北総鉄道北総線
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北総線(ほくそうせん)は、東京都葛飾区の京成高砂駅と千葉県印旛郡印旛村の印旛日本医大駅を結ぶ、北総鉄道が運営する鉄道路線である。
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[編集] 路線データ
- 路線距離:32.3km(京成高砂駅~小室駅間19.8km/小室駅~印旛日本医大駅間12.5km)
- 軌間:1435mm
- 駅数:15駅(起終点駅含む)
- 複線区間:全線複線
- 電化区間:全線(直流1500V)
- 閉塞方式:自動閉塞式
- 保安装置:北総鉄道・京成電鉄・新京成電鉄・京浜急行電鉄・芝山鉄道・都営地下鉄浅草線で使用されている1号型ATS。C-ATSに更新予定。
- 最高速度:105km/h(現状、通勤型車両による)
[編集] 沿革
京成高砂駅~小室駅間は、千葉ニュータウン建設開始に伴い、1972年3月の都市交通審議会(現在の運輸政策審議会)答申第15号が示した2本の東京都心直結ルートの一つで、「地下鉄1号線(都営地下鉄浅草線)を延伸し、京成高砂駅で京成線より分岐し、松戸・市川両市境を東進、鎌ケ谷市初富を経て千葉ニュータウン小室地区に至る路線」である。 千葉ニュータウン内の交通路整備を優先するため、北初富駅~小室駅間を北総線第1期として先行開業することとし、1974年、日本鉄道建設公団民鉄線対象工事として着工、千葉ニュータウン西白井地区、小室地区の町開きに合わせて、1979年3月に開業した。同時に暫定的に新京成線に乗入れ、松戸駅まで相互直通運転を開始した。(新京成線との直通運転は、第2期線開業後の1992年に廃止された。)
北総開発鉄道は、本来千葉ニュータウンと東京都心を直結するのが使命であるため、1983年に第2期線の建設に着手し、1991年、京成高砂駅~新鎌ヶ谷駅間を開業、北総開発鉄道、京成電鉄、東京都交通局(浅草線)、京浜急行電鉄の4者による相互直通運転を開始した。
小室駅~印旛日本医大駅間は、同じ答申で示されたもう一つのアクセスルートの一部で、地下鉄10号線(都営地下鉄新宿線)を延伸して鎌ケ谷市初富に至り小室まで前記の路線と併走し、その先の印旛松虫地区に至る路線の一部である。本来、千葉県営鉄道として建設される予定であったが、1978年3月に千葉ニュータウン事業に参加した宅地開発公団(後の住宅・都市整備公団、都市基盤整備公団、現在の独立行政法人都市再生機構)が小室~印旛松虫間の鉄道敷設免許を譲り受けて建設、開業したものである。住宅・都市整備公団千葉ニュータウン線として小室駅~千葉ニュータウン中央駅間が1984年に開業。1995年に印西牧の原駅まで、2000年に印旛日本医大駅まで延伸され、全通した。
千葉ニュータウン線は、列車の運行、旅客営業、鉄道施設の保守業務などを北総開発鉄道に委託していたが、地方鉄道法の廃止、鉄道事業法の施行に伴って、1988年、住宅・都市整備公団が第3種鉄道事業者として線路・駅などを保有し、北総開発鉄道は施設を借り受けて運行、管理を行う第2種鉄道事業者となり、その後の延伸区間も同様の扱いとなっている。その際、路線名も北総線区間を含めて北総・公団線とされた。
2004年7月1日に社名が北総鉄道と変更された。また、都市基盤整備公団が都市再生機構に改組され、同時に公団の保有する鉄道施設(小室駅~印旛日本医大駅間の線路・駅や車両など一式)について、京成電鉄全額出資で設立された新会社・千葉ニュータウン鉄道に移管された。それに伴い、北総路線を呼ぶ際「公団」が外されて北総線となっている。
[編集] 年表
- 1979年3月9日 北総線(第I期)北初富駅~小室駅間(7.9km)開業。同時に新京成線との相互直通運転開始。
- 1984年3月19日 住宅・都市整備公団千葉ニュータウン線小室駅~千葉ニュータウン中央駅間(4.0km)開業
- 1988年4月1日 小室駅~千葉ニュータウン中央駅間(4.0km)で北総開発鉄道が第2種鉄道事業者、住宅・都市整備公団が第3種鉄道事業者となる。北初富~千葉ニュータウン中央間(12.7km)を併せて「北総・公団線」に改称
- 1991年3月31日 北総線(第II期)京成高砂駅~新鎌ヶ谷駅間(12.7km・第1種鉄道事業)開業。同時に4者による相互直通運転開始
- 1992年7月8日 新京成線に新鎌ヶ谷駅開業。新京成電鉄との相互直通運転廃止。同時に北初富駅~新鎌ヶ谷駅間(0.8km)廃止
- 1995年4月1日 千葉ニュータウン中央~印西牧の原間(4.7km・第2種鉄道事業)開業。
- 1998年3月14日 JR武蔵野線に東松戸駅開業。
- 1999年11月25日 東武野田線に新鎌ヶ谷駅開業。
- 2000年7月22日 印西牧の原駅~印旛日本医大駅間(3.8km・第2種鉄道事業)開業。印旛車両基地の共用開始に伴い、西白井の検修施設を閉鎖。
- 2004年7月1日 都市基盤整備公団保有区間の千葉ニュータウン鉄道への移管に伴い、「公団」を外し「北総線」に改称
- 2007年3月18日 PASMOを導入。
- 2010年4月 北総線が成田新高速鉄道に接続し、成田空港までの直通運転が実現する予定。
[編集] 列車の運行
早朝深夜の出入庫列車を除くほぼ全列車が、京成高砂駅から京成電鉄・都営地下鉄浅草線・京浜急行電鉄を経由して直通運転を実施する。昼間は京急羽田空港駅行きがメインであるが、ラッシュ時には京急本線の線路容量の都合上、西馬込駅行きの列車も運転される。さらには三崎口駅までロングランする運用も存在する。 基本的に線内は各駅停車であるが、平日は朝上りに特急が、夕方下りに急行が数本運転されている(停車駅は下記参照)。また、運転される列車の半数程度は、印西牧の原駅折り返しとなっている。
[編集] 駅一覧
駅名 | 駅間キロ | 累計キロ | 普通 | 急行 | 特急 | 接続路線 | 所在地 | ||||||
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京成本線・京成押上線・都営地下鉄浅草線経由 京急本線・京急空港線・京急久里浜線直通運転 |
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京成高砂駅 | - | 0.0 | ● | ● | ● | 京成電鉄:京成本線(成田方面)、金町線 | 東京都 | 葛飾区 | |||||
新柴又駅 | 1.3 | 1.3 | ● | ● | | | ||||||||
矢切駅 | 1.9 | 3.2 | ● | ● | | | 千葉県 | 松戸市 | ||||||
北国分駅 | 1.5 | 4.7 | ● | | | | | 市川市 | |||||||
秋山駅 | 1.5 | 6.2 | ● | | | | | 松戸市 | |||||||
東松戸駅 | 1.3 | 7.5 | ● | | | | | 東日本旅客鉄道:武蔵野線 | |||||||
松飛台駅 | 1.4 | 8.9 | ● | | | | | ||||||||
大町駅 | 1.5 | 10.4 | ● | | | | | 市川市 | |||||||
新鎌ヶ谷駅 | 2.3 | 12.7 | ● | ● | ● | 新京成電鉄:新京成線 東武鉄道:野田線 |
鎌ケ谷市 | ||||||
西白井駅 | 3.1 | 15.8 | ● | ● | ● | 白井市 | |||||||
白井駅 | 2.0 | 17.8 | ● | ● | ● | ||||||||
小室駅 | 2.0 | 19.8 | ● | ● | ● | 船橋市 | |||||||
千葉ニュータウン中央駅 | 4.0 | 23.8 | ● | ● | ● | 印西市 | |||||||
印西牧の原駅 | 4.7 | 28.5 | ● | ● | ● | ||||||||
印旛日本医大駅 | 3.8 | 32.3 | ● | ● | ● | 印旛郡印旛村 |
ちなみに、印西牧の原駅は「印西草深(そうふけ)駅」、印旛日本医大駅は「印旛松虫駅」という仮称がついていた。
[編集] 成田空港延伸
都心から成田国際空港への所要時間を短縮するために、北総鉄道を経由する「成田新高速鉄道」構想が、2001年後半ごろから動き始め、2006年に着工した。新設となる印旛日本医大駅から成田空港高速鉄道接続点までの区間は、新たに設立された成田高速鉄道アクセスが建設・保有を行うこととなった。新設区間は大手私鉄最高速度160km/hとなり、これに合わせ、既存の京成高砂駅~印旛日本医大駅間は、最高速度130km/hで走行するための軌道構造の強化や追い抜き設備などの改良工事が行われることが、成田高速鉄道アクセスから発表されている。
2010年(平成22年)4月に予定されている開業後は、印旛日本医大駅止りの列車は現行通り北総鉄道が運行を行い、成田空港駅まで直通する列車は京成電鉄が運行する計画となっている。これにより、日暮里駅と成田空港駅との間が最速36分で結ばれることになる。成田エクスプレスや京成スカイライナーを利用した場合、都心から成田空港までは最速51分であったため、大幅な時間短縮が実現する。
また、千葉県北西部等の交通利便性の向上と成田市と千葉ニュータウン機能連携の強化にも大きく寄与することが期待されている。
[編集] その他
この路線は東京のベッドタウン・千葉ニュータウン事業の一環として作られた。2006年8月23日付けの朝日新聞夕刊1面によると、計画の盛り込まれた1960年代には34万人を見込んでいたのだが、1970年代のオイルショックや1990年代のバブル崩壊などで縮小を余儀なくされ、現在では8万人にとどまっている。それゆえ沿線は開発が進まず辺りは野原が広がっており、駅停車中の電車に蛾やカナブンなどの虫が入り込み、それが直通先の都営地下鉄浅草線や京急本線でも飛びかって地下鉄の一般乗客から「虫対策をしてくれ」という要望が相次いでいる。それを受けて駅員などが虫駆除に追われる日々が続いていると報じられている。
[編集] 参考文献
- 佐藤信之「鉄道・軌道プロジェクトの事例研究 31 住宅・都市整備公団線の経緯」
- 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』2004年6月号 No.452 p140~p143