ビタミンC
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ビタミンC (Vitamin C、VC) は、水溶性ビタミンの1種。生体の活動においてさまざまな局面で重要な役割を果たしている。化学的にはアスコルビン酸のL体のみをさす。
ヒトはアスコルビン酸を体内で合成できないため、必要量をすべて食事などによって外部から摂取する必要があり、ビタミンとして扱われている。一方、多くの動物にとっては、アスコルビン酸は生体内で生合成できる物質であるため、必ずしも外界から摂取する必要は無い。体内でアスコルビン酸を合成できないのは、モルモットやヒトを含む霊長類の一部などだけである。
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[編集] 役割
ビタミンCはアミノ酸の生合成に利用される他、副腎からのホルモンの分泌、脂肪酸をミトコンドリアに運ぶための担体であるL-カルニチンの合成など、体内で進行する水酸化反応に重要な役割を果たす。
結合組織でコラーゲンを生成する過程でもビタミンCは必要とされる。コラーゲンは三つ網状の繊維で体内では細胞間の至る所に存在し、組織を形作り肉体に適度の硬さと柔軟性を与えているものであるため、ビタミンCが不足するとコラーゲンの同化が進行せず、歯のぐらつき・血管の脆弱化・皮膚からの出血・怪我の回復や免疫機能の低下・軽度の貧血など、壊血病の諸症状を呈するようになる。同様に、コラーゲンを多く含む骨に対しても影響を与える。
また、ビタミンCは強い抗酸化作用を持つため、食品に酸化防止剤として添加される場合がある。工業的にはトウモロコシやキャッサバの澱粉由来のソルビトールから発酵法で生産されている。
[編集] 摂取
成人の1日あたり摂取量としては 100mg ほどが望ましいとされる。[1]。余剰のビタミンCは一般的には尿中に排出されるが、数グラムレベルで大量に摂取すると下痢を起こす可能性がある。
ノーベル賞受賞者として知られるライナス・ポーリングが、病気の予防と健康の増進のために1960年代頃からビタミンCを用いた健康法(メガビタミン主義と呼ばれる)を広める活動を行っていたことが知られている。今日でのサプリメント産業はこの活動に由来する。
レモン・ライム・オレンジ・グレープフルーツなどの柑橘類のほか、アセロラ、キウイフルーツ、トマトはビタミンCの含有量が非常に多い。その他にビタミンCの多く含まれる食品としては、グァバ、パパイヤ、ブロッコリー、芽キャベツ、ブラックベリー、イチゴ、カリフラワー、ほうれん草、マスクメロン、ブルーベリー、パセリがある。
ビタミンCを摂取するための補助食品もよく利用されている。ビタミンCは壊血病の予防の他、鉄分の吸収の促進、傷の治癒にも利用される。また、風邪やインフルエンザ、その他の感染症に対して薬と併用される。その理由としては、これらのストレスや治癒に際してはアスコルビン酸の要求量が増大するからというものである。
多くの食品やサプリメントにおいて、「レモン○個分のビタミンC」という表現が用いられるが、このとき「レモン1個分のビタミンC」は 20mg に換算される。この表記は農林水産省によって昭和62年に制定された「ビタミンC含有菓子の品質表示ガイドライン」によるものであるが、ビタミンCが主成分であるビタミン添加菓子を対象とするものであり、それ以外の食品やサプリメントに対して用いることは適当でない。また、このことから『レモンはビタミンCを豊富に含む果物である』と誤解されがちだが、実際には同じ柑橘類であるグレープフルーツやユズよりも含有量は低い(100g中)。
ビタミンCは、ライナス・ポーリング氏の学説により風邪予防に効果的であるとされているが、後の検証結果において「ビタミンCは、摂取により感冒症状の持続期間に若干の効果が見られるものの予防に対しては効果がない」との報告が出されている。[2]
[編集] 歴史
1920年、ドラモンドが還元性のある壊血病因子をビタミンCと呼ぶことを提案した。 1927年にはセント-ジェルジがウシの副腎から強い還元力のある物質を単離し、「ヘキスロ酸」として発表したが、1932年にこれがビタミンCであることが判明した。1933年にハースによってビタミンCの構造式が決定されてアスコルビン酸と命名され、1933年にはライヒシュタインが有機合成によるビタミンCの合成に成功した。
[編集] 参考文献
- ^ 厚生労働省「日本人の食事摂取基準について」, 平成16年11月22日.[1]
- ^ 「感冒に対するビタミンC」Douglas RM, Chalker EB, Treacy B. Vitamin C for the common cold. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.[2]
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