ヘタレ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヘタレとは情けない人物を指す俗語、そのような人物の情けない様を表す言葉である。元々は関西方言で、「弱って座り込む」という意味の動詞「へたる」が名詞化したものである。時に「屁垂れ」とも漢字が当てられるが、これは誤用である。
この項目では主にサブカルチャー作品に於ける「ヘタレ」について解説する。
目次 |
[編集] サブカルチャーに於けるヘタレ
漫画やアニメーション作品等において、主人公などといった主要キャラクターと同等か、それ以上の能力をもっていたキャラクターが、他キャラクターの成長や本人の肉体的・精神的な理由において弱体化する事をヘタレ化と称する。
[編集] 作品が進むにつれてヘタレ化するキャラ
バトル漫画など戦闘描写がメインの作品においてヘタレとされるキャラは、作品当初に比べ主人公や敵が作品を進むにつれ強くなっていく(インフレ化)のに対して、戦闘能力がついていけなくなるキャラクターを指す事が多い。中でも『ドラゴンボール』のヤムチャは、このタイプのヘタレの代名詞であり、そのため「ヤムチャ系キャラ」とも呼ばれる。このタイプのヘタレは引き立て役としてのかませ犬である事が多く、バトル漫画など戦闘描写がある作品においては「ヘタレ=かませ犬」という式が成り立つ場合も少なくない。戦闘描写がメインでは無い作品でも、登場当初に比べると物語後期の印象がヘタレ化しているキャラも居る。
また、特撮ものに於ける「再生怪獣」や「再生怪人」の類もヘタレ化の一例と言えよう。該当していなかったのは「ウルトラマンメビウス」におけるロベルガー二世など少数に過ぎない(ロベルガー二世は「無敵」の呼び声も高い80をあわや敗北寸前にまで追い込んだほど)。 戦隊シリーズに於ける途中参入戦士の多くもヘタレ化するものが多く、特に「忍風戦隊ハリケンジャー」に登場したゴウライジャーはその最たるキャラと言えよう。逆に「爆竜戦隊アバレンジャー」のアバレキラーは最終的には不死身ではなくなったものの、最後まで異常な強さを見せつけ、「特捜戦隊デカレンジャーVSアバレンジャー」出演時にはアバレイエロー 樹らんるをして「とっても頼もしい味方」と言わしめていた。
[編集] いじられるヘタレ
いじられる脇役(いじられキャラ)は、作中の迷言や珍行動、俗称などからインターネットなどで”ネタ”にされる事が多い。このタイプのキャラは根っからのヘタレであるものが多いが、どこか憎めない所も持っている事も多く、そういう所が逆に人気となるケースもある。また、中には後にパワーアップしたり、力関係が逆転したりするキャラクターもいる。
[編集] 我侭なヘタレ
当初から自己中心で性質が悪く、常に憎たらしい存在として位置する者に挙げられる。当初は大事(または豪語)を言い、権力などで周囲の者をもねじ伏せ、扇動し好き放題するが、異変が起こると激しく動揺してしまい、挙句に自分一人では何もできなくなる。このようなキャラが辿る結末は、当然の報いとして散々な目に遭う事が多い。
[編集] ヘタレから成長したキャラ
逆に物語が始まった当初はヘタレだったが、後に肉体的にも精神的にも成長してメインキャラになるケースもある。このタイプはDRAGON QUEST -ダイの大冒険-』のポップが挙げられるだろう。近年の恋愛ゲームなどのサブカルチャー作品においてはヤンデレヒロインとヘタレ主人公の組み合わせも増えてきているが、一部、主人公がヘタレから精神的に成長して、狂気へ走るヒロインを救うケースも稀にある(『つよきす』の対馬レオ、『ひぐらしのなく頃に』の前原圭一など)。
これらの「物語開始当初はヘタレだったが、後に成長した」タイプのキャラクターは好感を持たれる傾向が強い。
[編集] 恋愛ゲームにおけるヘタレ主人公
恋愛ゲーム作品等においても、主人公等の恋愛をはじめとした様々な問題場面に直面した場合、堂々とした態度で臨まず、優柔不断な態度やあるいは逃避するなど、情けない行動やその無様さを指摘する場合が多い。これは複数ヒロインのシナリオクリアというシステムを多く含む恋愛ゲームが採用している事情から、極端に自己主張が強い主人公の場合アクがついてしまうため、むしろ主人公像をなるべく白紙化するようにしている事情や、シナリオの展開・盛り上げ上から止むを得ない側面もあるのだが、総じて無様ぶりが滑稽過ぎたりすると「ヘタレ主人公」として蔑視される傾向が見られる。こういった主人公が登場する作品そのものはかなり昔から存在しているため、どのキャラクターが起源かは諸説あり判定が難しいが、恋愛ゲームに限定するならば『WHITE ALBUM』の主人公・藤井冬弥と、『君が望む永遠』の主人公・鳴海孝之が、ヘタレ主人公の存在を一般化させたという点では衆目が一致するところである。
『君が望む永遠』や『School Days』等といったゲームでは、物語展開が陰惨になり、ヒロインの描写も従来の美少女ゲームにはない醜悪な様相(時には猟奇的なものもある)を見せ、カルト的な人気を博す事も多い(俗称としてヤンデレと呼ぶ)。特に後者は、俗称がオタク以外の世間に浸透するほどの結果ともなった。後述のメディア展開による影響と異なり、こちらが正統なヘタレとヤンデレと称される。
[編集] アニメ化の際、ヘタレに設定変更された恋愛ゲームの主人公
近年において恋愛アドベンチャーゲームのアニメ化の中には、原作を逸脱し、時にはコンセプトを無視した展開(鬱展開など)を目指した結果、主人公が本来の性格設定と違う描写(一部のヒロインに対して無関心を決め込む、思考が自己中心的、言動・行動が破綻している、態度が情けない・頼りないetc)がされて「ヘタレ主人公」と設定変更される例が増えた。これらの作品は、ヒロインも本来の性格設定と違う描写(腹黒化、メイン格からの背景化、成長過程など設定が無視される、酷い場合は「ヤンデレ」化etc)がされる事が多く、原作ゲームファンから非難を浴びる一方、ヒロインの描写がアニメ版を支持するファンにカルト的な人気を博すなど矛盾した現象が起きたりする。こうした悪影響ととれる変化は、原作(作品)やキャラクターのイメージに混乱を招くこと(主にアニメでヤンデレ化したヒロインが原作でもヤンデレとみなされる、ヤンデレを期待して原作に触れたらコンセプトが全く違っており原作を批判する等)になり、原作ファンから更に非難が高まるケースも多い。その一方でアニメ化の際、ヘタレ化した主人公に関しては、アニメ版を支持するファンからも単なる「ヘタレ主人公」としてあしらわれ、軽視される傾向が強い(このことからヘタレ化した主人公は、ヤンデレ化したヒロインのかませ犬とすら言える)。知名度は高くないが、小説・漫画・ドラマCDといった他のメディアでもこうしたことが起きることがある。
こうした問題の原因に、知名度の問題で利益が出ない危険性がある完全オリジナルより、一定の利益を見込める版権付き作品の方が”安全”な事が一つ挙げられる。このため完全オリジナルでやるべき話を、より企画が通りやすい版権付き作品でやってしまう事も原因の一つである。それに加えアニメ製作に原作関係者が十分な監修ができなかったことや、アニメ製作者が原作サイドより強い力を持ち、好き勝手に作品を改変してしまうことにより起こるとされ、今後のアニメ製作の課題と疑問点となっている。また、原作サイドが特定のヒロインと主人公(ヒーロー)を結びつけようとして監修した結果、こうした問題が起こることもある。
[編集] 代表的なヘタレキャラクターの一覧
[編集] ヘタレ化したキャラクター
- 『ドラゴンボール』のヤムチャ
- 『キン肉マン』のウルフマン
- 『ジョジョの奇妙な冒険 第六部 ストーンオーシャン』のナルシソ・アナスイ
- 『機動戦士Zガンダム』のジェリド・メサ
- 『ひぐらしのなく頃に』の園崎魅音
- 『瀬戸の花嫁』の不知火明乃
- 『特捜戦隊デカレンジャー』のイーガロイド
- 『ウルトラマンマックス』のウルトラマンゼノン
- 『ウルトラマンメビウス』の円盤生物ノーバ
- 『DEATH NOTE』の魅上照
- 『BLEACH』の石田雨竜
- 『マリア様がみてる』の支倉令
[編集] ヘタレと称されるいじられキャラ
- 『仮面ライダー剣』の橘朔也(仮面ライダーギャレン)
- 『仮面ライダー響鬼』の裁鬼(佐伯栄)
- 『KOF MAXIMUM IMPACT』のミニョン・ベアール
- 『コードギアス 反逆のルルーシュ』のジェレミア・ゴットバルト(オレンジ)
- 『つよきす』の鮫氷新一(フカヒレ)
- 『マリオシリーズ』のルイージ
- 『DEATH NOTE』の松田桃太
- 『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』のスタースクリーム
- 『マリア様がみてる』の支倉令
[編集] 自己中心的なヘタレキャラ
- 『ONE PIECE』のスパンダム
- 『キン肉マン』のスペシャルマン、カナディアンマン
- 『Zガンダム』のパプテマス・シロッコ
- 『機動戦士ガンダムSEED』のムルタ・アズラエル
- 『鋼の錬金術師』のダンテ
[編集] 当初はヘタレだったが後に成長したキャラクター
- 『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジ
- 『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』のポップ、ハドラー
- 『未来日記』の天野雪輝
- 『瀬戸の花嫁』の満潮永澄
- 『ストレンジ・プラス』の恒(主人公)
- 『つよきす』の対馬レオ(主人公)
- 『ひぐらしのなく頃に』の前原圭一(主人公の1人)
- 『仮面ライダーアギト』の氷川誠、北條透
- 『アイシールド21』の桜庭春人
- 『ドラえもん』の野比のび太(主に劇場版)
- 『ONE PIECE』のウソップ
- 『無限のリヴァイアス』の相葉昴治
- 『仮面ライダー555』の三原修二
- 『テイルズオブジアビス』のルーク・フォン・ファブレ
[編集] 恋愛ゲームのヘタレ主人公
- 『WHITE ALBUM』の藤井冬弥
- 『君が望む永遠』の鳴海孝之
- 『School Days』の伊藤誠
[編集] アニメ化などの際、ヘタレに設定変更された恋愛ゲームの主人公
- 『D.C. ~ダ・カーポ~』、『D.C.S.S. ~ダ・カーポ セカンドシーズン~』の朝倉純一
- 『SHUFFLE!』の土見稟
- 『Gift ~eternal rainbow~』の天海春彦
※一部、例外有り
[編集] その他の用法
- クロイツフェルト・ヤコブ病(いわゆる狂牛病)では、牛海綿状脳症を発病した牛がへたれ牛と呼ばれ、その転用が問題となった。