ソ連対日宣戦布告

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ソ連対日宣戦布告（ソれんたいにちせんせんふこく Soviet Declaration of War on Japan）とは、1945年8月にソ連が日ソ中立条約を破棄した上で大日本帝国に対して行った宣戦布告を言う。

目次 1 概要 2 内容 3 背景 3.1 連合国 3.2 日本 3.3 日ソ交渉 4 戦闘状況 5 シベリア抑留 6 関連項目

[編集] 概要

この布告では、連合国におけるソ連として、ポツダム宣言を黙殺した日本に対して、世界平和を早急に回復するために武力攻撃を行うことが宣言されている。この宣言に基づいてソ連軍はソ連対日参戦を実行し、満州国、樺太南部、朝鮮半島、千島列島に侵攻し、日本軍と各地で戦闘になった。

布告が日本の佐藤尚武駐ソ連大使に伝達されたのはモスクワ時間1945年8月8日深夜で、9日午前零時を以って戦闘開始されている。

[編集] 内容

ソ連対日宣戦布告においては、ソ連対日参戦の旨とその理由などが述べられた。その理由として、まず(1)日本政府が7月26日の米英中による3国宣言(ポツダム宣言)を拒否したことで、日本が提案していた和平調停の基礎は完全に失われたこと、(2)日本の降伏拒否に対して連合国はソ連にソ連が日本の侵略に対する連合国の戦争に参戦して世界平和の回復に貢献することを提案したこと、(3)ソ連政府は連合国に対する義務に従って右提案を受諾し、7月26日の3国宣言に参加することを決め、各国人民をこれ以上の犠牲と苦難から救い、日本人を無条件降伏後の危険と破壊から救うためにソ連は対日参戦に踏み切ること、(4)以上の理由からソ連政府は8月9日から日本と戦争状態に入るべきこと、が宣言された。

[編集] 背景

[編集] 連合国

この宣戦布告が発表された背景には当時の連合国内部での政治的な駆け引きが影響している。1945年になってから連合国はドイツの戦後処理と日本の本土攻略に焦点を当てていた。この討議のためにヤルタ、ポツダムにおける会談が開催されることになり、ソ連参戦が議論された。当時日本と太平洋戦争を遂行していた米国政府はソ連と連携して日本を攻略することを考えており、1945年2月のヤルタ会談において米国はソ連の参戦を「外モンゴルの現状維持」「ロシア帝国時代での満州におけるソ連の権益を回復」「大連港を国際化」「南樺太の奪還」「千島併合」の五項目をのちに蒋介石の了解を得るという条件化で認め、ヤルタの秘密会談で英国も加えて合意に達した。また5月のポツダム予備会談においてスターリンは極東ソ連軍の8月中に攻勢作戦を発動すること、満州国は中国領であって中国の支配権を尊重すること、朝鮮半島を米ソ英中が信託統治すること、などの旨を表明し、さらに対日処理については、絶対無条件降伏と徹底的な軍備撤廃、ソ連軍による日本占領を主張し、米国に戦略物資の支援を要求した。しかし当時の米国統合参謀本部はソ連軍が戦争の決着がついた頃に便乗するだけであるとの見方を強めていた。

[編集] 日本

日本においては小磯国昭内閣が和平工作を推進し、危機的な状況を主に外交交渉によって打開しようと模索していた。小磯内閣は発足当初、戦争の完遂と同時に対ソ戦争回避を目標として対外政策を進めた。そのため、小磯内閣は戦争完遂のために始動したと同時にソ連との国交を好転させ、和平工作を進めることに努力した。しかしソ連は既にこの頃から日本に対する侵攻の兆候を見せており、1944年にスターリンは革命記念日の公式演説において日本を侵略国と断罪し、また7月から8月及び11月から12月に各2回の国境地区における不法行為が発生している。日本はヤルタの秘密協定の合意を知らず、ソ連の侵攻の意図を確認できていなかった。また1945年4月6日にソ連は日ソ中立条約を延長しないことを一方的に決定して日本に通告した。その理由として「情勢が締結当時と一変し、今日本はソ連の敵国ドイツと組して、ソ連の盟友米英と交戦しており、このような状態において日ソ中立条約の意義は失われた」と述べられた。同条約の効力が失われるのが1946年4月25日であったが、当時の政府及び軍関係者はソ連の対日参戦の意思をこの時点で認識した。

[編集] 日ソ交渉

日本は当時、ソ連を仲介者する連合国との和平工作を行っていた。鈴木内閣は発足してから戦争を終結に導くために首脳部の懇談会を持ち、「国体保持」「国土保衛」に戦争目的に定めた。しかし連合国は「絶対無条件降伏」を主張しているため、これを受諾することはできず、外交においては和平工作を推進し、軍事力は外交交渉を少しでも有利に進めるために用い、最低限でも国体保持を包括する和平へ導くことが決定された。 この政策は木戸内府が試案を起草し、この試案において現在の日本の状況が危機的であり、和平の外交交渉へと移ることが早急に必要であると論じた。そして当時中立条約を締結していたソ連を介し、米英と最低限の条件で名誉ある講和を実現し、海外の部隊は撤退、軍事力も国防に必要な最低限に縮小することが述べられている。この試案は1945年6月9日に天皇及び首相、陸海軍などと協議し、実行に移すことが決まった。 ただしこの政策には当初から反対もあった。東郷外相はソ連の対日政策はすでに挑戦的なものへと移行しており、実現する可能性は低いとして対ソ和平交渉政策に同意していない。しかし鈴木首相はあらゆる東郷外相の意見を是認しながらもあらゆる可能性を模索する意味で、対ソ交渉政策を進めていた。

[編集] 戦闘状況

詳細はソ連対日参戦を参照

第二次世界大戦の開戦当時、大日本帝国とソ連の間には日ソ中立条約が締結されていた。その後1945年2月に、ソ連の独裁者であるヨシフ・スターリンはヤルタ会談において対日本への参戦要請を承諾（ヤルタ協定）。1945年4月5日、ソ連は大日本帝国に対し、条約の延長を行わないことを通達した。延長を行わない場合であっても、日ソ中立条約の文面上は1946年まで中立規定が有効であったが破棄し、8月9日に樺太、満州国に軍事侵攻した（右翼はこれを以って「ソ連（現・ロシア）の汚さ」を喧伝している）。

当時関東軍は南方へ兵力の過半数を引き抜かれていたが満州居留邦人15万名、在郷軍人25万名を根こそぎ動員、さらに中国戦線から4個歩兵師団を派遣させてなんとか74万人の兵員を維持することに成功した。さらに以前関東軍特殊演習により本土から輸送させた戦車200輌、航空機200機、火砲1000門も健在であった。しかし兵員の半数以上は訓練不足、日ソ中立条約の破棄を想定していなかった関東軍首脳部の混乱、物質不足（砲弾は約1200発ほどで、航空部隊のほとんどが戦闘未経験者。また小銃が行き渡らない兵士だけでも10万名以上）のため事実上の戦力は30万名ほどだといわれている。それに比べてソ連赤軍は戦車（自走砲を含む）5000輌、航空機5000機、火砲2万4000門、174万人以上の兵員で満州国、樺太南部に侵攻し関東軍の陣地、要塞を次々と占領した。

関東軍は先ず元来指定されていた防衛作戦にのっとり随時後退しながら戦闘を行う事を決定する。最初は砲弾、燃料の不足による焦りもあり戦車部隊と軽装備（小銃や手榴弾など）による突撃を敢行して本土からの増援部隊の到着まで時間をかせごうとした（しかし大本営、陸海軍首脳部は満州国の放棄を決定したため援軍の見込みは全くなかった）。また、装甲の薄い日本軍戦車（九八式軽戦車、九五式軽戦車等の軽戦車しか残っていなかった）は次々とソ連軍戦車部隊、火砲に撃破され、歩兵部隊も重機関銃などの猛射により逆に全滅を急ぐ結果となった。続いて関東軍は地雷や爆薬を手に戦車に突撃し破壊する作戦にでたがソ連軍戦車隊の守りは堅く、戦車砲や機銃になぎ倒された。また、事前に航空部隊に発見され多くが突撃する前に攻撃されたため多大な損害を与えることができなかったため状況を打開することができなかった。関東軍の航空部隊もその殆どが南方と本土の防衛に引き抜かれていたため、戦力に勝るソ連軍航空部隊の前に次々と敗れた。最終手段として特攻も試みたがその前にソ連軍航空部隊に迎撃されたため成功しなかった。

一部の部隊では避難民撤退の為にソ連軍に善戦し全滅した部隊も存在、関東軍は随時中国及び満州南部、朝鮮へと避難民を退去させた。

またソ連軍の侵攻は日本人居住民にとっては恐怖以外の何者でもなかった。しかし傀儡国家満州国の元で日本人の抑圧に喘いでいた中国人や朝鮮人などにとっては『解放』であったため彼等の支持を受けた。最終的には満州国軍からもソ連側への離反が相次ぎ日本側の防衛線は完全に崩壊、ソ連軍は満州全土、樺太南部、朝鮮半島北部を占領した。関東軍はゲリラ戦に戦法を変更し、兵力を朝鮮半島南部一帯に集中させて本土からの増援部隊を待ったが玉音放送を迎え、大本営から戦闘停止命令を受け、戦闘行動を中止しソ連軍に降伏した。ただし、一部地域においては、劣悪な通信事情や激しい戦闘状況もあって、8月後半まで戦闘が続けられた。

より多くの領土の取得をもくろんだスターリンの命令により、ソ連軍は8月末まで侵攻が続けられており、8月18日以降は新たに千島列島でも戦闘が開始され、こちらも9月4日まで侵攻が続いた。最終的にアメリカ政府からの抗議を受けるまで その侵攻行動を止めなかった。この結果、ソ連は最終目標である北海道こそ占領できなかったが、日露戦争以来の念願であった千島列島と南樺太を手に入れた。

[編集] シベリア抑留

戦闘において満州国や南樺太などで捕虜となった旧日本軍将兵や在満州民間人、満蒙開拓移民団など、約65万人の軍人・軍属がシベリアの収容所に抑留された。彼らは、過酷な環境下で強制労働に従事させられ、6万人を超える死者を出した。抑留された捕虜の総数については一説には200万人以上（ワレンチン・アルハンゲリスキーの著作およびダグラス・マッカーサー元帥の統計より）ともいわれている。

詳しくはシベリア抑留参照のこと。

[編集] 関連項目

• ポツダム宣言
• ソ連対日参戦
• 国際法