タイムツイスト 歴史のかたすみで…
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ジャンル | アドベンチャーゲーム |
対応機種 | ファミリーコンピュータ |
開発元 | パックスソフトニカ |
発売元 | 任天堂 |
人数 | 1人 |
メディア | 前編・後編とも ディスクカード両面 |
発売日 | 前編・後編とも 1991年7月26日 |
価格 | パッケージ版:各2,600円(税込) ディスク書き換え:各500円(税込) |
その他 | 後編の使用には前編が必要 メーカー型番 前編:FMC-TT1 後編:FMC-TT2 |
『タイムツイスト 歴史のかたすみで…』(タイムツイスト れきしのかたすみで) は、1991年7月26日にファミリーコンピュータの周辺機器ディスクシステム用ゲームソフトとして任天堂より発売されたアドベンチャーゲームである。開発元はパックスソフトニカ。
前編と後編の2編に分けられ、いずれも同日に発売された。後編を使用するには前編のディスクカードが必要となり、さらに前編の物語を最後まで終わらせなければならない。
ふぁみこんむかし話シリーズの新・鬼ヶ島や遊遊記とは開発元や製作スタッフが重複し、これらのファンからは後継作と捉えられている。脚本・監督は遊遊記や数々のテレビアニメの脚本を手がけた照井啓司が兼任した。その他の主要スタッフに菱田達也、橋下友茂、平澤創など。
目次 |
[編集] 作品解説
タイムツイストの発売日となる1991年7月はすでにスーパーファミコンの発売から8か月以上が経過し、ファミコンが過去の機種と認識され始めた時期であった。しかしファミコンはその普及台数から現役ハードとしての地位はまだ保っており、キャラクターゲームなど低年齢層やテレビゲーム初心者向けに難易度を落とした作品、手軽なパズルゲームなどがロムカセットにより供給された。
このような背景の中、タイムツイストはロムカセットではなく、大半のユーザーにはその存在が忘れられ、新作ソフト数もごく少数となったディスクシステム用ソフトとして発売された。さらに任天堂のゲームソフトとしては珍しくテレビCMも製作・放映されなかった。このため当時のファミコンユーザーの間でも知名度は低く、作品の存在を知らない人も多い。
本作はパッケージ販売が行われた最後のディスクシステム用ソフトでもある。ただしこの後も書き換え専用新作ソフトの供給は続けられたため、全てのディスクソフトの中では最後から4作目となる。
1990年代末から普及したインターネットによる個人ファンの情報発信、これと同時期に発生したレトロゲームブームを経てより多くの人々に作品の存在が知られるようになると、パッケージ版はその流通量の少なさから中古市場やインターネットオークションにおいては定価を超える高値で取引されるようになった。知名度の高いふぁみこんむかし話シリーズの後継作としての存在、それらと正反対の重い物語展開に対する評価もこれを後押しした。
パッケージ版の価格高騰により書き換えサービスの利用は最も容易かつ安価な入手方法とされたが、任天堂は2002年秋に本作の書き換え販売を終えた。2003年9月末の書き換えサービス全面終了より1年ほど早いが理由は公表されていない。
[編集] ゲーム内容
主人公の少年の行動を画面に複数表示される命令文から選択し、物語を進めるコマンド選択式のアドベンチャーゲームである。物語中において少年は「おれ」と自称するが名前は一切明らかにせず、コンピュータRPGや他のアドベンチャーゲームに見られる名前入力の機会さえ与えられない。
少年はある出来事をきっかけに肉体と精神を分離させられてしまい、他の人物や動物に乗り移ることで行動を取る能力を得る。この能力を活用しつつ、タイムスリップした先々で悪事を働く悪魔やその手先となった人間の企みを阻止・解決し、自分の体を取り戻すことが旅の目的となる。
[編集] 物語の展開
物語の主軸として扱われた題材は実際の歴史となっており、舞台となる各時代ごとに宗教や戦争、人種差別にまつわる話を絡ませているため、非常にシリアスな展開となる。ただし部分的には皮肉を交えたり笑いを狙った演出もされた。
ゲーム中にはロジックパズルや数学パズル、歴史に関するクイズが挿入され、これらを解かないと物語を進めることはできない。このような傾向から対象となる年齢はやや高めとなるが、ゲームオーバーの概念はない。コマンド選択に失敗した場合は正しいコマンドを選択するまで話が進まないか、少し前のシーンに戻されやり直しとなるだけである。
[編集] メッセージの表示形式
当初はロムカセットを越える大容量の記憶容量を持つメディアとして登場したものの、半導体の大容量化・低廉化によりその優位性を奪われたディスクカードで発売された。ゲーム内の文章は外国の人物名や地名、外来語などもすべて平仮名で表記され、片仮名と漢字はタイトル画面とスタッフロールのみでしか使用されていない。この手法はふぁみこんむかし話シリーズにも用いられている。昔話を題材としたこれらの作品では"味のある表現"と容認されたが、タイムツイストでは現代日本及び欧米を舞台としたため違和感を増した。
コマンドの選択後、その結果を表す文章はすべて少年の一人称で語られる。語り部がその場の状況を表現するふぁみこんむかし話シリーズとは異なる形式が採用された。
[編集] 世界観
このゲームの物語は実際の歴史を主題とするが史実を考証・再現したものではなく、タイムトラベルによるSF要素、悪魔の登場などのファンタジー要素が加えられている。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 序盤のあらすじ
人々の間で世紀末への不安が高まる1995年、9月25日の東京。主人公の少年は双方向テレビの占いサービスで見た「郊外の博物館で異性との出会いのチャンスあり」との予言を確かめるため「悪魔博物館」へやって来た。占いの予言通り、この博物館で同じくらいの年頃の少女に出会う。
お互いによい雰囲気となり、自己紹介を始めようとしたところで突如地震が発生する。思わず抱き合う2人だが地震は一向に収まらない。そこで動揺した少年は占いで聞いた「異性を射止める言葉」を厄払いのおまじないとして叫んでしまう。しかしこの言葉は悪魔を解放するための呪文であった。実は博物館の展示品「魔封じの壺」に封じ込められていた悪魔が占い番組のテレビ電波をテレパシーで乗っ取り、少年にこの呪文を唱えさせようと仕組んでいたのだ。
復活した悪魔は少年の若い肉体を奪い、さらにマスコミの取材から逃れて博物館の近所に建つ別荘に隠れていた物理学者シモン博士からは、彼がひそかに開発していた携帯型タイムマシン「タイムベルト」を奪った。体を強引に交換させられ朽ちた悪魔の姿となった少年は自分の体を取り戻すため後を追うが、悪魔とともに過去の世界へタイムスリップしてしまう。
[編集] 物語の舞台と登場人物
以下の年代、人物、時代背景等はすべてゲーム内での設定となる。物語中においてジャンヌ・ダルク、アレクサンダー大王、リンカーン、イエス・キリストは神から世の混乱を鎮める使命を授けられた"神の子"とされた。
ディスク | 時代 (西暦) |
国・場所 | 時代背景と出来事 | 物語に登場する歴史上の人物 | 物語のキーアイテム |
前編 | 1995年 | 日本・東京 | 世紀末への不安から占いが大流行 | (なし) | 悪魔の肖像画 |
1428年 | フランスの城下町 | 教会の主導で異端者に対する魔女狩りが行われる | ジャンヌ・ダルク | サバトの箱 | |
1944年 | ドイツ南部・捕虜収容所 | 第二次世界大戦、ナチス・ドイツのヨーロッパ侵略とユダヤ人迫害 | ヒトラー | ジプシーの守り札 | |
後編 | 紀元前4世紀ごろ | 古代ギリシア・アテネ | マケドニア王国の勢力拡大 | 幼年期のアレクサンダー大王、アリストテレス | いましめの鈴 |
1864年 | アメリカ合衆国・アトランタの綿花農場 | 南北戦争、奴隷解放宣言 | リンカーン | 悪魔の手 | |
紀元前4年ごろ | イスラエル・ナザレとベツレヘム | 受胎告知、キリストの降誕、マギの礼拝 | マリアとヨセフ、イエス・キリスト | 魔封じの壷 | |
1995年 | 日本・東京 | 核戦争により世界は崩壊 | (なし) | 悪魔の肖像画 |
[編集] キーアイテム
舞台となる各時代には物語に強く関わるキーアイテムが登場し、物語の進行とともにその謎が明らかにされる。悪魔の肖像画を除く5つの品々は悪魔博物館の館主により買い集められ、博物館の展示品とされた。
- 悪魔の肖像画
- 悪魔博物館の館主が世界各地の伝承を元に描いた悪魔の絵。未完のため悪魔博物館には展示されておらず、館主が自宅に飾っている。しかしそこに描かれた悪魔の姿は主人公の少年そのものだった。
- サバトの箱
- 不気味な装飾の施された重重しい箱。悪魔と契約を交わした司教がその契約書を隠した。
- ジプシーの守り札
- ペンダント状の古いお守り。星をかたどった金属製のプレートに魔除けの呪文が刻まれている。アメリカ軍人のクーガーが捕虜仲間から譲り受けた。
- いましめの鈴
- 持ち手の付いた小さなハンドベル。悪魔を退ける聖なる音色を放ち、ファラオが魔除けに使ったと伝えられる。アテネの医者ニクラスがスパルタの兵士から治療の礼として受け取った。
- 悪魔の手
- 醜く鋭い爪を持つ悪魔の手をかたどった像。悪魔崇拝者らが信仰の対象とし祀った。
- 魔封じの壺
- 美しい装飾が施された水滴形の壺。生まれたばかりのイエスの元を訪れた東方の三博士がイエスへの贈り物とした。成人したイエスは悪魔をこの壺へ封じ込めた。
以上で、作品の核心的な内容についての記述は終わりです。
[編集] 関連項目
関連作品
物語の内容に関する項目