マクロス ゼロ
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『マクロス ゼロ』(MACROSS ZERO)は、2002年から2004年にかけて制作された日本のOVA。全5巻。 SFアニメ『超時空要塞マクロス』の前史にあたる作品である。東京国際アニメフェア2004において優秀作品賞OVA部門を受賞した。
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[編集] 概要
『超時空要塞マクロス』初放送(1982年)から数えて20年目に当たる2002年、20周年記念として制作されたのが本作である。地球がゼントラーディ軍と開戦する1年前、2008年の南海の楽園を舞台に、現代文明と伝統文明の相克、人類創生の秘密が描かれる。
他のマクロスシリーズとは異なり、未来では無く過去に焦点を当てた作品であるため、現実の世界の年代に近く、主人公が最初に乗っている機体はF-14で、その相手はMig-29という、いずれも製作当時の時点で現用の機体である。これらに混じって可変戦闘機が登場するため、両者に違和感が生じない様なデザイン上の工夫が凝らされている。出現当事、異論を生んだ水平尾翼の無いVF-1バルキリーのデザインも、VF-0のベクタードスラストノズルの表現があれば皆納得したであろう。
1994年制作の『マクロスプラス』で一部のみ使用されていた3DCGは、10年後の本作では、ほとんどのメカニック描写で使用されている。CGで描かれる名高い板野サーカスは濃密かつハイ・スピードで、見ていて酔いそうになるほど。またコックピット内の描写も素晴らしく、特に、1巻のキャノピーディスプレイに写っているミサイル群を視線を送るだけで次々にロックし撃墜していくシーンは、ファンを唸らせ、また納得させた。この作品の戦闘機のCGは他のアニメとは違って非常に動きが馴染んでいるが、これはアニメーションがキーフレーム内を自動補間するのではなく、通常のアニメと同じように全てのモーションを手打ちしているためである。尚、劇中に登場するリアクティブアーマー装備VF-0や水中用デストロイド、最後に登場するプロトタイプ・モンスターだけは手描き。(リアクティブアーマードは3巻の空母の甲板にいるときにほんの一瞬だけCG描写がある。ただし動かない)
最近の河森正治作品の例にもれず本作でも自然との協調が唄われているが、これらの描写には、以前の作品である『地球少女アルジュナ』で開発された、生物を3DCGで描画するテクニックが随所に使用されている。このためなのか作品中にはアルジュナ自体の引用が見られる。
そして伝奇物語を得意とする蓜島邦明の音楽は、戦闘シーンでは緊張感があふれ、自然の描写ではどこまでも伸びやかである。マダガスカル島出身の声楽家Holy Razの澄み渡る歌声も作品を美しく彩る。ことに五話後半の重唱はオペラに似て素晴らしく、主人公とヒロインの心理を代弁するものとなっている。
[編集] ストーリー
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
1999年7月、後にマクロスと名づけられる監察軍の宇宙戦艦が地球へ落下した。オーバーテクノロジーの奪い合いに端を発する争いは、やがて統合戦争と呼ばれる世界大戦に発展する。戦争末期の2008年、統合軍パイロット工藤シンは撃墜され、今なお伝説が生きるマヤン島に流れ着く。そこで彼が会ったのは島の巫女サラ・ノームだった。
一方、異星人の宇宙戦艦と同様のエイリアン反応を示す物体がマヤン島付近の海底に沈んでいることが判明し、統合軍と反統合同盟軍は新型可変戦闘機VF-0 フェニックスとSV-51を配備した回収部隊を派遣する。マヤン島を舞台に戦争が始まる時、伝説に謡われた「鳥の人」が目覚めて「滅びの歌」を唄うとき、世界は破滅の淵を覗うことになる。
[編集] スタッフ
- 原作・監督・メカニックデザイン: 河森正治
- 脚本: 大野木寛
- キャラクターデザイン・作画監督: 齋藤卓也
- 特技監督: 板野一郎
- メカニックデザイン: 石垣純哉
- 鳥人デザイン: 宮武一貴
- 音楽: 蓜島邦明
- 美術監督: 太田大
- 美術設定: 平沢晃弘
- 色彩設計: 海鉾重信
- 音響監督: 三間雅文
- 撮影監督: 前田庸生
- 編集: 竹内康晃
- メカニックアート: 天神英貴
- アニメーション制作: サテライト
- 製作: ビックウエスト、バンダイビジュアル
[編集] 主題歌
- メインテーマ
- 『ARKAN』 作詞:Holy Raz 作曲・編曲:蓜島邦明 歌:Holy Raz (第1話エンディングテーマ)
- エンディングテーマ
- (第2話) 『Life Song』 作詞・作曲・編曲:蓜島邦明 歌:福岡ユタカ(Yen Chang)with Holy Raz
- (第3話) 『yanyan』 作詞・作曲・編曲:蓜島邦明 マヤン語協力:河森正治 歌:南里侑香
- (第4話) 『Forest Song』 作詞・編曲:蓜島邦明
[編集] 主要登場人物
括弧内は声優名
- 工藤 シン Shin Kudou (鈴村健一)
- 主人公。18才。日系二世のアメリカ人。統合戦争で両親を亡くし、統合軍に入隊後パイロットとなる。腕は優秀だが、どこか寂しげ。物語冒頭ではF-14に操り、その後VF-0(D型、A型)を操縦する。
- サラ・ノーム Sara Nome (小林沙苗)
- 16才。呪術師の家系に生まれ、マヤン島の古代文明を守る「風の導き手」。しとやかだが内に激しい気性を秘める。島に騒動を招いたシンを警戒していたが…
- マオ・ノーム Mao Nome (南里侑香)
- 13才。サラの妹。元気一杯だが、姉と違いマヤン島の生活には退屈気味。文明人のシンに興味を抱く。
- ロイ・フォッカー Roy Focker (神谷明)
- 26才。統合軍のエースパイロットで、空母アスカ艦載機隊を率いる。VF-0(S型)を操縦。実線訓練に於いてはシンらVF-0の操縦に習熟していないパイロット達に対してアグレッサーを務めるなど古くからVF-0に関わっていた事をうかがわせる。本作で唯一『超時空要塞マクロス』より登場する、旧作と本作を繋ぐ人物。
- エドガー・ラサール Edgar Lasalle (小森創介)
- 18才。陽気な統合軍レーダー士官。シンと常にコンビを組みF-14及びVF-0(D型)の後部席を担当。なおマクロス世界でラサール姓をもつキャラクターとして、もう1人クローディア・ラサールがいる。
- アリエス・ターナー Aries Turner (進藤尚美)
- 26才。文化人類学者。フォッカーの大学時代の先輩。統合軍の嘱託として空母アスカに乗り込んでいる。
- ヌトゥク Nutuk (大木民夫)
- 鳥の人伝説を語り継ぐマヤン島の長老。
- 中島雷造 (有本欽隆)
- 空母アスカの技術班長。熟練の技でVF-0のパイロットから信頼されている。
- ノーラ・ポリャンスキー Nora Polyansky (高山みなみ)
- 反統合軍の女性パイロット。真紅のSV-51を駆る凄腕で、二度に渡りシンを撃墜する。
- D.D.イワノフ DD. Ivanov (大友龍三郎)
- 反統合軍のパイロット。戦場を渡り歩く傭兵で、統合軍のテストパイロット時代はフォッカーの教官だった。
- ハスフォード博士 Dr. Hasford (野沢那智)
- アリエスを指導した学者。プロトカルチャー干渉仮説を提唱する。
[編集] 登場メカニック
[編集] 統合軍
- グラマン F-14トムキャット
- ノースロップ・グラマン/ストンウェル/新星 VF-0フェニックス
- VF-0A (一般兵士用)
- VF-0S (指揮官用)
- VF-0D (複座型)
- 追加装備:リアクティブアーマー、ゴーストブースター
- デストロイド・シャイアン
- プロトタイプ・モンスター
- 空母 CVN-99 アスカ-II
[編集] 反統合同盟軍
- MiG-29フルクラム
- スホーイ/イスラエル・エアクラフト・インダストリーズ/ドルニエ SV-51
- SV-51α (一般兵士用)
- SV-51γ (エースパイロット用)
- 追加装備:ツインブースター
- デストロイド・オクトス
- 強襲潜水艦 アゥエルシュテット
[編集] 関連商品
[編集] CD
ビクターエンタテインメントより発売。
- 「マクロス ゼロ ORIGINAL SOUNDTRACK 1」 2003年1月22日発売
- 「マクロス ゼロ ORIGINAL SOUNDTRACK 2」 2004年11月10日発売
[編集] DVD
バンダイビジュアルより発売。
- マクロス ゼロ 第一章「海と風と」 2002年12月21日発売
- マクロス ゼロ 第二章「地上の星」 2003年05月23日発売
- マクロス ゼロ 第三章「蒼き死闘」 2003年11月28日発売
- マクロス ゼロ 第四章「密林」 2004年05月28日発売
- マクロス ゼロ 最終章「鳥の人」 2004年10月22日発売
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
マクロスシリーズの作品 | |
テレビアニメ: | 超時空要塞マクロス - マクロス7 |
OVA: | Flash Back 2012 - マクロスII - マクロスプラス - マクロス ダイナマイト7 - マクロス ゼロ |
劇場版: | 愛・おぼえていますか - マクロスプラス MOVIE EDITION - マクロス7 銀河がオレを呼んでいる! |
ゲーム: | VF-X2 |
漫画: | マクロス7 トラッシュ |
マクロスシリーズの関連項目 | |
関連項目: | シリーズ一覧 - ゲーム作品 |