欧州委員会
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欧州委員会(おうしゅういいんかい)は、欧州連合(EU)の行政執行機関。正確には、Commission of the European Communities(欧州諸共同体委員会)とされている。本部はベルギーのブリュッセル市内に分散しており、職員総数はおよそ2万人。
目次 |
[編集] 概要
欧州委員会をEUの行政執行機関として、マーストリヒト条約に謳われている「3つの柱」という観点から見ると、第1の柱「共同体の活動」については、法案(規則、指令、決定)の提案権を立法機関である欧州連合理事会と欧州議会に対して独占的に提案することができる。次に第2の柱「共通外交・安全保障政策」については、EUを代表する機関として、域外の諸外国や国際機関に代表部などを設置し、対外交渉を行っている。最後に第3の柱「刑事問題に関する司法協力」について、EU加盟国と同等の提案権を有している。そのために欧州委員会の最優先任務はEU基本条約の守護者であるとされ、条約の規定やそれに基づく決定が確実に適用されることを図ることが求められている。そして欧州委員会にはそれらのルールに反する加盟国を提訴し、また個人や団体に対しても罰金を課す権限が与えられている。このため欧州委員会の委員には、出身国の利害に影響されないような中立性を確保することが求められる。
[編集] 名称
EUの公用語は加盟国の公用語が採用されており、諸機関の名称はそれぞれの言語に翻訳されている。2007年1月1日以降、欧州委員会の正式名称は次の23の言語で表記されている。
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[編集] 任免
欧州委員会の委員長(President of the European Commission)は、EUの最高意思決定機関である欧州理事会が指名し、欧州議会がこれを承認する。委員長候補は欧州理事会と共同で、他の欧州委員会の委員(Commissioner 正式にはMember of the Commission)を指名する。このとき委員候補にそれぞれ1つ以上の政策領域を割り当てる。また委員会のメンバーは、ニース条約に基づき1加盟国につき1人となるようにしなければならず、また上限は27人と定められている。その後欧州連合理事会の特定多数決による委員会総体としての任命を受け、欧州議会の承認を経たのちに正式発足となる。委員の任期は5年で再任は可能である。現在の委員長はポルトガルの元首相ジョゼ・マヌエル・ドゥラン・バローゾが務めており、現委員会の任期は2004年11月22日から2009年10月31日までである。
欧州議会は欧州委員会に対して不信任議決権を有している。ローマ条約では、不信任決議の可決には投票数の3分の2以上の賛成があり、かつその賛成票数は議員総数の過半数であることが必要とされている。不信任決議が可決されると欧州委員会は総辞職しなければならない。なお個別の委員の罷免はできない。
[編集] 委員会の定数
上で述べたとおりニース条約では「EU拡大に関する議定書」において、加盟国数が27に達したときは、その直後の欧州委員会のメンバーの人数は加盟国と同数とするが、以降の委員の上限数は欧州理事会が27より小さい数を全会一致で定めることとし、委員の任命にあたっては平等となるような輪番制で行うこととなる。したがって、2007年1月1日のブルガリアとルーマニアの加入で加盟国数が27となっており、バローゾ委員会以降は委員が各国から1人ずつ選ばれることはない。ただし欧州憲法が発効すれば、発効直後の委員会は加盟国から1名ずつが委員に任命されるが、その後は加盟国数の3分の2の人数に削減されることになっている。
[編集] 権限
欧州委員会にはローマ条約により、EUの行政執行機関としてさまざまな権限が与えられている。
- 政策の提案、法案の提出
- 「3つの柱」のうち、共同体の活動に関する政策や法案の発議権は欧州委員会が独占しており、欧州連合理事会は欧州委員会から提案を受けなければ法令を制定することはできない。欧州委員会がこれらを怠っているとき、欧州理事会や欧州議会は法案の提出を要求したり、欧州司法裁判所に不作為違法確認訴訟を提起することができる。また「3つの柱」の残りの2つの分野に関する発議権は欧州委員会のほか加盟国にも認められている。
- 共同体の競争法分野と欧州連合理事会の授権に基づく立法
- 原則として欧州委員会には立法権は与えられていないが、EUの競争ルールの適用に必要な法律や、欧州連合理事会で制定された法令の執行規則を制定することができる。また、域内における競争ルールに違反する企業などに対して懲罰を課すことができる。
- 予算案の編成と執行
- 欧州委員会は予算案を編成する一方で、毎年度決算を欧州議会、欧州連合理事会に対して報告しなければならない。
- EU域外における代表
- EU域内における代表
- EUは域内において法人格を有しており、財産の処分や裁判の当事者となることができる。このとき欧州委員会がこれらの代理となる。
- EU加盟国の義務不履行に対する欧州司法裁判所への提訴
- 加盟国はEUにおける各条約や法令を遵守する義務があるが、これらを加盟国が履行しないときは、欧州委員会は欧州司法裁判所に判断を仰ぐことができる。
[編集] 歴史
欧州委員会は1952年に設立された欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)の最高機関(High Authority)に起源を持つ。その後1958年のローマ条約によって欧州経済共同体(EEC)と欧州原子力共同体(Euratom)が設立された。その両共同体の委員会とECSCの最高機関がブリュッセル条約に基づき1967年に統合され欧州諸共同体委員会となり、これが現在に至っている。
[編集] 歴代委員会
委員長(出身国) | 任期 | 備考 | |
1 | ヴァルター・ハルシュタイン ( 西ドイツ) | 1958年1月10日 - 1967年7月6日 | EEC委員会として発足、2期 |
2 | ジャン・レイ( ベルギー) | 1967年7月6日 - 1970年7月1日 | 以降EC委員会 |
3 | フランコ・マリア・マルファッティ( イタリア) | 1970年7月2日 - 1972年3月21日 | |
4 | シッコ・レーンデルト・マンスホルト( オランダ) | 1972年3月22日 - 1973年1月5日 | |
5 | フランソワ=シャヴィエル・オルトリ( フランス) | 1973年1月6日 - 1977年1月5日 | |
6 | ロイ・ハリス・ジェンキンス( イギリス) | 1977年1月6日 - 1981年1月5日 | |
7 | ガストン・エグモン・トルン( ルクセンブルク) | 1981年1月6日 - 1985年1月5日 | |
8 | ジャック・ルシアン・ジャン・ドロール( フランス) | 1985年1月6日 - 1995年1月5日 | 3期 |
9 | ジャック・サンテール( ルクセンブルク) | 1995年1月6日 - 1999年3月15日 | 委員会の不正疑惑などを受け、任期途中で総辞職 |
マヌエル・マリン( スペイン) | 1999年3月16日 - 1999年9月12日 | サンテール委員会の副委員長だったマリンが委員長代行に、
他の委員を暫定委員会のメンバーとした |
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10 | ロマーノ・プローディ( イタリア) | 1999年9月13日 - 2004年11月21日 | |
11 | ジョゼ・マヌエル・ドゥラン・バローゾ( ポルトガル) | 2004年11月22日 - | 現職 本来は2004年11月1日からの発足だったが、委員会人事に
対して欧州議会の反対を受け延期、人事を修正して発足 |
[編集] 部局
欧州委員会には、委員(いわゆる閣僚に相当)を補佐する部局(委員官房及び総局。いわゆる中央省庁に相当)が置かれている。 4つの部門の下に総局(Directorate-General)が設置されており以下、局(Directorate)、課(Unit)が置かれている。
- 総合サービス部門(GENERAL SERVICES)
- 欧州不正対策局(European Anti-Fraud Office)
- 統計局(ユーロスタット)(Eurostat)
- コミュニケーション局(Communication Service)
- 出版局(Publications Office)
- 事務総局(Secretariat General)
- 政策部門(POLICIES)
- 農業・農村開発総局(Agriculture and Rural Development DG)
- 競争総局(Competition DG)
- 経済・金融総局(Economic and Financial Affairs DG)
- 教育・文化総局(Education and Culture DG)
- 雇用・社会問題・機会均等総局(Employment, Social Affairs and Equal Opportunities DG)
- 企業・産業総局(Enterprise and Industry DG)
- 環境総局(Environment DG)
- 漁業・海事総局(Fisheries and Maritime Affairs DG)
- 保健・消費者保護総局(Health and Consumer Protection DG)
- 情報社会・メディア総局(Information Society and Media DG)
- 域内市場・サービス総局(Internal Market and Services DG)
- 共同研究センター(Joint Research Centre)
- 司法・自由・安全務総局(Justice, Freedom and Security DG)
- 地域政策総局(Regional Policy DG)
- 研究総局(Research DG)
- 税制・関税同盟総局(Taxation and Customs Union DG)
- 運輸・エネルギー総局(Transport and Energy DG)
- 対外関係部門(EXTERNAL RELATIONS)
- 開発総局(Development DG)
- 拡大総局(Enlargement DG)
- 欧州援助協力局(EuropeAid Co-operation Office)
- 対外関係総局(External Relations DG)
- 人道援助局(Humanitarian Aid Office (ECHO))
- 通商総局(Trade DG)
- 対内サービス部門(INTERNAL RELATIONS)
- 予算総局(Budget DG)
- 欧州政策顧問局(Bureau of European Policy Advisers)
- 情報科学総局(Informatics DG)
- インフラストラクチャー・ロジスティックス局(ブリュッセル)(Infrastructures and Logistics - Brussels)
- インフラストラクチャー・ロジスティックス局(ルクセンブルク)(Infrastructures and Logistics - Luxembourg)
- 内部監査総局(Internal Audit Service DG)
- 通訳総局(Interpretation DG)
- 法務局(Legal Service)
- 人事・総務総局(Personnel and Administration DG)
- 翻訳総局(Translation DG)