネル工法である。
[編集] 関連項目
- トンネルボーリングマシン(TBM)
- 新オーストリアトンネル工法(NATM)
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