ワンセグ
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ワンセグは日本において、主に携帯電話などの携帯機器を受信対象とする地上デジタルテレビジョン放送である。
2006年4月1日午前11時(日本時間)より、東京・名古屋・大阪など全国29都府県で開始し、2006年12月1日にハイビジョン放送と同時に全都道府県で放送を開始した。現在はほぼ全ての放送局で行われている。
正式名称は「携帯電話・移動体端末向けの1セグメント部分受信サービス」であるが、本項では「ワンセグ」と呼称して解説する。
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[編集] 概要
日本の地上デジタルテレビジョン放送(ISDB-T)では、1つのチャンネルが13のセグメントに分かれた構造となっており、そのうち、ハイビジョン放送(HDTV)には12セグメント、通常画質の放送には4セグメント割り当てられている。モバイル端末(主に携帯電話)は画面が小さく、性能が低いため、1セグメントを割り当てて低解像度の放送を行うこととなった。この「1セグメント」を略して「ワンセグ」と呼ばれている。持ち運びできる新しいメディアとして期待されている。
UHF電波を利用するため、テレビの視聴とデータ放送は無料である(ただし、データ放送から詳しいコンテンツを受信するために放送局とパケット通信する場合はパケット通信料が掛かる。この場合、画面にサーバー受信可否を問う画面が必ず表示される)。
受信可能な機器は放送開始当初は携帯電話3機種だけだったが、チューナーを安価で搭載でき、移動時でも安定した受信が可能であることから、放送開始直後から一気に拡大し、各キャリアの携帯電話だけでなく、カーナビゲーション、ノートパソコン、電子辞書、携帯型ゲーム機、USB接続型チューナーなど多岐に渡っている。
[編集] 開局状況
サービス開始を前に、2006年2月に都営地下鉄で地下鉄構内での再送信による受信の実験を行った。
2006年4月1日に、同月までに地上デジタルテレビジョン放送が始まっている地域の放送区域で本放送が開始された。ただし、移動体端末での受信のため、路上・屋内など地上10m未満の高さで受信する場合、放送区域内でも電界強度が弱い場合は受信できない。12月1日には各都道府県のNHK・民放全局で地上デジタル放送が開始されたのに伴い、全局に拡大してスタートしている。ただし放送大学と独立UHF局である群馬テレビ・とちぎテレビ・奈良テレビ放送はワンセグ放送を行っていない。ハイビジョン放送と同じく、2010年には全国全地域で受信できるようになる予定とされている。遊園地、博物館、大学等で地区を限定して構内案内やショッピングの案内を行うコミュニティワンセグ構想があり、社会実験が数例行われている。
[編集] ワンセグ用データ放送
ワンセグでは、一般のテレビと同じ番組に加え、各テレビ局が番組を楽しむためにワンセグ専用に制作したデータ放送コンテンツも利用できるため、放送局がそれぞれの特色を活かした展開を図っている。
ワンセグ専用データ放送には「放送と通信の連携機能」がふんだんに用意されており、この事からデータ放送に対しては、携帯電話事業者各社からも、また次世代のモバイル関連ビジネス活性化の観点からも各所から大きく期待されており、今後テレビ各局によるさらなる活性化が予測される。
データ放送を含めたコンテンツ製作で、日本テレビはモバイルコンテンツフォーラムが主催するモバイルプロジェクトアワード2006や、2006年グッドデザイン賞も受賞している。リクルートやNTTドコモとの連携も展開している。
[編集] 番組表
番組タイトルと詳細情報が送られており、対応機器で見ることができる。ただし、送られているのはそのテレビ局の分だけであり、他局の番組表はそのテレビ局を受信しないと見ることができない(蓄積して複数局分見られる機器と、視聴しているテレビ局しか見られない機器とがある)。また、見ることができるのは現在の所放送中番組を含め最大10番組程度の様である(テレビ局により3番組分しか放送していないところもある)。
[編集] 世界の移動体通信の動向
日本以外の地域でも移動体向けの地上デジタルテレビ放送が始まりつつあるが、その方式には大きく分けて日本方式(ワンセグ: ISDB-Tの部分受信)、欧州方式(DVB-H)、韓国方式(T-DMB)の3つがある。このうち、セグメントの部分受信という方式を採っているのは日本方式だけである。ワンセグは既存の地上デジタルテレビ放送と同じアンテナから送出されるので、放送局側の準備が整い次第、地上デジタルテレビ放送が受信できる地域ではワンセグも受信できる事になる(一部ハイビジョン放送の放送開始から遅れる地域もある)。
なお、ワンセグは欧州方式や韓国方式に比べて画質が落ちるが、エリアが圧倒的に広い。
[編集] 時刻出し
地上デジタル以上に強力なデジタル圧縮と伸張が行われ、4秒程のタイムラグが発生するので、NHK総合テレビジョンほか一部の放送局では時刻出しを行っていない。また、一部放送局ではワンセグ用に時刻をカスタマイズして送り出している。
[編集] 問題点
- 映像・音声共にビットレートや解像度が低いゆえ画質は良くなく、フレーム数も少ないため、スポーツなどの映像がコマ落ちするという欠点もあり、状況によりアナログ放送の方が高画質となる。携帯機の大画面化が進む以上、画質の向上も求められている。
- 移動時には電波状況が刻々と変化するため、瞬時に弱電界に入ると音声が途切れ途切れになり、視聴者に不快感を与える。
- ワンセグ用のEPGは10番組先までしか送信されない(ただし、携帯電話やパソコン向けのチューナーはインターネット経由で補う事が多い)。
- 建物の中に入ると電波が大幅に弱くなり視聴できなくなる場合もある。
- ワンセグ対応携帯電話は、ユーザーがいつどのチャンネルをどのくらいの頻度で視聴したかなどの情報をアプリケーション内に保存する事ができるため、そのデータを携帯電話会社に送信する事により、視聴動向を知る事が技術的には可能である。そのため、ユーザーの意図しない形で情報が収集されるのではないか、と指摘する声もある。
- 地上アナログと地上デジタル(TV)では約2秒のタイムラグが存在するが、ワンセグでは地上デジタルよりさらに1~2秒のラグが有り、地上アナログとワンセグとの比較では約4秒程のズレが生じてしまう。
[編集] 問題点の改善策
[編集] ワンセグ対応携帯電話の受信電波改善策
- ワンセグ対応携帯電話は施設内での視聴は現状では困難を極める場合も多いがアナログテレビの室内アンテナ(参考画像(1)参照)を活用した方法で大幅に改善される。最初にワンセグ対応携帯電話のアンテナを伸ばし室内アンテナ(画像(1))と近づける(参考画像(2)参照)。その時に必ずアンテナ同士を接触させなければならない。ワンセグ対応携帯電話アンテナ単体では微弱な受信電波であったが、携帯&室内アンテナの場合は受信電波が大幅に改善され快適な視聴が可能である。なおテレビと接続するコード部分(コネクタ)は不要な為、本体に巻き付けておくか(画像(1)参照)切断しても構わない。
- ワンセグ(携帯ワンセグ)の受信電波はUHF電波である事からアナログテレビ室内アンテナのUHF側を利用する事で大幅な電波増強が可能となる。元々デジタルテレビはクリアな画質であるため電波さえ改善されれば快適な視聴ができる。
- ワンセグ(携帯ワンセグ)の移動中の受信電波は側面に山間部があると受信電波が悪く、高層ビルに囲まれていても一部不安定になる(ビル等の障害物が無い)。平野部では比較的良い傾向にある。つまり障害物が無い平坦なルートで移動すると受信電波は改善される。
- 携帯電話の場合、どうしても受信できない場合は別売りの周辺機器、「TVアンテナ接続ケーブル」を購入してTVアンテナのプラグに接続すると安定した環境で受信できる。
[編集] 技術/仕様
開発に至るまでは、MPEG-4のライセンス問題や、MPEG4の代わりにH.264を採用するとCPUやLSIの性能を高くしなければならないなどの問題も生じた。さらに移動体の中でハイビジョン放送(12セグメント)の受信実験をしたところ、専用アンテナを付ければ十分に受信できるという結果が出た。この事から必要性を疑われる事もあった。
[編集] 帯域
移動体での受信では、固定で受信する通常の放送やハイビジョンに比べて受信環境が厳しくなる。そのため、変調にはノイズに強いものが採用された。なお、日本の地上デジタル放送(ISDB-T)では13セグメントを最大3つの階層に分割し、階層ごとに使用セグメント数、変調方式、畳み込み符号の符号化率などを変える事ができる。
- セグメント数: 1(channel #0 center area)
- 変調方式: QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)
- 畳み込み符号化率(Convolutional code rate): 2/3
- ガード比: 1/8
- ビットレート: 最大416kbps(52KB/s)
[編集] 圧縮技術
映像圧縮技術には、MPEG-4の2倍、MPEG-2に対しては4倍以上という圧縮品質を実現したH.264が採用された。さらに音声にはAACが採用されている。なお、低ビットレートにおいて音質を改善する追加技術SBRの適用に関しては放送局による。
- 動画規格: H.264/MPEG-4 AVC Baseline Profile
- 解像度: 320×240(最大)
- 動画ビットレート: 128kbps(16KB/s)(例)
- フレームレート(コマ数): 15fps(1秒あたり15枚)
- 音声規格: MPEG-2 AAC(SBR技術の適用は放送局による)
- 音声仕様: モノラル、ステレオ、デュアルモノ
- 音声ビットレート: 64kbps(8KB/s)(例)
- メタデータ記述規格: BML(Broadcast Markup Language)
- メタデータビットレート: 約60kbps(約7.5KB/s)(例)