ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー | ||
---|---|---|
YMO の アルバム | ||
リリース | 1979年9月25日 | |
録音 | STUDIO "A" | |
ジャンル | テクノ | |
時間 | 32分06秒 | |
レーベル | アルファレコード | |
プロデュース | 細野晴臣 | |
レビュー | ||
|
||
チャート順位 | ||
|
||
YMO 年表 | ||
イエロー・マジック・オーケストラ (US版) (1979年) |
ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー (1979年) |
パブリック・プレッシャー (1980年) |
ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー(Solid State Survivor)は、イエロー・マジック・オーケストラの2作目のアルバム。または同アルバムに収録されている曲。アルバムには同バンドの代表曲である「Rydeen(ライディーン)」が収録されている。
目次 |
[編集] 解説
細野晴臣のソロ・アルバム色の強かったファースト・アルバム『イエロー・マジック・オーケストラ』に比べ、本作は高橋幸宏・坂本龍一の曲が中心となっている(細野作曲は全8曲のうち2曲のみである)。また、フュージョンの要素が一掃され、ディスコ、ニュー・ウェイヴ色が強くなっているのも特徴である。
当初、アルバムタイトルは「メタマー」(「突然変異」を意味する「Metamorphose」の造語)と付けられていた。
YMOの全作品の中でもポップで明るい曲調が多いこの作品は、まさにYMOを代表するアルバムである。そのわかりやすい内容から日本において小・中学生を含めた一般のリスナーに熱狂的に受け入れられた。本作のリリース後ワールド・ツアーに出ていたYMOは、ツアー先で日本国内での本作のヒットの報を聞き、大変驚愕したと後に語っている。本作は結果的にミリオンセラーを記録し、翌1980年の日本レコード大賞アルバム賞を受賞。日本でのいわゆるテクノ・ポップ全盛時代をつくり上げ、その後の「YMOチルドレン」と呼ばれる日本のミュージシャンたちが最初にテクノ・ポップに触れたきっかけをつくったという点で、非常に重要なアルバムと言えよう。
収められている楽曲も、前述の「Rydeen」や「Technopolis」はYMOを代表するものであり、「Behind The Mask」は後にマイケル・ジャクソンやエリック・クラプトンらがカヴァーするなど海外で高く評価された。
A面(1〜4曲目)は最後の「Castalia」を除いて、ダンス・ミュージックを意識し楽曲がつないであるが、B面(5〜8曲目)はロックやニュー・ウェイヴの影響が色濃く出ている。このアルバムの発売当時、YMOはニュー・ウェイヴに傾倒しており、市場戦略的に行なったフュージョン、ディスコなどの米国音楽へのアプローチから、徐々にメンバーの興味を起こさせる英国・欧州の音楽志向に移行していった過渡期のアルバムと言えるかもしれない。DEVOによるローリングストーンズのサティスファクションのカヴァーに影響された、ビートルズのカヴァー「Day Tripper」(ぎくしゃくとしたニュー・ウェイヴ的アレンジである。高橋の要望とされる説があるが、後に高橋は、「僕が要望するならジョージの曲をやる」と語っている)や、パンク的要素を取り入れた「Solid State Survivor」(メンバーは「デジタル・パンク」と呼んでいた)などにその一片が見受けられる。
[編集] 収録曲
- Technopolis (テクノポリス)
作曲:坂本龍一- 「Rydeen」と並ぶYMOの代表曲。ピンク・レディーの一連の楽曲を坂本が分解・研究し再構築した「東京歌謡」。以前にもライブでピンク・レディーの「ウォンテッド」がカヴァーされたこともあり、推測であるが坂本の都倉俊一に対するリスペクト、またはただ単にピンク・レディーのファンだったのではないかと思われる。坂本本人は「単に売れる曲を書いてやろうと思って」とのコメントも残している。
- 「トキオ」のフレーズ(なお、1981年の「ウィンター・ライブ」の際は、拡声器を持った坂本がライブ会場の都市の名前を叫んでいたこともある)は日本でのヴォコーダーの使用例の代表的なものとして取り上げられることが多い。またこの「トキオ」は駅のアナウンスを模したともされている。録音時に使ったヴォコーダーはローランドVP-330の試作器であった。また、「トキオ」の「ト」の部分でピッチを上げ、「キオ」の部分でピッチを下げるという工夫がされている。この曲はシングルカットされたが、アルバムバージョンとは異なったテイクとなっている。コンピュータによる自動演奏の印象が強いYMOであったが、松武秀樹とレコーディング・エンジニアの小池光夫によれば、トラック数不足から同期信号を消した上に録音することになった関係で「7割くらい手弾き」[1]であり、レコーディング当時のトラックシートには坂本の字で「根性のBRIDGE」と書いてあった。また、シートに書いてある仮タイトルは「うさばらし」だった。
- TWO-MIXを始めとする数多くのア-ティストにカヴァーされている。尚この曲は、3人も出演したフジカセット(後の富士フイルムアクシア、現:富士フイルムイメージング)CM曲に起用されている。
- Absolute Ego Dance (アブソリュート・エゴ・ダンス)
作曲:細野晴臣- 沖縄音楽とインド歌謡とディスコの要素を取り入れた、細野の個性が強い作品。前作の色が濃い唯一の楽曲。リズムの跳ね方は当時細野と坂本がはまっていた。ヴォーカル(というよりむしろ合いの手)としてサンディーが参加。
- Rydeen (雷電/ライディーン)
作曲:高橋ユキヒロ- YMOの代表曲でもあり、のちにシングルカットもされた。2003年3月16日に放送されたテレビ東京系の番組「そして音楽が始まる」のインタビューで高橋幸宏は、イメージは黒澤明の『七人の侍』と『スター・ウォーズ』であり、その華やかなアレンジは「日本風ディスコ」を目指したものと語っていた。また同番組で松武秀樹は、曲全体を貫くリズム(チッチキチッチキ・・・)は馬の蹄の音のイメージだと発言していた。高橋によれば、メロディは居酒屋で高橋が鼻歌で歌ったのを、坂本がメモに書き起こして作られたということである。坂本や細野が難解なメロディを生み出す中、鼻歌から生まれた高橋の明快なメロディは坂本・細野に大変な衝撃を与えた。こちらも3人の出演したフジカセットCM曲に起用されている。2007年にはキリンラガービールのCMだけのためにYMOが再結成され、この曲をアレンジした「RYDEEN 79/07」がリリースされた。
- Castalia (キャスタリア)
作曲:坂本龍一- 速いテンポの曲が続いた後に静かに流れる、坂本のピアノを主体とした曲である。重く、暗い印象のこの曲はアルバムの中でも異色の存在感を放つ。映画『惑星ソラリス』からインスパイアされたと言われているが、直接的には武満徹の音楽から影響を受けている(矢野顕子に向けて書いた曲とも発言している)。初期YMOのライヴでは1曲目に演奏されることが多く、DVD「Visual YMO」やアルバム『ONE MORE YMO』にも収録されている。
- Behind The Mask (ビハインド・ザ・マスク)
作詞:クリス・モスデル/作曲:坂本龍一(・高橋ユキヒロ)- それまで難解なコード進行を得意としてきた坂本が、単純ないわゆるロックのコード進行(F-D♭-E♭-Cm)を使用した曲。メロディは坂本と高橋が共同で担当したため、ある時期まで高橋が作曲者として連名でクレジットされていた。元々は坂本がセイコーのCM曲としてすべて手弾きで作成した曲がベースとなっており、ベストアルバム『UC YMO』に収録されている。またこの曲は、クインシー・ジョーンズが気に入り、マイケル・ジャクソンの『スリラー』に収録するつもりであったが、マイケル側が作曲のクレジットと版権の50%を要求したためYMO側が拒否した。しかし、『スリラー』が大ヒットしたため後悔したと、後日坂本と高橋がラジオ番組等で語っている。さらに、『スリラー』の共同プロデューサーであり、キーボード奏者であったグレッグ・フィリンゲンズが1984年のアルバム『Pulse』でマイケル・ヴァージョンを収録。また、グレッグ・フィリンゲンズがエリック・クラプトンのバックバンド・メンバーだったことから、1986年のエリック・クラプトンのアルバム『オーガスト』にマイケル・ヴァージョンが収録された。1986年には坂本のライブ・アルバム『メディア・バーン・ライヴ』にマイケル・ヴァージョンを収録。さらに1987年には坂本自身がマイケル・ヴァージョンをセルフ・カヴァーしたアルバムをリリースしている。坂本自身はこのテイクを「エリック・クラプトンを超えた」とコメントしている。なお、この曲を初めて聴いたときの細野と高橋は非常に当たり前の曲と思ったらしく、特に細野はこの曲のすばらしさを認識できなかった自分自身に対して「プロデューサーとしては失格」と発言している。
- Day Tripper (デイ・トリッパー)
作詞・作曲:ジョン・レノン/ポール・マッカートニー- ビートルズ中期のナンバーのカヴァー。ギターで鮎川誠が参加。幾何学的で難解なアレンジが施されているが、これは当時ローリング・ストーンズの「Satisfaction」をカヴァーしたディーヴォに強く影響を受けている。高橋によると、カバー元はビートルズのオリジナルではなく、かまやつひろしのカヴァーであると発言している(ここで言及されたかまやつのカヴァーはザ・スパイダース時代からのアレンジのものと推測され、スパイダースはオーティス・レディングのアレンジを元にしており、いわば孫カヴァーといえる)。「She was a~」で始まるのはそのためとも付け加えている。ヴォーカルは高橋のオクターブ・ユニゾンで歌った裏声をハーモナイザで機械的に加工している。高橋は気持ち悪がったが、細野が気に入っている。録音当時の鮎川は4/4拍子から5/4拍子に変わる部分で戸惑ったが、涼しい顔を作って懸命に演奏を続けたらしい。YMOのワールド・ツアーではかなり盛り上がる曲であった。
- Insomnia (インソムニア)
作詞:クリス・モスデル/作曲:細野晴臣- タイトルどおり、当時実際に不眠症だった細野の曲。ヴォーカルは細野。
- Solid State Survivor(ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー)
作詞:クリス・モスデル/作曲:高橋ユキヒロ- 軽快な8ビートの曲であり、メンバーたちは「デジタル・パンク」と呼んでいた。曲中で流れる咳き込んだような音は実際に当時のマネージャー・日笠雅子の咳き込んだ声を、ヘッドフォンをマイク代わりにして拾って加工したもの。シングル『TECHNOPOLIS』のB面にも収録されている。
[編集] ゲスト参加
[編集] 参考
- ^ サウンド&レコーディング・マガジン、1999年11月号
メンバー | |
---|---|
細野晴臣 - 高橋幸宏 - 坂本龍一 | |
サポートメンバー | |
矢野顕子 - 渡辺香津美 - 大村憲司 - 松武秀樹 - 橋本一子 - 藤本敦夫 - 鮎川誠 - デヴィッド・パーマー | |
シングル | |
テクノポリス - ライディーン - タイトゥン・アップ - キュー - マス - 体操 - 君に、胸キュン。 - 過激な淑女 - 以心電信 - ポケットが虹でいっぱい - ビー・ア・スーパーマン - RYDEEN 79/07 | |
オリジナルアルバム | |
イエロー・マジック・オーケストラ - イエロー・マジック・オーケストラ (US版) - ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー - 増殖 - BGM - テクノデリック - 浮気なぼくら - サーヴィス - テクノドン | |
ベストアルバム | |
X∞Multiplies - シールド - Y.M.O.ヒストリー - YMO BEST SELECTION - キョーレツ・ナ・リズム - テクノ・バイブル - オーヴァー・シーズ・コレクション - We Love YMO - YMO GO HOME! - UC YMO | |
リミックスアルバム | |
浮気なぼくら (インストゥルメンタル) - Y.M.O. MEGA MIX - YMO・イン・ザ・ナインティーズ・ピート・ロリマー・リミックス - ハイテック・ノークライム - NEO TECHNOPOLIS・・・・・繁殖 - YMO versus THE HUMAN LEAGUE - TECHNODON REMIXES I - TECHNODON REMIXES II - YMO HI-TECH/US.CRIME - YMO REMIXES TECHNOPOLIS 2000-01 - YMO REMIXES TECHNOPOLIS 2000-00 | |
ライブアルバム | |
パブリック・プレッシャー - アフター・サーヴィス - テクノドン・ライヴ - ライヴ・アット・武道館1980 - ライヴ・アット・紀伊国屋ホール1978 - ウィンター・ライヴ1981 - ワールド・ツアー1980 - ライヴ・アット・グリークシアター1979 - フェイカー・ホリック - コンプリート・サーヴィス - ONE MORE YMO | |
完全限定BOX | |
CUBIC - YMO CD Single BOX - L-R TRAX Live & Rare Tracks | |
関連アルバム | |
TRIBUTE TO YMO |
オリコン週間LPチャート第1位 1980年7月14日付~1980年7月28日付 (3週連続) |
||
前作: イエロー・マジック・オーケストラ 『増殖』 |
イエロー・マジック・オーケストラ 『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』 |
次作: もんた&ブラザーズ 『ACT 1』 |
オリコン年間LPチャート第1位 | ||
前年: ゴダイゴ 『西遊記』 |
イエロー・マジック・オーケストラ 『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』 |
次年: 寺尾聰 『Relfections』 |
日本レコード大賞ベストアルバム賞受賞作品 | ||
前年度 1979年 第21回 アリス『栄光への脱出~武道館ライブ』 サザンオールスターズ『10ナンバーズ・からっと』 さだまさし『夢供養』 |
1980年 第22回 長渕剛『逆流』 YMO『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』 山下達郎『MOON GROW』 |
次年度 1981年 第23回 大滝詠一『A LONG VACATION』 松任谷由実『水の中のASIAへ』 オフコース『We are』 |
![]() |
この「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」は、アルバムに関連した書きかけ項目です。加筆、訂正などして下さる協力者を求めています。(Portal:音楽 Wikipedia:ウィキプロジェクト アルバム) |